ケアマネ受験になぜ実務経験は5年も必要なのか(上)より続く
20歳代の介護支援専門員が全体の7%にも満たない理由の際たるものが、ケアマネ受験資格に必要な実務経験5年規定である。
大学で社会福祉援助技術を専攻し、社会福祉士の国家資格を取得した人も、その後5年間指定実務に就かないと介護支援専門員実務研修受講試験を受けられないのである。
大卒の新卒者が最短で介護支援専門員となることができるのは27歳前後といういうことになる。
こんなに長い実務経験が必要なのだろうか?
そもそも相談援助の専門資格としては、最も上位に位置すると考えられる社会福祉士でさえ、その国家試験を実務なしで受験できるルートは存在するのである。
介護保険法以外の法律や、社会福祉援助技術全般の広い知識が求められる社会福祉士の資格取得ルートがそうであるにもかかわらず、介護支援専門員という社会福祉士より試験問題の難易度が低い資格の取得ルートのハードルが高いのは何故だろう。
実はこの実務経験の設定には、介護保険制度開始時の混乱が関係している。
ご存じのように、介護支援専門員の資格は、介護保険制度施行と同時に新設されたものである。
その際、介護支援専門員という資格を新たに創設することは決まったものの、どういう職種のどのような条件を受験資格または受験要件とするかはなかなか決まらなかった。
医療系サービスであれば、医師や看護師のほかにどの資格を受験要件とするか、福祉系サービスは相談援助職に限ってよいのかなど、侃々諤々の議論が水面下で行われた。
その際に国が一番心配したことは、「制度あってサービスなし」という状態に陥ることであった。
そのため、ケアプランに沿ったサービス提供という原則を担保する介護支援専門員という有資格者がいないのであれば、介護保険制度上のサービスが動かなくなることを懸念し、その有資格者の範囲を広げたのである。
もっと具体的に言えば、当初は介護支援専門員実務研修受講試験を受けることができる実務に、「介護職員」は入っていなかったのである。
しかしそれでは必要な介護支援専門員の数の確保が困難になると考えて、後付けで介護福祉士や介護職員の実務経験でも介護支援専門員実務研修受講試験を受けることができるようにしたわけである。(※この当時の議論では、介護事業者の事務員や調理員も実務経験として認めてよいのではという議論もされたが、それは見送られた)
このように相談援助職ではない職種も広く介護支援専門員実務研修受講試験の実務経験として認めることにしたため、その質をできるだけ担保しようとして、実務経験期間は5年という長期にしたという意味がある。
しかし相談援助の専門家の実務まで、他の実務と同じにするのは意味がないと思う。大学を卒業したばかりの社会福祉士でも、ケアマネジメントが適切にできる能力ある人はたくさんいるのである。
その人たちが介護支援専門員実務研修受講試験を受けられないことで、社会福祉士や精神保健福祉士などの専門業務を担って、その後5年働けば、その部署では頼りになる専門家となっており、今更介護支援専門員の資格を取って転職なり、部署変更しようとする動機づけを持つ人は少なくなる。
これが若者が介護支援専門員になろうとしない一番の理由だ。
介護保険制度施行から23年も経過している今、この制度の実態を見なおして、介護支援専門員の数が増えるように、若者がもっと介護支援専門員となってくれるように、受験ルートの見直しが必要だと思う。
少なくとも相談援助業務を専攻した人、社会福祉士や精神保健福祉士等の有資格者は、実務経験なしで受験資格を得られるようにすべきだろう。
この見直しを早急に行ってもらいたいと切に願う。
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私の周りでも介護職経験のケアマネが多数ですが、相談援助の知識・技術に疑問符のつく方が多くみられます。
更新時の研修も含めて、抜本的に見直しが必要かと思います。
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