福祉医療機構(WAM)が27日に公表した2022 年度特別養護老人ホームの人材確保および処遇改善に関する調査についてによれば、介護職員が「不足している」と回答した施設は68.6%であった。この数字は55.1%だった2021年度より13.5ポイントも悪化している。

これは恐ろしい結果である。なぜなら調査対象が2022年度だからだ。その時期はまだコロナ禍の影響で、飲食業や宿泊業などから介護事業に流れてきた人材が介護事業者にとどまっている時期である。

しかし23年度以降、ウイズコロナの基調が出来上がってきた段階で、他業種の求人が回復しており、他業種から介護に流れてきた人材の先祖帰りが見られている。

それに加えて、物価高以上の昇給を呼び掛ける首相の声に対応して、企業が軒並み大幅な給与のベースアップを実施し、一般企業はこれに横並びするようにかつてないほどの賃上げに踏み切っている。

それに比べると公費を中心にした介護事業者は、24年度まで収益ベースが変わらないことから大幅な賃上げに資する財源に苦慮せざるを得ない。この部分で益々他業種との賃金格差が生じかねず、介護事業に人が集まらない要素が拡大していると言ってよい。

その為、この調査結果では人手不足が深刻な中で、人材紹介会社を活用している施設が増えている実態も示しており、この採用チャネルで正規職員を雇い入れた施設が1年間に支払った手数料は、平均で354.5万円と大きな支出になっているとしている。

このことが単年度赤字の施設を増加させている原因の一つにもなっており、施設経営者にとっては頭の痛い問題であり、23年度以降はさらにこの傾向が拡大しているだろう。
日本風景
しかし需要と供給バランスによる価格決定の原則から言えば、派遣会社に暴利だと非難する理屈はまかり通らない。そもそも紹介料や手数料が負担であれば、派遣会社を通さずに職員を確保できるルートを独自で開発する経営努力が必要だ。

この努力をせずして、国に何とかしてくれと言っても、国が派遣会社の手数料を下げる法律を創れるわけもなく、それは無駄な嘆きでしかない。

この問題に関してソーシャルアクションとしてできることは何かを考えると、それはただ一つだけであり、労働者派遣法の改正アクションだ。

具体的には2012年に日雇い派遣を禁止した法改正に照らして、「人の命や暮らしに関わる、保健・医療・福祉・介護分野に関連する事業への派遣職員は認めない」と法律を変えるアクションを展開することである。

実際にそうしたアクションもしていく必要があると僕は思う。しかしそれを行ったとて、その実現は簡単ではないし時間も想像できないほどかかるだろう。

そうであれば今できることは、なぜ派遣会社を通してしか従業員を雇用・確保できない現状にあるのかを、地域事情と共に精査・検証しなおして、そこに重点的に対策したうえで、独自の人材確保対策を講ずることである。

派遣会社に登録している人々がメリットとして感じていることを把握し、自らの法人で直接雇用する人材にも、それと同等かそれ以上のメリットを感じられるシステムを導入することが必要だ。

この部分は国は何にもしてくれないのだ。手をこまねいていては、人がいなくなって事業が継続できなくなるか、バカ高い派遣手数料によって事業資金が枯渇して廃業に向かわざるを得ないのである。

そういう意味では、いつまでの事業運営しかできない人がトップに立っている事業者はやばいだろう。きちんと事業経営ができる人をトップに据えて、時代の変化に対応した介護事業経営を行わないと大変なことになる。そうした危機意識をもって、介護事業経営にあたってほしい。

ちなみに事実を記すが、僕が社福の総合施設長を務めていた当時、派遣会社を利用したこともなかったので、派遣職員一人も雇用したことはなく、かつ人材確保に困ったこともない。

人材から人財となり得る人たちが集まる職場づくりの方法は、実際に存在するのである。
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