アルツハイマー型認知症の発症メカニズムは、完全に解明されているとは言い難いが、発症原因として明らかになっていることはある。
それはAβ(アミロイドベータ蛋白質)が、アルツハイマー型認知症の発症に深くかかわっているということだ。
Aβは脳内に出現しても、本来なら貯留することのない蛋白質だ。それが脳外にうまく排出されずに、脳内に貯留・沈着して、タウ蛋白に変質する過程で脳細胞を圧迫し、血流障害を起こすことで脳細胞が壊死するのである。そのためにアルツハイマー型認知症が引き起こされるのである。
そのためAβを出現させるセレクターゼを阻害する薬の開発とか、脳内に残ったAβやタウ蛋白を直接攻撃するワクチンの開発などが世界中で研究されているが、10年以内に何らかの予防・治療薬が誕生すると言われ続けてから20年も30年も経過しようとしている。
これがアルツハイマー型認知症の予防対策が永遠の10年と言われる所以である。(参照:永遠の10年。)
ところでこの問題に関連して先週、新しい治療方法の治験が始まるというニュースが報道された。その内容を簡単にまとめると以下のようになる。
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新潟大と東大の研究チームが、若年発症が多い遺伝性の認知症「家族性アルツハイマー病」の家系の人を対象に、病気の原因と考えられる脳内の異常なたんぱく質を取り除く薬剤を投与する治験(臨床試験)を年内にも開始する。
家族性アルツハイマー病は、40代・50代の若年で発症する例が多く、Aβの蓄積は20代、30代から始まる。遺伝子変異を受け継ぐと親の発症とほぼ同年齢で発症することがわかっている。
治験では全ての参加者に3〜4年間、「レカネマブ」(※米国で1月に早期アルツハイマー病患者を対象に迅速承認された薬で、日本でも審査中。)を点滴する。
参加者のうち半数には、タウの脳内への広がりの抑制を図る、現在開発中の「E2814」という薬剤も点滴投与する。
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この治験に期待を寄せる人がどれほどいるかはわからない。しかし僕自身はすごく怖い治験だと思う。
なぜなら、「レカネマブ」自体が本当に効果があるかわからない薬であって、米国での認可も取り消しの可能性がある仮免許状態の認可でしかないからだ。
日本に至っては、それはまだ認可さえされていないのだから、臨床ではまだ使われていない薬ということになる。ましてや開発中の薬は、認知症治療薬としては存在していないものと言っても過言ではないのではないのか・・・。(※この薬は日本人には効果がないという専門家もいる。)
それらの副反応は十分確認済みなのだろうか・・・。
かつてアルツハイマー型認知症の新薬については、アメリカで治験が行われ、その最中に脳出血で死亡する人が相次いで、治験自体を中止したという苦い過去もある。
1980年代に日本の臨床に使われた認知症の特効薬、「ポパテ」の副反応で、脳梗塞を発症した人が相次いだ事によって、それは劇薬指定されたことも思い出される。
このように脳内に直接作用させる新薬は、回復不能な脳内ダメージにつながりかねないのである。
そんな怖い薬を点滴で点滴投与して、脳内に沈着するAβを攻撃するような治験は、本当に安全な治験なのだろうか・・・。
今回の治験で、家族性アルツハイマー病の予防効果を期待して参加した結果が、脳出血や脳梗塞を引き起こすのではかなわない。その後遺症で一生寝たきりにならないとも限らないからだ。
そういう意味で、この治験は極めて人体実験に近いものであるように感じる。
それらこれらを鑑みると、この治験にはあまり期待ができないし、永遠の10年はこれから先何十年も解消されないような気がしてならない。
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