介護事業者に勤めている皆さんで、この4月が定期昇給月だった方々は、いったいどれくらい給料が上がったでしょうか?
世間では物価高に対応すべく、インフレ率を上回る給与改善の掛け声のもと、大幅な賃上げを行ったという景気の良い話が聞こえてきます。その恩恵を受けて、かつてないほど給料の手取り月額が上がったという人も少なくないかもしれません。
例えば連合(日本労働組合総連合会)の中間集計によると、春闘での連合傘下の労働組合の賃上げ率は3.7%となっています。金額で言えば平均で月額11.114円の上昇とのことで、この時期の集計結果が残る2013年以降で最高水準となったそうです。
介護事業所で、この数字に匹敵する賃上げができているところはあるのでしょうか。・・・報酬改定のない今季、これだけの賃上げはできない事業者が大半でしょう。

今年の春闘では大手企業がこぞって満額回答・大幅ベースアップという結果になっており、一般の中小企業もこれに倣って大幅な賃上げに踏み切っているところが多いです。
ウイズコロナで客足が回復している飲食業も、人手の確保のために大幅に時給を上げています。
一般企業や飲食業がこれほど思い切った賃上げをできる背景には、「物価高」があります。これほど声高に物価高が叫ばれると、物価が上がることに国民は麻痺していきます。便乗値上げも含めて、これだけもの価格が挙がっているのですから、一般企業は賃上げのための費用を価格転嫁しやすいのです。
ところが公費運営されている介護事業者は、そのように価格転嫁するもの自体が存在しません。
一般企業のように賃上げ原資を、消費者に求めるということが現実不可能なのです。
その為、法人内の繰越金の持ち出し出費などをしない限り、一般企業並みの賃上げなんてできません。
すると処遇改善加算などによって縮小されるつあった労働者平均給与と介護職員の給与の格差がまたぞろ広がります。その結果、コロナ禍で他産業から介護業界に流れてきた労働者が元の職種に戻ろうとするなど、介護業界から他産業への流出に拍車をかけます。
介護人材不足はより深刻化しますね。
これに対して、介護事業者としてできる対策はほとんどありません。
できる限り一般企業との差が広がらないように、3種類の処遇改善加算はすべて最上位加算を算定して最大配分することは当たり前です。それができない介護事業者からは、人がいなくなって事業継続ができなくなると思ってください。・・・でもそれでも足りない。
ところでこの問題に関連しては、厚労省が既存の介護サービス情報公表システムを利用して、全国の介護施設・事業所に職員1人あたりの賃金の公表を求める新ルールを創る考え方を示しています。このことは省令改正を行って2024年度にも実現したい考えだそうです。つまり報酬改定とあわせて実施される見込みなのです。
その際には、設置主体や給与体系などの違いに配慮し、個人が特定されることのない仕組みを検討するするそうですが、それは介護事業者の経営の透明性を高める目的があるとされています。
そこには介護報酬の「処遇改善加算」が適切に配分されているかどうかなど、重要施策の効果の見える化につなげる意味もあるとのことです。こうしたガラス張りの環境を整備することにより、事業者に賃上げの積極的な実施を促す狙いもあるとしています。
しかし処遇改善加算は、行政監督庁に毎年度報告書を提出し、算定費用以上の処遇改善を行っていることを申告しています。仮に算定費用未満の金額しか職員に支給配分していなければ、加算報酬を変換しなければならないのです。これほど透明性が高くなっているのに、それからさらにガラス張りを促して何の意味があるのでしょう?
まったく意味が分かりません。
しかし賃金公表ルールが発動すると、求職者はそれを職場選択の重要な基準にすることは間違いありません。よって処遇改善加算尾最上位加算を最大限に活用するなどして、他事業者に負けない給与水準を担保し、人を集めることができる給与体系にする必要があります。そうしないと人が益々集まらず事業経営が困難となるからです。
しかし前述したように他産業と比較されたらどうなるでしょう。今年度の他産業の賃上げで、介護事業者の平均給与とさらに格差が広がるとしたら、介護業界からは益々人が離れて、人材枯渇に陥るのではないでしょうか。
だからこそ来年度の介護報酬改定では、統合一本化され処遇改善加算の更なる上積みだけではなく、主物価高騰の影響で介護事業者の経営を行き詰まらせないように、基本サービス費の改善も求めていく必要があるのです。
ここは業界全体で心を一つにして、戦い取っていくという覚悟が求められるところだと思います。心を引き締めて頑張りましょう。
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