僕は今、新千歳空港の「JALさくらラウンジ」でこの記事を更新している。

今日は午後から大阪伊丹空港に飛んで、空港近くにある豊中市の、「アイテラス利倉」で講演を行う予定になっている。

アイテラス利倉さんは、小規模多機能型居宅介護を併設した地域密着型特養で、僕が大阪で仕事がある際に、伊丹空港の到着もしくは同空港からの発着前後の時間を割いて、何度も職員研修としての講演を行っている施設さんである。

今回も、明日の大阪市老連の講演に備えて、大阪に前日入りするため、フリーの時間がかなりできたために講演を行うこととなった。

過去に行った講演はサービスマナー・看取り介護・介護従事者の使命と誇り、施設サービス計画に基づいたケアのあり方など多様であるが、今回も新しいテーマで講演を行うことにしている。

今日午後4時から行う講演テーマは、「介護事業におけるハラスメント対策と従業員のメンタルヘルスケア」であり、これは施設長さんから直接依頼を受けたテーマである。

先日もハラスメント予防研修の重要性について記事にしたが(参照:ハラスメント対策=指導教育できない職場では困る)、今日は別な角度からこれに関して論じておきたい。

ハラスメントの中には、「パワーハラスメント」と称されるものがあるが、この一般的な定義は、「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」とされている。

パワハラは必ずしも上司が部下に対して行う行為とは限らない。部下が束になって上司の命令や指示を無視するという形で、「職場内の優位性」を得て、部下から上司へ向かう行為として現れる場合がある。このことに対する十分な配慮と注意も事業者責任として求められるのである。

例えば北海道小樽市の社会福祉法人では、2010年5月からうつ病を発症し休職と復職を繰り返していたことで、休職中の2012年7月に解雇された女性課長が、解雇無効と損害賠償を求めて裁判に訴えたケースがある。

女性は2009年4月から、「課長」に任命され勤務していたが、「部下から暴言などを受ける一方、法人が適切な対策を講じなかったため、うつ病を発症した。」と訴えたものである。

この裁判はすでに原告勝訴で結審している。被告である社会福祉法人には、7年5か月在籍分の給与支払いが命じられたのである。
暗中模索
この結果を僕はある意味恐ろしく感じる。

統率力がなくて部下をまとめることができないということが、自分のスキルの問題であったとしても、そのことが原因でうつ病を発症した責任は事業者が負わないとならないことになるからだ。

しかし役職に任命した人物が、上司としての務めを果たす能力に欠けることが分かっても、一旦任命してしまった役職なのだから、簡単にその任を解くわけにはいかない。本ケースのような職員の場合、そのことは不当降格だと訴えかねないからだ。つまり本人が望まない限り簡単に役職を解くことは難しいのである。

そのため、統率力が発揮できていないことを知りながら、だらだらと役職に縛り付けていた結果、部下の統率がうまくいかないことに悩んだ役職者が、精神的に病んでしまった責任は事業者がとらねばならないということになる。

こうした矛盾というか迷走に対して、どこで折り合いをつければよいのか非常に難しい問題といえる。

どちらにしても管理職に任命した当事者のスキル問題が、部下からのパワーハラスメントに置き換わってしまう恐れもないとは言えないことを念頭に置いておく必要がある。

つまりこの裁判ケースからの教訓とは、「上に立つ人材選びにも、相応の事業者責任があり、その任に堪えないものを、経験年数だけで選んでしまった場合に、想定外の問題を生じさせかねない」ということではないだろうか・・・。

今後の介護事業においては、今以上に適材適所の人材配置という考え方が、経営者や管理職に求められてくるように思う。

特にチームをまとめるリーダー役の配置は、介護事業者の明暗を決定づける重要な問題と考えて、より慎重に人材選びに努めねばならないだろう。

人手が足りないからと言って、わずか3〜4年の経験しかない職員を、いきなり管理職につける介護事業者も少なくない。しかし正しい人事評価を伴わない抜擢は、組織を崩壊させるもとになりかねないのだ。

このことを介護事業経営者は、強く肝に銘ずるべきである。
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