昨年8月に公表された公益財団法人 ・介護労働安定センター令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要についてと言う資料がある。

公開時にざっと読んだ資料を今回改めて読み込んでみた。そのうえで考えたことがある。

この調査結果の中で様々な論評でよく取り上げられているのは、12頁の(図 16) 前職を辞めた理由 である。

ここではタイトルが、「前職を辞めた理由は収入よりも人間関係」とされており、人間関係のストレスで退職する人が多いことが強調されている。

しかし実際に数字を見てみると、「職場の人間関係に問題があった」という理由で退職している人は、18.8%である。

その数字は退職理由の2位、「自分の将来の見込みが立たない」15.4%や、退職理由3位、「収入が少なかったため」14.9%と大きな差があるわけではない。

しかも退職理由4位は、「他に良い職場・仕事があった」13.9%であり、退職理由5位は、「職場の理念や運営のあり方に不満」12.1%となっている。

この数字を見ると、実は退職者の多くは給料などの待遇に不満をもって、より待遇の良い仕事・職場を求めて退職しているのではないかと思えてくる。
本当の退職理由は?
そもそも退職者が辞める際、もしくは調査時に退職理由を正確に答える人が大部分であると期待してはならない。

例えば仕事を遂行するために必要な能力に欠けている人が、職場から間接的に退職を求められて職場をやめた場合に、自らの能力不足で退職を勧奨されたと答える人はまずいない。その場合の多くの人は、「職場の人間関係」を退職理由とする傾向にある。

給料が安いから辞めたとするのは、守銭奴と言われかねないから、とりあえず人間関係を退職理由にしておこうと考える人も少なくない。

そう答えれば、よくあることだと思われるし、それ以上突っ込まれることはないからだ。

だからこそ介護事業経営者は、「給料が他の事業者に比べて多少安くても、良好な職場環境と人間関係がありさえすれば人は集まる」なんていう幻想を抱いてはならないのである。

良好な職場環境と人間関係は従業員が集まり、定着する重要な要素ではあるが、それ以上にその職場で働く人の暮らしが成り立つ待遇を護るという意識が必要だ。何十年も働き続けても、自分一人の給料で一家を支えられずに、家庭を持つことさえ不安視されるという職場に人は張り付かないのだ。

経営者であるなら従業員が一家の主として家族の暮らしを支えられる給与を得ることを、最大目標として経営にあたるべきだ。それができずに経営者を名乗るなと言いたい。

同時に、「運営のあり方に不満」が介護事業者から退職する理由のベスト5に入ってくるのは何故かということにも思いを寄せてほしい。

介護事業者に就職する人は様々な動機づけを持っているとは思うが、少なくとも介護福祉士養成校に入学する人の動機付けのNo1は、「人の役に立てる仕事に就きたい・介護は人の役に立つ仕事だから」というものなのである。

そういう人動機付けをもって介護福祉士となり、巣立っていった学生は、人の役に立たない介護の実態に触れてバーンアウトしてしまうのだ。それが、「運営のあり方に不満」という理由の際たるものである。

機械的作業に終始して、介護サービス利用者を人として見ないような介護の仕方、年上のサービス利用者の方々に対する失礼極まりない言葉かけや荒々しい態度・・・そういったものがすべて、「あってはならないおかしな運営」と感じられて、仕事のストレスとなり、志の高い若者が辞めていくのである。

そういう理由で辞めてしまう人ほど、将来優れた人財となり得る可能性を持つ人々なのである。

介護業界は、そんなふうにして貴重な宝を失いながら、いつも介護人材不足に悩み続けているのだ。

その歴史をいつまで繰り返すのだろうか・・・。
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