日本看護協会は9日、2021年度に病院で働き始めた新卒看護職員について、同年度内に退職した割合(離職率)が10.3%に上ったとの調査結果を発表した。

現在の調査方法になった05年度以降で、初めて離職率が1割を超えたことになるが、この理由について同協会は、「新型コロナウイルスの感染拡大により、医療現場で不安や混乱が生じた影響と考えられる」と分析している。

ウイルス感染症の患者でベッドが埋まり、その中の幾人かが毎日のように死亡していく現実を目の当たりにしながら、日々の業務に取り組む医療関係者の方々には頭が下がる思いしかない。

そんな過酷ともいえる業務を行う中で、バーンアウトしてしまう看護職員が増えていることは仕方のないことだと思う。

看護職員と言えども、自分が感染して家族にその感染が広がることを恐れて、感染リスクの少ない場所で仕事をしたいと考えるのも当然のことだ。

しかしそういう形で人材を失ってしまうことは非常に残念であるし、勿体ないことのようにも思う。そうならないために少しでも何か対策はできないだろうか。

新型コロナウイルスの感染症分類が変わっても、感染予防対策は取らねばならないし、感染症によってなくなる方もゼロにはならない。そして今後も新しい感染症が流行しないとも限らない。

そんな中で生産年齢人口は減っているのだから、医療人材の数も減っていくことは確実である。

そのことを考えると、人に替わるテクノロジーの導入は不可欠であり、ここにお金をかけることはやむを得ないと言えるのではないか。そしてそのことで感染リスクが少しでも減るとしたら、感染を恐れて離職する看護職員の数も少しだけ減らすことができるのではないだろうか。

そんなふうに看護業務の省力化と感染症対応をセットで考えた場合には、スマートベッドの導入推進が不可欠であると思う。これは医療現場でも介護現場でも共通して考えられてよい対策だとも思う。
夜
スマートベッドとは、睡眠状態や呼吸数・心拍数といったバイタルサインをリアルタイムで計測できる寝台だ。ケア中のときであればベッドサイドのタブレット端末から、ベッドサイドにスタッフがいないときならばスタッフステーションの端末から、すべての病床の患者の状態をデータとして端末に送ることができる。

バイタルチェックのために、患者や利用者のベッドサイドに近寄る必要もなく、感染リスクは大幅に減るし、看護業務の大幅な軽減につながる最先端機器である。

しかし現在のスマートベッドの値段から考えると、そんなものを導入できるのは、相当規模の大きな医療機関だけで、しかもごく限られた台数のみではないかと考える人も多いと思う。

ましてや介護施設等では、そのようなベッドは導入不可能だろうと考える人も多いだろう。

しかし昭和50年代の特養を思い出していただきたい。当時の特養で電動ベッドを導入しているところはっほとんどなかった。僕が最初に勤めた特養は、昭和58年(1983年)に新設した特養であったが、ショートを含めた52ベッドのすべてが手動のギャッジベッドだった。

当時は、電動ベッドなんて高額過ぎて介護施設には手の届かないもので、必要のないものと思われていたのである。

ところが今はどうだろう。このブログ読者の皆さんが所属する介護事業者で、いまだに手動式のギャッジベッドを使っているところはあるだろうか。そんな問いかけをしたくなるほど、手動式ギャッジベッドは見かけなくなり、介護施設では電動ベッドがスタンダードになっている。

スマートベッドもいつの日か、そのような存在になるのではないだろうか・・・というかそうなってほしいものである。スマートベッドが一般普及すれば、価格も現状より大幅に下がっていくだろう。

そうなると使い勝手にも多様性が生まれる。

例えば通所介護でもスマートベッドを一台置いておけば、利用者が到着順にそこに横たわってバイタルチェックを済ますことができる。そうなると看護職員がバイタルチェックだけのためにそこに居る必要もなくなり、通所介護の基本サービスは、看護職員配置がない状態で行うことができるというふうに配置基準も変えられるかもしれない。

看護職員の数も減っていく我が国では、こんなふうにして配置基準を大幅緩和して、看護職が多種類の事業所を掛け持ちで業務を行う形態に変えていく必要があるのではないだろうか。

どちらにしてもスマートベッドというハイテク機器が存在しており、それは極めて高性能で使い勝手が良いのだから、これを生かして医療・看護・介護DXを実現しない手はないと思う。
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