本格稼働してからもうすぐ丸2年を迎える科学的介護情報システム (Long-term care Information system For Evidence:通称LIFE(ライフ) )。

ご存じのようにこのシステムを開発したのは東芝であった。しかしシステム運用がうまくいかないことに業を煮やした厚労省は、去年の4月時点で東芝を切り捨ててしまった。

その後任を担い、現在その運用を行っているのはNECである。

現在はNECがLIFEのシステム改修をしながらデータを解析して、正式なフィードバックに結びつけようとしている最中である。しかし未だにフィードバックの正式版は行われていない。

正式版フィードバックがいつ行われるかの見込みも立っていないが、2024年度の報酬改定では、現在LIFE関連加算のない訪問介護・訪問看護・居宅介護支援等にもLIFE関連加算を新設する予定であるし、その他のサービスについてもLIFE関連加算をさらに増やそうとしている。

しかしフィードバックが正式にできない状態でLIFE関連加算を拡充しても、科学的介護の実現なんて図ることが可能なのかという疑問が出されるだろし、同時にそのようなLIFE運用に対して、情報を送り続ける介護事業者からは不満と批判の声が噴出することも予測されるために、正式版フィードバックは、なんとしても来年度中(2023年度中)に行うことができるように、NECの担当者は躍起になっていることと想像する。

ところでLIFEに登録した介護事業者は、専用ページからログインすると、操作マニュアル等LIFEの入力方法に関するQ&Aに入ることができる。

ここの最新アップデートは、昨年の11/15に行われている。

そのQ3-3は、「LIFEへの情報提出及びフィードバック情報は、どのように活用すればよいか」という質問で、これに対する回答は、「PDCAの推進及びケアの向上を図る観点から、LIFEへ提出した利用者の状態の評価結果等の情報等を活用することとしている。具体的な活用方法については、LIFEから今後提供される事業所単位・利用者単位のフィードバック票を活用するほか、利用者状態の評価結果を踏まえ、各施設において検討を行い、ケアに役立てるなど、様々な方法が考えられる」としている。

・・・おいおい・・・これって責任転嫁というか責任放棄じゃないのか・・・。
LIFEスケジュール
※画像は、国のLIFEスケジュール表に、僕が吹き出しをつけて作成した講演スライド。

この回答は、「LIFE関連要件は情報を提出するとともに、解析されフィードバックをPDCA活用しなければならないものであるが、フィードバックはまだできないので、提出情報を事業所で何とか読み取って検討して、科学的根拠をそっちで見つけてよ。」という意味でしかない。

LIFEに情報を送る手間だけ介護事業者に負わせて、それは読みとれないので、あんたたちで何とか読み取ってエビデンスを見つけてよと、介護事業者に丸投げしているのである。ひどいもんだ・・・。

このことに関して、「重要なことは、LIFEからのフィードバック票を活用することではなく、PDCAサイクルをしっかり回してケアに役立てていくことだ」と論評する向きがある。・・・しかしその考え方もどうかと思う。

なぜなら、「PDCAサイクルをしっかり回してケアに役立てるための科学的根拠」をLIFEに提出した情報の解析によってフィードバックするはずだったのに、それができていないからだ。

そのように結果につながる因子を示さない状態では、PDCAサイクルをしっかり回してケアに役立てる共通の根拠が存在しないからだ。

勿論、介護施設・事業所が介護のエビデンスを創り出して、それを情報として発信することは大事だ。それは否定できない。

しかしLIFEというシステムに莫大な費用をかけ、なおかつそこに情報を送るために介護事業者に多大な業務負担をおっわせているのだから、そちらのフィードバック票を頼るなという言い草はないだろうと思う。あまりに身勝手すぎる。

こんなQ&Aを出さねばならないことを考えると、科学的介護の実現性は極めて低いと言わざるを得ないのではないだろうか・・・。
※菊地雅洋にインタビュー!「これからの地域包括ケアシステム後編その2」(最終回)。地域包括ケアシステムを担う訪問介護から小規模多機能、福祉用具、新複合型サービスまで幅広く各事業について語りました。リスクマネジメントに有効にも拘わらず、まだ整備できていない施設が多いというマストアイテムとは?下記参照ください。

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