僕は今、羽田行きの搭乗待ちで、新千歳空港の搭乗口でこの記事をアップしている。

明日行われる、「愛媛県老人福祉施設協議会・総会」で講演を行うためのフライトである。北海道から松山までの直行便は、コロナ禍以来休止されているので、羽田や大阪などを経由しての移動となる。

今回の講演は、「介護保険制度改正から考える今後の介護事業経営への影響と対策」をテーマに、経営者の皆様に最新情報をお届けしたうえで、その分析を行う予定である。

制度改正のテーマの一つには、「地域包括ケアシステムの深化」も含まれているため、改めて地域包括ケア研究会の報告書を読み直して復習してみた。

すると結構意味不明な内容が書かれてることに気づく。特に自立支援の概念は、意味不明な迷路に陥ったような解説文に終わっている感がある。そのことについて考えてみた。

高齢者分野を出発点として改善を重ねてきた「地域包括ケアシステム」は、「地域共生社会」を実現するための「システム」「仕組み」であることが、地域包括ケア研究会 報告書 -2040 年に向けた挑戦(平成28年度)で示されている。
※この報告書以
以降は、あらたな報告書は作成されていないので、現在これが最新版と言ことになる


その14頁には、「自立支援は心身機能の改善ではなく、高齢者の尊厳の保持のためにある」というタイトルが付けられて、自立支援の考え方がまとめられている。

その内容を確認してみよう。

「自立支援」はこれまで以上に注目されているが、その意味するところが、単に心身機能の改善ではないという点には注意が必要である。自立支援にせよ、高齢者の尊厳にせよ、共通しているのは、「高齢者本人の意思に基づいている」ことである。したがって、本人への意思決定支援がまずは強調されるべきであろう。

本人の意思を無視した自立支援は意味がないということだろう。そりゃそうだ。

寝たきりの状態になっても、今までできていた生活動作などができなくなっても、本人の意思決定のもとに行われる自分らしい生活を支援する取組が自立支援であり、心身機能の向上は、あくまでも自らがしたいと思うこと(目的)を実現するための手段にすぎない。

心身機能の向上とは別な意味で、自立支援が存在するということか?寝たきりになった人の、心身機能の向上とは異なる希望・意志に基づく自立支援っていったいなんだ?この文章の意味を正確に説明できる人はいるだろうか・・・。

自立を狭く理解し、「自分でなんでもできる状態」のようにとらえれば、支援プログラムそれは、本人の意思に基づいたものではなく、単なる強制的なトレーニングのような介入になってしまうだろう。一方で「本人が希望しない」からといって支援をしない放置に近い対応も不適切である。2040 年に向けて地域包括ケアシステムが目指している最終目的は、あくまでも本人の(表出しない潜在的なものを含む)意思に基づく生活への支援であると確認すべきである。

運動機能に特化して、リハビリ・機能訓練を強いることが自立支援ではないということを言いたいのだろう。そして表出されている希望をニーズと勘違いせず、本人の気が付いていない潜在的ニーズまできちんとアセスメントしようということだろう。

・・・だからどうだっていうのだろう?ここに書いてある内容をしっかり理解することで、地域共生社会の実現に繋がっていくというのだろうか。

むしろ僕は、地域包括ケアシステムという言葉を使って、自立支援をあおってきたことで、高齢者の方々から、「あんまりだ」という悲痛な声が挙がっていることに対し、自己批判をしている文章にしか思えない。
冬の支笏湖
例えば和光式方式の、「介護保険からの卒業の強制」なんかは、高齢者の悲痛な声につながる誤った地域包括ケアシステムの典型例だったろう。(参照:高齢者からお金を騙し盗る人が推進した介護保険からの卒業

どちらにしても声高らかに誕生させられ、深化が強調されてきた地域包括ケアシステムは崩壊の一歩手前まで来ている。このシステムが、お伽話化しているという人も居るほどだ。

なるほど、このシステムの中核機能を成す地域支援事業の実態を見ても、それは介護給付と切り離して単価を安くしたサービスに過ぎず、その実態は介護給付サービス事業者に委託事業として、サービス内容も丸投げしているものがほとんどだ。

地域住民のニーズとか、地域性などに配慮したサービス内容なんてどこにもないのが実態である。

しかしそのような地域包括ケアシステムであっても、介護保険制度を根拠にした介護事業を展開していく限り、私たちはそのシステムがあるものとして、国のお飾りのような考えに付き合っていかねばならない。

地域包括ケアシステムを機能・深化させるという建前に付き合って私たちは仕事をし、事業戦略を立てていかねばならないのである。

その為には建前に隠れている本音を見抜きく視点が求められてくる。

国の音頭に乗って踊るふりをしながら、隠されている利権のおこぼれでも良いから、そこからしっかりと収益を上げていかねばならない。それが事業と従業員を護る唯一無二の考え方だ。

それに関連して、僕のインタビューが先週土曜日からユーチューブ配信されている。

配信元は、「弁護士 外岡 潤が教える介護トラブル解決チャンネル」である。

テーマは「これからの地域包括ケアシステム」。土曜日にアップされている部分は、ケアマネージャーに求められる役割と「質」とは?・通所と訪問の組み合わせ新事業の可能性・絶滅しつつある訪問介護への対策などであり、これから数回アップを重ねていく予定であると思うので、是非空いた時間に視聴していただければありがたい。
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