3月は巣立ちの時期である。様々な場所からこの国の明日を担う人々が巣立っていく。

僕が介護福祉士養成校で教えた若者たちも、希望を胸にして社会人として、今まさに巣立とうとしている。

そんな彼らの姿をみながら、彼らの夢や希望がかなえられると同時に、この国の未来の介護を支える人材として育ってくれることを願っている。
福寿草
雪解けの道に、美しく力強く咲く福寿草のように、彼らが誰かのあかい花になることを祈るような気持ちで眺めている。

しかし残念なことに、卒業生が全員、就職した職場で美しく咲き続けてくれたことはいまだかつてない。

志半ばで夢をあきらめて職場を去り、介護業界からも去ってしまう人がいる。

介護という職業が、人の役に立つ誇りの持てる職業だと思っていたのに、就職したその場所で、先輩職員の仕事ぶりを見て、そうではなかったと幻滅して辞めていく若者が少なからず存在するのだ。

そうしてリタイヤしていった卒業生が、僕のもとを訪ねて嘆く言葉とは、「利用者をまるで物のように扱って、仕事も全部流れ作業のようになっている」・「人生の先輩に対する口の利き方を知らない〜赤ん坊や幼児に対する言葉かけをする人がいるのに、誰も注意しない」というものだ。

将来、人材人財となり得る素質を持つ若者が、先輩職員のタメ口にストレスを感じて介護業界を去ってしまうのだ。

この悪しき状況を何とかしたいと思い、サービスマナーについて様々な場所で講演を行っている。テーマがサービスマナーではなくとも、正しい言葉遣いで介護サービスを利用するお客様に接するように訴えている。

例えば先日も、「看取り介護講演」の中で、「旅立つ人をどんな言葉で送りますか?」と問いかけた。

今特養で問題になっているのがこの問題だからだ。看取り介護対象者は、死期が迫っていることを周囲の人が認識しているのだから、普段面会に来たことがない遠い親戚もお別れに面会に来るのだ。その時、若い介護職員のあまりに失礼な言葉遣いに憤慨して、「どうしてこんなところで、ばあちゃんの最期の時間を削り取るの!!」と憤慨してトラブルとなるケースが多いのだ。

普段職員の馴れ馴れしい無礼な言葉に憤慨しても、それに慣れてしまって、文句も言わないキーパーソンとは異なり、お別れのために初めて施設を訪れる親戚は、年下の従業員のあまりに失礼な言葉遣いに憤慨することが多いのである。

ところがこうした指摘をしておなおかつ、その講演を受講した人がアンケートで、「私自身は、利用者と関係性を構築するうえで、方言やフランクな言葉遣いも必要だと考えている」と記している人も居る。

こういう底辺クンが居なくならないからこそ、介護という職業の誇りを感じ取れなくなる若者がなくならないのだ。

フランクな言葉遣いと言うが、自分がそう思っていても相手にとって失礼な言葉遣いと感じられてしまうのが崩し言葉だ。その点、マナーがある丁寧な言葉は、だれしも不快に思わないし、相手や状況によって使い分ける必要もない言葉である。

私たちと利用者の関係性とは、あくまでサービス提供者と顧客の関係性であり、言葉を崩してフランクに話しかけて構築する関係性ではない。そもそも世界一ボキャブラリーが豊富な日本語は、丁寧語を使っても、親しみやすさを伝えることができるし、方言だって丁寧語は存在するのだ。

例えば熊本のある特養で働く職員は、利用者に対して、「〜よかですか?」と丁寧は方言を使いこなし、利用者に目線を合わせて真摯に対応していた。

こうした人たちと比較して、いつまでも崩し言葉でしか、親しみやすさを伝えることができないコミュニケーションスキルの低い底辺クンの存在が、介護を底辺職業に貶めているのだ。

そうならないように、相手から誤解されない対応の基盤となる、「サービスマナー」を身に着けてほしい。

そしての記事の締めとして、次の言葉をすべての介護関係者に送りたい。

どうぞ、よそよそしさを恐れるより、無礼で馴れ馴れしい対応で、利用者の尊厳や誇りを奪い、心を殺してしまうことを恐れる人でいてください。
旅立つ人をどんな言葉で送りますか
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