2024年度の介護保険制度改正では、2027年度以降の改正に向けた様々な布石がちりばめられている。
例えば、介護保険制度の見直しに関する意見(2022/12/20)の28頁、(財務状況等の見える化)では以下のように記されている。
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・医療法人の経営情報に係る検討状況も踏まえ、介護サービス事業者の経営状況を詳細に把握・分析し、介護保険制度に係る施策の検討等に活用できるよう、介護サービス事業者が財務諸表等の経営に係る情報を定期的に都道府県知事に届け出ることとし、社会福祉法人と同様に、厚生労働大臣が当該情報に係るデータベースを整備するとともに、介護サービス事業者から届け出られた個別の事業所の情報を公表するのではなく、属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表することが適当である。その際、介護サービス事業者の事務負担等に十分に配慮する必要がある。
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このように社会福祉法人や障害福祉サービス事業所が法令の規定により事業所等の財務状況を公表することとされていることを踏まえて、2024年度以降は、社福以外の全介護サービス事業者にも同様の財務状況を公表する義務を課すことになる。
このことについて社福関係者の中には、この変更が社福にはあまり関係のないことで、新たに義務を課せられる社福以外の事業者の問題でしかないと思っている人が多い。
しかしその考えは間違っている。
このルール変更は、今後の社会福祉法人に大きな影響を与えかねない変更である。というよりむしろ社会福祉法人の屋台骨が外されてしまう大改革につながりかねない問題だと僕は思う。
なぜならこのルール変更によって、社会福祉法人とそれ以外の事業主体の差が縮小されたことになるからだ。
公益法人としての社会福祉法人は、他の経営主体よりもより高い倫理観で経営を行うよう、様々な義務を背負って運営されている。そのため財務状況を公表するという意味は、公益法人として公費を適切に支出していることを明らかにするという意味もあった。
しかし財務状況の公表が、全事業主体に広がったという意味は、その部分で民間営利企業との差が縮まったということになる。その意味をもっと深く考えてほしい。
この結果を受けて、社会福祉法人は何のために非課税という恩恵を得られているのだという声が挙がりかねない。というより財務諸表の公表を全サービスに広げようとする意図の一つは、そこにあるということだ。
2016年の社会福祉法改正の際に、その議論の中で社会福祉法人の非課税特権はなくしても良いのではないかという意見が出された。その時は、社会福祉法人の公益性は変わっていないとして、非課税廃止論は否定され、社会福祉法人の屋台骨と言える非課税は護られたわけである。
しかしそうした議論がされるということは、社福の非課税特権が未来永劫続くとは限らないことを意味している。
その勢力の際たるものが財務省であることは容易に想像がつく。
そうした財務省の思惑に沿って進められている介護保険制度改正と報酬改定のところどころに社会福祉法人の非課税特権をはく奪する布石が隠されているというわけである。その圧力を跳ね返す力を社福は持ち続けられるのだろうか。・・・厚労省は既に腰砕けではないのか・・・。
そうした厳しい状況を理解したうえで、社福の屋台骨である非課税特権を護ろうとするなら、公益事業であることを強く意識した事業経営が求められることは必然である。
低所得者に対する社会福祉法人の軽減措置を実施していない社福は、その看板を下ろして退場してもらわねばならないし、社福を舞台にした不適切ケア・虐待事件が起こるなんてもってのほかである。
非課税特権に甘えて危機感のない社福経営者は、現状把握をし直して足元を固めるべく、まずは公益性をしっかりと地域住民にアピールできる経営に心掛けてもらいたい。
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