厚労省は今月1日、令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要を公表した。

そこで示された最新の収支差率とは、令和3年度(2021年度)決算の数字であり、以下の図のように報告されている。
令和4年度介護介護サービスにおける収支差率
この結果について、コロナ禍の利用控えの影響を受けた、「通所介護」の収支悪化が話題となっているが、逆に言えば収支悪化の原因がはっきりしているのだから、利用控えが収まれば収支の回復が期待できるともいえる。(※通所リハも同じことがいえるだろう。)

特に2023年はいわゆる「団塊の世代」のおよそ7割が75歳以上の後期高齢者になる見込みで、通所サービス利用ニーズはまだ増えると思われる。そのため通所介護は飽和状態で、自然淘汰される事業所が増えるのではないかとされる懸念の声は、一時的にはかき消されるのではないだろうか。

それにも増して心配なのは、コロナ禍でもベッド稼働率の極端な低下がなかったはずの特養の収支差率が下がっていることだ。

上記の表をみてわかるように、特養の収支差率は既に1.3%となっている。介護施設は簡単にベッド数を増やことはできないので、これは非常に心配な数字である。

2021年度からちょうど10年前の、2011年度の介護事業経営調査では、介護3施設の収支差率平均は9.3%で、特養は10%を超えていた。

これが多額の内部留保批判論へとつながり、介護報酬改定の度に報酬削減の大きな理由となって、基本サービス費は引き下げられてきたわけである。

それによってわずか10年で特養の収支差率は1/10となった。しかしこれは危険水域ではないのだろうか・・・。

特養は介護保険制度以前は措置費運営で、職員給与は国家公務員に準拠(※同じという意味)されていた。

その為職員の平均勤務年数も高く、平均給与額も国家公務員並みだった。おそらく当時の老健施設(老人保健法時代)より平均給与額は高かっただろう。

そのような中で、僕が勤めていた社会福祉法人は、介護保険制度が施行された当時、既に事業開始から18年を経ていた。

その法人は、介護経営実態調査の収支差率調査の対象になったことはなかった。つまり国が公表する平均収支差率のもとになるデータは、介護保険制度以後にできた職員の経験年数が浅く、給与が低い事業者がかなり多く含まれているという疑いがぬぐえないのだ。

そういうデータに基づく数値の収支差率が1%台であるということは、全国の至る所で単年度赤字の特養が出現しているという意味ではないのか・・・。そういったところは、繰越金を取り崩して施設経営を続けているのだろう。しかし繰越金はいつか尽きるのである。

しかも収益率が1.3%まで下がった2021年度より、2022年度は物価高の影響によってさらに収益率が下がる特養が多いはずだ。そのような低い平均収益率のなかで、数多くの単年度赤字施設が発生するとしたら、それによって特養経営が破綻することも現実的になってくるのではないか。

それは介護難民を大量発生させることに繋がりかねない。特にそのことは、補足給付を受けないと施設サービスを利用できない低所得者層には大きなダメージとなるだろう。

2024年度の介護報酬改定について厚生労働省は、今年5月から最新の介護事業経営実態調査を行い、結果を今年10月ごろにまとめたうえで、その数値を直近のデータとして報酬改定の判断に使う予定にしている。

ここで実態に近い厳しい収益状況が把握され、基本サービス費が上がらないことにはどうしようもない。

全国老施協等の関係者は、介護事業経営実態調査が実態を正しく反映される調査対象を選んで実施されるように提言と監視を強め、プラス改定に向けて強力な運動を推し進めていく必要があるのではないか・・・。

財源がないとう理屈で特養の経営破綻が続出してよいのかということを、より強く訴えるべきでではないだろうか・・・。
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