僕は社会福祉法人の総合施設長という立場で、介護事業経営にあたって結果を残してきた実績があるため、介護事業経営者向けの研修講師を務める機会が多い。

同時に社会福祉士・介護支援専門員・家庭生活総合アカウンセラーなどの資格を持ち、ソーシャルワーカーとしての実務や、ケアマネジャーとしての実務も数多くこなしてきたため、それらの有資格者向け実務研修講師も務めるとともに、介護実務のコーディネート実績も数多いために、介護職員に向けた介護実務研修実務講師も務めている。(参照:masaの講演予定と履歴

つまり介護事業経営者・管理職・現場リーダー・実務職員等、すべての職種や立場の人々生の声を聴く機会が常にあるのだ。

だからこそ感じることは、介護保険制度改正に関連した今後の介護の在り方を考える際に、経営者や管理職と、相談援助や介護等の実務に携わる職員の意識の乖離が見られるということだ。

特に介護人材不足に対する対策において、この意識の差が激しいと感じることが多い。

例えば介護助手に関する意識差・・・。入所要件の厳格化で、原則要介護3以上の暮らしの場となっている特養では、食事介助が必要な人が大幅に増えており、自力で食事摂取できる人が少なくなっている。

当然そのことは食事介助時間の増加につながっており、入所要件厳格化以前の食事時間内では、食事介助が必要なすべての人に対する摂食介助が終わらない施設が多くなっている。そのことがそれ以外業務時間に食い込んで、さらに業務が回らなくなる状態を生んでいる。
介護保険制度改悪
この際に、経営者や管理職は、介護助手を活用して食事介助を行ってもらい、介護職員の業務負担を減らせばよいと考える人が多い。

しかし介護職員からすれば、それは心外なことであり、食事介助という大切で、かつ知識も技術も必要な行為を、介護職員になれない人に担わせて良いのかという声が挙げられている。

食事は「」ではないのだから、食事介助とは単に食わせて終わりという行為ではない。食事の愉しみを失わないように、おいしく食べられるように、姿勢や雰囲気・声掛けにも気を遣いながら介助する必要がある。これを介護職員になることができない助手にまかせては、介護の質が落ちるだけにとどまらず、誤嚥等の介護事故が頻発する恐れはないのか・・・。介護職員は、それらの職員への指導と見守りで、食事介助そっちのけで精神的負担が増えてバーンアウトしてしまうのではないか・・・。

この実証事件を、食事介助が必要ない人が多い在宅復帰型老健で行ってもしょうがないのだ。特養の助手導入モデル事業は、特養で行わねばならない。

介護保険施設の職員配置基準の3:1を4:1まで緩和することもしかりである。

そもそも3:1とか4:1とか言ったとしても、それ自体に職員は興味がない。これは利用者総数(前年度平均)に対しての職員配置比率でしかなく、日や時間によっては一人の職員10人以上に対応しなければならない状況は当たり前に生まれているので、比率そのものを問題視する介護職員は多くはない。

それより配置基準緩和に合わせて、実際に働く職員が削減されたとき、今より業務が厳しくならないのか、有給休暇を気兼ねなくとることができるのかという問題への関心が高いだけである。

ところが配置基準緩和の実証事件を行っている施設では、シフトを最大限に回して、職員の有給休暇等を考慮に入れないで行っているケースが多い。しかも実証実験期間が短い期間であるから、その期間だけなら何とか頑張るという、職員の最大限の努力の中で実証しているというに過ぎない。

最小限の人員で業務を回す期間が、永遠続くとなったら、「話は違う」という職員が多いことを、経営者や管理職は知っているのだろうか・・・。

職員は現場を取り仕切るリーダーや管理職に、そうした不安の声を挙げているのだろうが、人員削減ありきの実証実験は、経営者等の旗振りで行われているため、管理職は旗振り役の経営者等に、「それは無理です」という職員の声を挙げられないという状況も見られる。

介護の場で働く人々の、「真実の声」が届かないモデル事業結果によって、とんでもない改悪が行われてしまうことを強く懸念している。
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