認知症の中核症状記憶障害・見識障害・理解と判断力の低下・実行機能障害・感情表現の変化)には、今のところ現代医学の手が届かない。

中核症状を改善することは不可能であり、認知症治療薬もじくは予防薬と称されるものも、今現在存在していないのである。(参照:米承認の認知症新薬は人類を救うのか?

臨床で一番使用されているアリセプトドネペジル)は、アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の症状進行を抑制する効果しかなく、一定期間の服薬後は、その効果も期待できなくなる。

というか僕自身はアリセプトの服薬で、認知症の進行をスローダウンさせていると実感するケースに出会った記憶はほとんどなく、厄介な副作用に悩まされた挙句、アリセプトの服用をやめてケースが好転したという経験の方が多い。

どちらにしても僕たちが今現在できることは、認知症の中核症状に伴って生ずる行動・心理症状(BPSD)に手を届けることである。

行動症状としての多動、繰り返し、徘徊、異食、過食、拒食、引きこもりにどう対処するのか・・・心理症状である不安、焦燥、抑鬱、心気、不機嫌、興奮、攻撃的、幻覚、妄想をどう鎮めるのかを、そうした行動につながる要因を探り、その原因を潰していくところからアプローチして、行動・心理症状が、不穏、せん妄、大声、乱暴、破壊的行為、自傷行為などの破局反応に繋がらないように対処することが必要になる。

このような認知症の人への対応にも、「科学的介護」を創り上げるためにPDCAサイクルの確立が重要になる。認知症の行動心理症状に対するアセスメント結果を、しっかりケアプランに落として、ケアプランに沿った介護実践を行いながら、結果評価を繰り返してケアプランの内容を修正・進化させていこことが大事である。

よって利用者介護の具体的方法論である、施設サービス計画書や、通所介護などの各サービス計画は、形骸化させずに、実効性のあるものにしていく必要があるし、居宅サービス計画書は、実効性がある内容を組み入れられるように、認知症のどのような行動・心理症状にアプローチすべきかという具体策を示すことを心掛けていかねばならない。
行動心理症状のある認知症の人のケアプラン
上の図は、便秘による不快感が徘徊につながっているとアセスメントした人の居宅サービス計画書例である。この計画に沿って各事業所の計画が、便秘を改善できる内容となるようにサービス担当者会議で問題を共有化することが重要になる。

歩き回っている理由をきちんと探し当てるのが、徘徊する認知症の人の対応にとって最重要になるのである。

拒食の場合も同様に、食事を摂ろうとしない理由にアプローチせねばならない。それをせずに単に、「食え」・「これ旨いよ」って言ったって、なん解決策にもならないのだ。  

例えば、認知症の人の食卓に置かれた食べ物が、認知症の人にとっては何なのか正しく認識できていない「失認」という問題がある。しかしその失認の原因も様々で、食事に見えない理由が、食べ物が置かれた位置だとか高さによって食器の中身がよく見えなという場合もあるし、食器の模様や形状が、皿の上のものが食物であるという認識を邪魔している場合もある。

食事介助する人が立っていたり、歩き回っているために、落ち着いて食事ができない環境が原因の場合もある・・・。それらにきちんとアプローチする必要がある。

また歯周病や虫歯の痛みなどの口腔トラブルがあっても訴えられないという、口腔トラブルが拒食の原因になっているケースも少なくないし。舌苔(舌の汚れ)が厚く付いていることで、味を感じにくくなり、食欲が低下してしまう人も居る・・・この場合は、口腔ケアを適切に行うとともに、歯科受診を検討する計画書になっていなければならない。

拒食以外にも、観念性失行(使い慣れた道具を使えなくなること)により、手づかみでしか食事を摂れなくなる認知症の人は少なくない。

この場合、不潔だからといて手づかみで食べないように注意するなんている対応を行ってはならない。手づかみでしか食べられないことをなじったり、注意したりするのは愚の骨頂である。

食べる動作を失うということは認知症の中核症状であり、医療の手も・介護の手も届かないのだ。それを注意しても、プライドが傷つけられたり自信を失ったりして、行動・心理症状が悪化するだけの結果しか生まない。

こうしたケースでは、手指の清潔支援をしっかりと行いながら、主食をおにぎりで提供したり、朝食や昼食に積極的にサンドウィッチを提供したりして、食事形態を手でつかんで食べられるものに変えるケアプランが求められるのである。

認知症の行動・心理症状の改善には、こうした知恵が必要であることを理解したうえで、認知症の方々が混乱せずに、安心して暮らしを送るためには、ストレスフルな感情の払拭や陽性感情をもたらすことが何より必要なので、マナーのある態度で、認知症の方に脅威やストレスを与えないことが何より重要なのである。

1月17日(火)のオンライン講演は、こうした具体策をケアプラン作成の方法という形でまとめる予定だ。それでは視聴予定の皆様、画面を通じてお愛しましょう。
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