新年早々の1/6、米食品医薬品局(FDA)が、エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」を承認したというニュースが入ってきた。
この新薬はアルツハイマー型認知症の根本原因に対して作用すると言われており、それが本当なら認知症の予防や治療が現実的になってくる。それによって人類はアルツハイマー型認知症から解放されるかもしれない・・・。
そのことを説明する前に、アルツハイマー型認知症が発症するメカニズムを、「アミロイド仮説」をもとに確認してみよう。

上は、脳内現象を図解したものである。脳内にはもともと、「アミロイド前駆体蛋白」という物質があり、ここにセレクターゼという酵素が働いて、「アミロイドβ蛋白」が生ずる。
これは通常の脳内現象であるが、正常にこの現象が働く状態では、アミロイドβ蛋白は分解され脳外に自然排出される。
ところが何らかの原因(この原因は現在医学では特定できていない)によって、アミロイドβ蛋白が脳内に残留することが、アルツハイマー型認知症の発症原因になる。脳内に凝集・沈着したアミロイドβ蛋白がタウ蛋白を生み、脳内神経の血流を阻害し脳神経細胞を壊死させることでアルツハイマー型認知症の発症となっていくのである。
新薬はアミロイド仮説において、アルツハイマー型認知症の根本原因とされるアミロイドβ蛋白を直接狙って除去する効果があるとされるもので、下記の図のように脳内に貯留したアミロイドβ蛋白が、凝集・沈着する前に除去する効果が期待されており、タウ蛋白の出現や、それに伴う脳細胞の壊死を防いで、アルツハイマー型認知症にならず済むというものだ。

その通りの効果が出るならば、新薬は認知症の予防・治療薬といえるわけである。現在認知症の人に最も多く処方されているアリセプトが症状の進行を抑制する効果しかない薬であることと、この部分が根本的に異なっている。
最初の図に示したように、アルツハイマー型認知症の原因は、症状が発症す10年以上前から発生していると言われる。この説明文を書いている僕だとて、10年後にアルツハイマー型認知症の発生につながるアミロイドβ蛋白の貯留が、今現在始まっていないとは言い切れないわけである。
そのため、日本でも「レカネマブ」の承認申請が出されていることを受けて、早急に認可してほしいとの声も挙がっている
しかしFDAの今回の承認は、緊急承認とされており、それは仮免許的なものでしかない。今後の実証試験の結果、効果がないとされれば取り消されることとなる。
そもそも副作用などの有無・安全性の確認は十分ではないと思われ、性急な承認は、「ポパテ」の薬害の悪夢の再現となりかねない・・・1980年代後半に認知症の特効薬とされたポパテで何人の高齢者が、脳梗塞を発症して亡くなったかを思い出してほしい。
そういう意味では、今しばらくは米国の正式承認と、その後の臨床結果を見守るという慎重な姿勢が求められるのではないかと考えるのである。
我々介護関係者は、認知症の中核症状には、現代医学の手が届いていないことを前提にして、しかし行動心理症状には、介護の手が届くことを理解したうえで、その手をどう届かせるのかという具体策を日々学び、実践していくことが大事ではないかと思う。
僕の新年最初の講演は、「認知症のアセスメントとケアプラン作成について」というテーマである。
明日はそこで話す内容に少し触れながら、徘徊や拒食にどう対応するかを考えてみたい。明日の更新記事もぜひ読んでいただきたいと思う。
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