これからの時代は介護事業においても、データとデジタル技術を活用した業務フローの改善や新たなビジネスモデルの確立が必要とされる時代であると言われている。

そのため、「介護保険制度の見直しに関する意見」でも、介護事業介護DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が主要なテーマとして掲げられている。(4頁

さらに生産性の向上が求められていることから科学的介護が必要とされ、その実現が図られる今日・・・。愛情とかという言葉で、「介護実践」を語ろうとする人間は、古ぼけた化石のような存在だと批判を受けるのだろう。

しかし時代がどう変わろうとも、科学技術がどう進化しようとも、人と向かい合う職業や行為には、「真心(まごころ)」が一番大事になるのだと思う。

僕はそれを信じて疑わない。

真心(まごころ)とは、偽りや飾りのない心を意味する。誠意と言い換えることもできる。

知識や技術はどう努力しても、必要なレベルに追いつかない時がある。介護福祉士養成校卒業生に、就業と同時に10年経験がある人と同じ知識と技術を求めても無理がある。

最先端機器を使うことで、より高いレベルでの結果が出せると言われても、そうした機器や道具がどうしても揃わず、アナログ対応しかできない条件下で、介護サービスを提供しなければならないことも多々ある。

しかし真心をもって利用者に接するということは、経験がない人間にもできることであるし、最先端機器が使えない場所でも変わりなく可能となることである。

そして真心は時として、知識や技術を補って余りある、「生の感情」を利用者に与えることがある。

勿論、いつまでも知識や技術が拙く、真心だけで対応して良しとするものではない。真心に追いつき、追い越す知識や技術を獲得する努力はし続けねばならない。そこに真心が加われば鬼に金棒ではないのか・・・。

しかし真心とは、マニュアルを作成して与えられるものではない。教育して持つこともできない。なぜなら真心も人の感情の一つであり、その人の心の中に生まれるものだからである。

介護事業における、利用者に対して真心をもって接するという思いは、人は能力や置かれた状況に関係なく、「ただ人として存在していることに価値がある」という「人間尊重の価値前提」がしっかりと教育されているという基盤のもと、人として人を愛おしく思うという人間愛から生まれるものだと思う。

そこに介護のプロとしての誇りや、介護という職業の使命感を抱くことが加わって、真心をもって利用者に接するという行為が、自然と身について行くのだろうと思っている。

そうした思いを伝える旅を今年も続けていくつもりだ。
masa
ただし思いだけを伝えても形にならないと思っていることも事実で、僕の講演はあくまで実践論である。

僕の講演を受講した後にすぐに実践できる介護実務のノウハウを伝えるとともに、その実践を続けておれば、知らず知らずのうちに思いが形になるエッセンスを込めている。

自分の真心を言葉や文章に表すことができる・・・そんな実践論を語ろうと心掛けている。
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