先日、保健・医療・福祉サービス研究会(HMS)の「Visionと戦略」(11月20日発行)に掲載される座談会に出席したが、その中で、「居宅介護支援費の利用者自己負担導入」についても話題になった。(※当日の座談会の議論展開は、「Visionと戦略」(11月20日発行)をご覧願いたい。)
この議論は今年で足掛け15年目の議論となっており、自己負担導入は一番長く積み残されている課題とも言え、なおかつ年間約50億円以上の財政効果が見込まれることから、いよいよその実現が図られるのではないかという声も高まっている。
しかし前回の制度改正議論の際も、同じように実現可能性が高いと言われながら、業界各団体から反対論が高まった影響もあってか、結局自己負担導入は行われなかった。
10/26の社保審・介護保険部会でも、日経連と健康保険組合連合会の代表委員が自己負担導入に賛同する意見を述べたものの、その他の委員は全員反対意見を述べた。
またこの部会に先駆けて日本介護支援専門員協会は、居宅介護支援の現行の10割給付を今後とも維持していくよう訴える要望書を厚生労働省に提出しているが、この要望書は全国老人保健施設協会、全国老人福祉施設協議会、日本介護福祉士会、日本認知症グループホーム協会、全国コープ福祉事業連帯機構、民間事業者の質を高める全国介護事業者協議会、日本在宅介護協会、市民福祉団体全国協議会、JA高齢者福祉ネットワークの10団体の連名によるものとなっている。
こんなふうに前回改正議論の時と同じように、居宅介護支援費の現行給付の維持・継続という意見が強まっており、簡単に自己負担導入に舵を取るようなことはできない雰囲気は出てきているように感じる。
そのような中、7日の財政制度等審議会・財政制度分科会で財務省は、この問題に関して2024年度から実行すべきと重ねて求めた。
居宅介護支援費の利用者自己負担が実現すれば、「利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすれば、ケアマネジメントの意義を認識するとともに、サービスのチェックと質の向上にも資する」と財務省は主張する。
しかしこれは歪んだ論理でしかない。(プラン内容が理解できない認知症の人を除いて)自分のケアプランに関心のない利用者なんて存在するわけがないからだ。
自己負担のあるなしにかかわらず、自分の身上・暮らしに関わるケアプランは、利用者にとって最も関心のあるものだ。
これが自己負担導入でさらに関心が高まり、ケアマネジメントの意義を感ずることに通ずるなんてことにはならない。暴論もここまでくると世迷言に過ぎなくなる。
こんな理屈の通らないことを国の審議会という場で、よく恥も外聞もなく発言できるものだ。さすれば官僚とはなんと厚顔無恥の存在なのかということだ・・・。
介護施設などの報酬にケアマネジメントの経費が内包されていることを踏まえ、「施設と在宅で公平性が確保されていない」とも指摘しているが、この論理も首をひねる部分がある・・・本当に施設サービス費にはケアマネジメントの経費が内包されているのか?
だって措置制度から介護保険制度になったときに、その費用が上乗せされたなんて事実はないぞ。介護支援専門員の配置義務が新たに設けられたのにもかかわらず、人件費の上乗せもなかった。その際の論理は、相談員が介護支援専門員を兼務できて、ケアマネジメントはもともと相談援助業務として行っているもので、施設サービス計画も、相談員が立案していた「個別処遇計画」は替わるものでしかないというものだったのではないのか?
それは置くとしても、そもそもケアマネジメントに特化した居宅介護支援費と、介護の費用が大部分を占める施設サービス費の自己負担の在り方を同じ土俵で論ずることがおかしい。両者の利用者負担構造に違いがあったってなにも不思議ではなく、不公平でもない。
加えて言えば、施設サービス計画書が施設サービスの要件であるのに対し、居宅サービス計画書はサービス要件ではなく、償還払いを現物給付化する手段であるという違いもあるのだから、自己負担構造が同じでなくとも公平ではないとは言えないのである。
そのため制度開始当初から、「要介護の利用者に対し、個々の解決すべき課題、その心身の状況や置かれている環境などに応じて、保健・医療・福祉にわたるサービスが、多様な提供主体により総合的かつ効率的に提供されるようにすること」という重要性に鑑みて、居宅介護支援費は10割給付されていたものである。
こうした理念の重要性は、介護制度創設から時を経ても決して変わるものでもないし、揺らぐものでもない。
よって財務省の自己負担導入の理屈には、一片の正論もなく、論理性に欠ける勝手な愚論と結論付けねばならない。詭弁と言ってよいだろう。
この問題に関しては、厚労省は財務省のように、自己負担導入に積極的ではないような感がしている。そこが関係者の希望と言えるのではないのだろうか・・・。
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