昨日(11/7)の財政制度分科会では、次期介護保険制度改正で、2割・3割の対象者を拡大することについて、「早急に結論を得るべく検討を」とトーンを高くして迫る場面が見られた。
この問題は岸田首相も給付と負担の見直しという観点から、「負担できる人には負担を求める」ことを国会で答弁しているので、2割負担3割負担者の所得基準見直しは避けられない見込みである。
おそらく今年10月から2割負担の基準が変更された、「後期高齢者医療制度」に合わせて変更されるのではないか。
この場合、「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身世帯なら280万円以上が2割負担とされている現行基準を、200万以上に下げることを中心に検討が行われるだろう。
一方でつい先日ツイッターで「#要介護1と2の保険外し」がトレンド入りした(参照:発信力で負けている介護事業団体)、軽介護者の訪問・通所介護等の総合事業化については、それを推進すべきという声のトーンが落とされている。
財務省は今回、要介護1と2の高齢者に対してこれまで使ってきた「軽度者」という表現を避けた。これは要介護1と2の対象者は、必ずしも軽介護者ではなく、それらの人を対象にしたサービスを総合事業化することは、即ち給付外しそのもので、要介護1と2の人たちが必要なサービスを受けられなくなる改悪であるという反対論を考慮した表現変更と思える。
財務省はそのうえで、「今後も介護需要の大幅な増加が見込まれるなか、生活援助型サービスをはじめ、全国一律の基準ではなく、人員配置や運営基準の緩和などを通じて、地域の実情に合わせた多様な人材・資源を活用する枠組みを構築する必要がある。」と主張している。
つまり訪問・通所介護を一挙に総合事業化するのではなく、とりあえず訪問介護の生活援助のみを総合事業化してはどうかと提案したという意味だ。
訪問介護と通所介護をまとめて総合事業化する案には強い抵抗が予測され、なおかつ地域社会の現状を見ると、要介護2以下の方を受け入れることができる、「通いの場」が十分ではないという問題がある。
仮に今強引に、要介護2以下の利用者の通所介護を地域の総合事業化したとしても、現状では現在利用者が利用している通所介護事業所に総合事業を委託するしかないケースがほとんどである。
また利用者宅で身体介護ができるボランティアもほとんどいないと考えられ、これも現行の訪問介護事業所に委託する形で総合事業としてのサービスをせざるを得ない。
つまり訪問介護の身体介護と通所介護については、総合事業化したとしても現在と同じサービスを行って、給付単価だけを総合事業に見合って下げると同時に、年額上限の範囲で給付するという、改正とは言えないお茶を濁したルール変更にしかならないことが明らかなのである。
そうした批判や反対論が強いことから、次期改正では訪問介護の身体介護と通所介護の総合事業化は、見送ってもやむを得ないという考え方に財務省はシフトしたものと思える。
その代わり、訪問介護の中から生活援助だけを切り取って総合事業化しようというのが、昨日の財務省の新たな提案である。
これによって通所介護の要介護2以下の総合事業化案は、事実上なくなったと考えてよいのではないか。しかしそれも2024年改正に限ったことでしかない。
もし今回、財務省の譲歩案が通って、生活援助の総合事業化が実現した場合、それは大きな橋頭保(きょうとうほ)になるだろう。
今回はソフトランディングとして生活援助のみを総合事業化し、その次はいよいよ、訪問・通所介護の一括した総合事業化が促進されると考えて間違いのないところだ。
つまり財務省の腹づもりとは、次期改正の最大のテーマは、利用者負担割合いの所得基準見直しで、2割負担者を全体の25%(4人に一人を2割負担以上とする)に近づけること・・・。その先には、介護保険の負担割合のスタンダードを2割負担として、1割負担をなくすこと・・・その実現を図る改正を優先して、訪問介護の身体介護と通所介護の総合事業化は後回しにしても良いという判断だろう。
決して通所介護等の要介護2以下の対象者を、市町村の総合事業に移行させようとする目論見がなくなったわけではないことを、関係者の方々はしっかりと肝に銘じ、今後もそうならないように抵抗・反対の声を全国各地から挙げ続けねばならない。
そのことだけは忘れないでいてほしい。
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