介護事業の生産性を高めるためにICTの活用が求められている中、国が構築しているケアプラン連携システムが、2022年2月からパイロット運用が始められ、同年4月から本格運用される。

これに伴って、介護保険最新情報Vol.1109は、このシステム概要を周知する第2報を通知している。

ここでは、「 先行事例や厚生労働省の先行調査研究等を参考に、過度な負担にならないよう検討中」としていたシステム使用料金について、「1事業所あたりのライセンス料は年間21,000円(税込み)。支払方法は、電子請求の証明書発行手数料と同様、国保連合会に請求する介護給付費からの差引きを可能」と通知している。
ケアプラン連携システムの業務フロー
国はこのシステムを使うことで、人件費削減を考慮した場合、年間81.6万円のコスト削減ができるとしており(※人件費削減を含めない場合は、通信費などが7万2千円の削減としている)、使用料を支払っても、なおかつコスト削減につながると言いたいのだろうが、なんともせこいとしか言いようがない。

介護事業の生産性の向上は、生産年齢人口と労働力人口が減少し続けるという社会問題に起因して、国を挙げて推奨している問題であり、このシステムもそのための事業者支援策なのだから、システムの開発・維持も国策である。

そうした事業者支援策のシステムに使用料を課して、事業者から開発費や維持費の一部を吸い上げて、なおかつ将来的にはそこから利益を発生させるような使用料徴収は、悪徳代官のぼったくり行為を連想させる破廉恥な発想だ。

ここは肝っ玉を太くして、使用料も無料としてほしかったところである。

ケアプランデータ連携システムは、その名の通り連携のためのツールである。具体的には居宅介護支援事業所と他の居宅サービス事業所との間で、ケアプラン1.2.6.7表の情報授受を行うことができるシステムだ。(※将来的には3.4.5表も情報授受できるようにする予定とのこと。

これによって毎月の居宅サービス利用予定や実績がデジタルデータで送受信でき、給付管理に必要な実績などが自動反映されることになる。介護ソフトの予定や実績が反映できるのだから、居宅サービス事業所・居宅介護支援事業所ともに手作業部分が減ることは間違いなく、通信に必要な業務時間も削減できる効果は確かにあるだろう。(※FAXでの予定・実績送信時間がかなりかかっているのではないか・・・郵送ならなおさらである・・・。)

このシステムは、現在使用している介護計画作成ソフトなどに、新たにケアプランデータ連携ソフト(無料)をダウンロードすることで、介護事業所間でデジタルデータの授受を完結できることになる。

だが使っているソフトによっては、このシステムが機能しないものもあり、「出力のみ対応」や「取り込んで印刷できます。システムへの反映はできません」といったメッセージが示されるものもあるそうだ。

つまり完全にこのシステムに乗っかって、デジタルデータの授受を完結させるためには、介護ソフトを変えなければならない事業所も少なくないということになる。

このシステムの活用は義務ではなく任意なので、そこまでお金と手間をかけてまで、システム活用しようということになるかという疑問が出てくる。

多くの事業者が活用しないことには、このシステムはあまり意味のないものになる。地域の特定の居宅介護支援事業所と特定の介護サービス事業所間でのみ、このシステムが機能するだけで、他の事業所間のやり取りは従前のままのFAX対応が中心であっては、コスト削減にも業務負担軽減にもつながらないからだ。

地域の多くの事業所が、このシステムを活用する場合にはじめて、相互にメリットを享受できるのである。

そういう意味では、システム運用の阻害要因となり得る使用料は、やはり邪魔だとしか言えないわけであるが、国はそれでもこのシステムは浸透していくとみているのだろう。

その理由は、介護事業者のうち大手企業のいくつかが、このシステムの導入・運用に積極的に乗っかっているからだ。

全国展開する大手企業にとって、労働人口社会の中で企業体力を維持して収益を挙げ続けるためには、生産性の向上が喫緊の課題であり、あらゆる方法で人手をかけずにより多くの成果を上げる必要に迫られている。

そのためケアプラン連携システムを積極的に運用して、情報授受のデジタル化が進行するのは、その目的に合致しているのだ。

そうなると大手企業に所属する居宅介護支援事業所の居宅サービス計画においては、このシステムに対応していない居宅サービス事業所(訪問介護や通所介護等)を排除して、このシステムを使っている事業所を優先的に選んでいくことになろう。

そうであれば選ばれずに収益が確保できなくなることがないように、このシステムに対応した業務ソフトに変えて、毎月の使用料も支払って、システム運用して、従前以上に顧客を紹介し続けてもらおうと考えるのも人情だ。そういう居宅サービス事業所も当然増えるだろう。

しかもよりデジタル化された情報授受の方法に一旦慣れると、過去のアナログ対応には戻れないのも人情だ。

だからこのシステム運用は確実に浸透し、介護事業者の情報授受のスタンダードとなっていくだろう。

そこに乗っていかないと、今後の居宅介護サービスのスタンダードビジネスからは外れて、はじかれるという意味に通ずる恐れもある。

よってシステムを使うかどうかなど迷っている問題ではないのかもしれない。
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