10/26に開催された第100回社会保障審議会介護保険部会は、「給付と負担について」が主題であった。

そこでは現行で10割給付となっている居宅介護支援のケアマネジメントに利用者負担を導入することの是非が議論されたが、日本経団連健康保険組合連合会の代表委員が利用者負担導入に賛成の意見を述べたものの、そのほかの委員からはケアプラン有料化に反対意見が相次いだ。

利用者負担に賛成する人の理屈は、現役世代の負担をこれ以上増やすことはできないという、「給付と負担の見直し論」であり、なおかつ施設サービス費にはケアマネジメントの費用も含まれており、利用者はそれを実質的に負担していることから、そことの整合性を取るべきだというものだ。

それに対して利用者負担に反対する人の理屈は、居宅介護支援の利用控えによって早期発見・対応に遅れが生じる危険性があり、それは結果的にのちのサービス増大による給付増加につながることや、居宅介護支援がサービスの現物給付化に不可欠な重要なサービスであることなどである。

しかしこれらの議論・・・自己負担導入に賛成する意見も・反対する意見も、どちらも目新しい議論ではなく、15年前から繰り返し論じられてきたものである。

よってこの問題の結論は、賛成論と反対論のどちらに説得力があるかによって左右されるものではなく、世間の空気を読みながら、時期と社会情勢をにらんで自己負担導入のタイミングを図るということに過ぎないような気がする。

前にも書いたが、この議論は足掛け15年にも渡る議論で、一番長く先送りされている課題ともされている。そして定率負担導入が実現すれば59億円程度の財政効果が見込まれることから、自己負担導入の可能性は高まっていると予測する人が多い。

一方で物価高の中で2割負担者の拡大が確実な情勢で、居宅介護支援費の自己負担導入も実現された場合、その痛みを負う国民の反発が強まることを懸念する声もちらほら聴こえてくる・・・いくら政治的には国政選挙まで間遠い、「黄金の3年間」の真っ最中に行われる制度改正・報酬改定であったとしても、国民からのしっぺ返しを恐れる空気もないわけではない。

そしてここにきて日本介護支援専門員協会が現行給付の維持・継続を求めた要望書を提出し、26日の議論も自己負担導入反対論が多勢を占めた。

そのため居宅介護支援費の自己負担導入がどうなるかという結論はまだ予測がつかないし、今回も見送りになってくれることを期待するというのが、僕の現在の見解と気持ちである。
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ところで世間では、居宅介護支援費の自己負担が実現した場合、「御用聞きケアマネ」が増えるのではないという意見がある。「お金を払っているんだから、自分の希望通りの計画にしろ」・「ケアマネのあんたの給料は、私たちの懐から出ているのだから、私の言うことを聴け」という利用者が増えて、そのプレッシャーに屈してしまうケアマネジャーが増えるという懸念である。

そのような懸念があることを踏まえたうえで、あえて声を大にして言いたい。「まともな介護支援専門員は制度がどうあろうと、ケアマネジメントの本質を揺らがせるようなことはしない」・・・と。

自己負担の有無によって、ケアマネジメントの結果を示す居宅サービス計画書の内容が変わるなんてことになれば、介護支援専門員の存在の意義が問われる問題になってしまう。そんなことにならないように、制度がどうあろうと基本姿勢は揺るがないことを、すべての介護支援専門員は示さねばならない。

利用者本位の支援姿勢を揺るがせず、なおかつ利用者のためにならない計画は立案しないし迎合しない姿勢も揺るがせてはならない。

同時にケアプランが利用者の希望の芽を摘むものであってはならないことも自覚してほしい。

それはニーズではなく、単なるデマンドである」とか、「何でもサービスを利用するような甘えは許さない」なんて言葉を簡単に使わないでほしい。

利用者ニーズを正確に抽出するアセスメントツールなんてないし、常にそれを正確に把握できる神のようなケアマネジャーもいないのだ。時には利用者の甘えと思えるような希望に対応することが、利用者の真のニーズにアプローチできる唯一の方法という場合もあるのだ。

ケアプランとは、心身に障害があったとしても、「できるかもしれないこと」に着目して、利用者の「したいこと」を「できること」に変えるための約束と希望の宣言書である。

そのことを決して忘れずに、その実現を図る介護支援専門員でいてほしい。
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