このブログで何度か指摘しているように、居宅サービス計画書と施設サービス計画書との法的位置づけには大きな違いがある。
居宅サービス計画書は、保険給付サービスの要件となっておらず、償還払いサービスを現物給付化する手段でしかない。
もう少し詳しく解説すると、介護保険の居宅サービスを受ける際の原則は償還払いとなっている。このため利用者は一旦10割の費用を居宅サービス事業所に支払って、後に役所から自己負担分を除く費用の還付を受けることになる。
しかし一時的でもサービス費用の全額を支払うことが負担と感ずる人も多い。そのため居宅サービス計画書を作成し、その計画に基づいたサービスを提供することで、居宅サービス事業所(通所介護事業所等)は保険請求できるようになる。つまり利用者はサービス利用時に自己負担割合に基づいた支払いで済むようになるわけである。これがサービスの現物給付化である。
よって初めから償還払いで良しとする人は、居宅サービス計画を作成せずにサービス利用することは可能である。
それに対して施設サービス計画書は、保険給付サービスの要件となっており、施設サービス計画のない状態でのサービス利用は認められていない。(※居宅サービス計画と施設サービス計画の法的位置付けの違い)
そのため入所初日から施設サービス計画書は必要なので、インテーク(入所前面接)の際などに、老企29号通知の〔別紙 4〕課題分析標準項目についてで示されている、「課題分析標準項目23項目」に基づくアセスメントを行って、仮であっても施設サービス計画書を作成しておく必要がある。
施設サービス計画書とは、それだけ重要な計画であるにもかかわらず、施設サービス計画書に基づいたサービスが実施できていない施設がある。
例えば、計画書が形骸化し行政指導のための書式に貶められている施設では、計画内容を熟知していない介護職等が利用者対応している状況が見受けられる。
しかしそれは運営基準違反を問われるだけではなく、契約不履行の責任を問われかねない問題である。
なぜなら介護施設の指定基準(特養の場合は、指定基準12条7項)では、「施設サービス計画の原案の内容について入所者又はその家族に対して説明し、文書により入所者の同意を得なければならない。」とされており、その同意を得ている以上、同意を得た内容のサービスを実施していない状態は契約不履行状態となるからだ。
この場合、契約どうりにサービス提供されていない状態は、損害賠償対象事由になり得ることにも注意が必要だ。(※実際には、過去にそう言った損害賠償事例はない。)
しかも2021年度の報酬改定では、LIFEへの情報提供を行う加算が新設されている。そしてこの加算のいくつかは、単に情報をLIFEに送るだけではなく、LIFEがその情報を分析し、情報提出先にフィードバックを行い、そのフィードバックされたものを、介護事業者はPDCA活用しなければならない。

上記の図は、科学的介護の目指すフィードバック活用の将来像である。
ここでは栄養状態と身体機能の維持・向上の因果関係を抽出したと想定した場合に行いたいフィードバックについて例示しているが、施設サービスにおける個人フィードバックについては、施設サービス計画書に、フィードバックされた内容を反映する必要がある。
(※現在は、フィードバックが暫定版にとどまっており、活用できるものだけすればよいとされ、実質フィードバック活用がされていなくとも問題はない。ただし正式版に備えて、できるものは随時フィードバックしておくことが望ましい。)
そのため施設サービス計画書の内容に沿ったサービスの実施がより重要視され、そこに齟齬がある場合、LIFE関連加算の返還指導を受ける可能性も無きにしも非ずである。
そうならないためにも、ごく当たり前に施設サービス計画書の内容に沿ったサービス提供を意識せねばならないし、そのために実行可能な施設サービス計画を作成せねばならない。
なお施設サービス計画と同じ法的な位置づけとなっている、居宅サービス事業所の計画(通所介護計画・通所リハビリ計画等)も施設サービス計画書と同じことがいえるわけであり、LIFEからのフィードバック活用した計画実施が求められてくる。
その重要性に気が付いた先見性のある介護施設や居宅サービス事業所及びそれらの職能団体では、「計画書に沿ったサービス提供」をテーマにした研修を行うところが増えてきた。
そのため僕も、「ケアプランの重要性とそれに基づいたケアの実践」といったテーマで、施設サービス計画書や通所介護計画書に基づいたサービスの在り方・実務に結びつく計画の作成方法等について講演する機会が増えている。
どちらにしても今後は、施設サービス計画書や各居宅サービス事業所の個別計画書に基づくサービス提供と、その検証作業ということがより重要になるし、行政による運営指導も、この点を重点的に検査していくことになるので、その備えを十分にしておく必要がある。
このように今後の介護事業においては、ケアプランを単なる行政指導のアリバイ作りのための書式として終わりにせず、ケアサービスチーム内の共通言語として実務に活用することが何より求められるのである。
そのことをしっかりと理解して、LIFEからのフィードバック正式版に備えておいてほしい。
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