看取り介護という言葉は、介護関係者ならば知らない人はいないくらい浸透している。
しかしその実践レベルたるや惨憺たるものである。ただ単にそこで人を死なせているだけで、「看取り介護」と称している介護事業者も少なくない。
本物の看取り介護とは程遠い、「看取り介護もどき」しかできていない介護事業者では、そこで看取り介護に携わる職員も、利用者の命と人生の最終ステージに寄り添うことができていない。
そうしたところでは、利用者本位とは何かという意味さえ考えられずに、事業者と職員の都合で、勝手なルールを利用者に押し付けて、人生の最終ステージを哀しく辛いものに変えてしまっている。恥を知れと言いたい。
そもそも看取り介護とは、どのような介護なのかを理解していない介護関係者が多すぎると思う。一度僕の看取り介護講演を受講してほしいものだ・・・。
下記の画像は、ある方が先日ツイートしたものだ。そしてこのツイートに対しては、たくさんの批判ツイートが付けられ、炎上状態に陥ったのである。

この投稿に介護関係者と思しき人たちが、「看護師に相談なしに勝手な行為をするな」・「誤嚥させたらどうする」・「窒息死したら責任を取れるのか」・「勝手な判断で、利用者を危険にさらすな」などと多くの批判ツイートが付けられている。
皆さんはどう考えるだろう。アイスを食べたいという、終末期の人に対して、アイスを舐めることができるように支援する行為が、こんなに批判を受ける行為だろうか・・・。
僕はそうは思わない。こんな行為を、いちいち看護師に尋ねないとできないと考える「硬直した馬鹿頭」の方をどうにかすべきだと思う。
舌の上に溶かしてアイスを舐めさせる行為が、どうして誤嚥や窒息に結びつくというのだろう。そんな行為で窒息死する人は、とっくの前に自分の唾液で窒息死しているはずだ。
終末期の人の最終盤時期は、ほぼすべての人が食事や水分の経口摂取が難しくなる。この場合、禁食という指示が医師より出されることがほとんどだ。だが食事の経口摂取ができないからと言って、味わうということができる人が、その愉しみや希望を奪われてよいことにはならない。
だからこそ・・・禁食になった以後にこそ、味わうという行為を保障する心配りが必要だ。
勿論その際には、「最後の晩餐に関する対立」で指摘したように、口からものを食べさせたいという「思い」だけを先行させないようにしなければならない。
現実に機能として食物の経口摂取が無理な状況も考慮に入れないと大変なことになり、誤嚥や窒息に繋がれば、終末期診断につながる病状とは関係のない問題で利用者を苦しめる結果になるのである。
しかし舌の上で、味わう行為をそれと同じく考えては困る。終末期の人に行ってよい行為は、医療行為ではない限り、医師や看護職の指示・助言を必ずしも必要としないのである。
僕が総合施設長を務めていた特養は、ユニットケアのしつらえがない従来型多床室中心の古い施設であったが、それでも利用者一人一人に、個人専用の冷蔵庫を設置していた。個人の食べたいもの・呑みあいものを遠慮なく味わってもらうためだ。
その冷蔵庫は、看取り介護の場で大いに活躍していた。
看取り介護対象者の方の場合は、禁食になった後はその冷蔵庫に、管理栄養士が責任をもって、その方の好きなもので、味わうことができるものを毎日食品管理して入れることをルーティンにしていたのである。
アイスクリームが食べたい・・プリンが食べたい・・・煮豆が食べたい。そんな思いを持った瞬間に、味わってもらうことが大事だから、管理栄養士がその方の状態で、味わうことができる状態(※例えば、毎日煮豆を煮て、ペースト状態にしたものを小さなタッパーに入れ、冷蔵庫で保存する等々)で保存していた。
看取り介護対象者が、「〇〇したい」と言った瞬間に、その要求に応える心づもりがないと、先送りさせた希望は、かなうことがないまま死を迎えることだってあるのだ。
いま舌の上で味わいたいものは、1時間後にはもう味わうことさえできなくなることもあるのだ。そこには後悔しか残らない。舌の上にアイスをとろかすという行為を、いちいちいつ来るかわからない看護職員に尋ねえるのを待つ時間なんて残されていないのが看取り介護だ。
僕がいた特養であれば、こんなことは議論にもならない。全職員が普通に、当たり前の支援として、アイスを味わっていただく支援をするだろうし、それにいちいちイチャモンをつける、「はんかくさい輩」も存在しない。
何度も書いているように、看取り介護とは誰かの人生の最終ステージの、「生きる」を支える重要な支援行為であることを、もっと深く理解してほしい。
そして、もっと看取り介護に真摯に取り組む姿勢を学んでほしいと切に願うのである。
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