つい先日、東京都北区の特養職員が夜勤業務中に利用者の言動に腹を立て、殺害した後、逃亡先の札幌市で逮捕されるというショッキングな事件があり、「夜勤専任者が指名手配された特養の評判とその教訓」という記事で、人材の見極め人権教育をおざなりにするつけがいかに重たいかを指摘したばかりだ。

その記憶も新しいこの時期に、また都内の特養で、夜勤中の介護職員による利用者への暴行逮捕事件が起こった。

様々なネット報道から得られる情報により、明らかになった事件概要は以下の通り。
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事件の舞台となったのは、青梅市新町の特別養護老人ホーム「あゆみえん」。ここで9月13日午後7時10分ごろ、入所女性(93)に暴行を加えて重傷を負わせたとして、介護職員・森田航平容疑者(23)が傷害容疑で逮捕された。

容疑者は調べに「忙しい時に『トイレに行きたい』と介助の申し出があり、かっとなって5、6回殴ってしまった」と容疑を認めているという。

施設は取材に対し「被害にあわれた利用者とご家族に深くおわびいたします。このような重大な事件を起こしてしまい、誠に申し訳ございません。職員全員に権利擁護教育を実施して参ります」とコメントしているという。(※ここまでネット上の情報をつなぎ合わせてみた。
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この事件も夜勤時間帯に起こっている。おそらくフロア単位でみればワンオペ夜勤という状態だったのだろう。容疑者は、すべての行為を自分で判断し、自分の考えで実行できる状態だ。

一部の報道では、容疑者を介護福祉士としているものもあるが、正確な情報かどうかは不明。どちらにしても23歳という若者が、自分の職場である特養内で利用者に暴行するという、今後の人生を棒に振りかねないひどい事件を起こしたことになる。

しかもその動機が、「利用者がトイレに行きたいと言われたことに腹を立てた」というあきれた理由である。

介護職員の基本業務はADL支援である。その上にQOLの向上支援などを積み上げるのが介護という仕事であり、最も根底にある一番重要で、かつ当然しなければならないADL支援。その中でも排泄介護は、人の暮らしを護るために一番重要視されてよい業務である。その支援業務を差し置いて、何をしようとしていたのか・・・。「忙しいときに・・・」という理屈は、全く通用しないといえよう。

そもそもそのような理由で腹を立てる職員がいるという職場環境はどうなっているのか。(※参照:介護老人福祉施設 あゆみえんの口コミ・評判

排泄支援を差し置いて、忙しくて手が離せないとさせる何を指せていたのか。介護業務とは何たるかという教育がされていたのか・・・。人権教育はできていたのだろうか。

しかし実際に容疑者が行った犯行を鑑みると、そこには人権意識の欠片も感じられない。
枯れ花
彼は、誰かの心に咲く花になれない、枯れた花でしかない。そういう職員に夜勤を任せて起きた犯行であるともいえる。

被害者は車いす生活で、トイレに行く際には職員の介助が必要だったという。本人から被害の訴えはなく、事件翌日に別の職員が被害女性のあざに気づいて上司に報告し、上司が男から事情を聴いたところ、暴行したことを認めたため署に通報したという経緯から考えると、被害者は認知機能障害もあったと想像できる。

さすれば本人が被害を訴えらないことを容疑者が知っており、暴行がはかっくしないと高をくくっていた可能性も否定できない。そうであればなおさら悪質な事件である。

母体の社会福祉法人・徳心会の公式サイトでは、「特別養護老人ホームあゆみえん職員によるご入居者への虐待傷害事件について」という理事長のコメントが掲載されている。

しかし犯罪が起きてから謝罪しても、被害者にとって何の意味もない。被害者は今回事件で肋骨や左腕の骨が折れるなどの重傷を負ったとのことで、さらに身体機能が低下することが懸念される。それは一片の謝罪文で許されるような被害ではない。理事長や施設長は、経営責任や管理責任をきちんととるべきである。

そう考えると、こうした事件を起こさないような人権教育は、実効性の伴う内容でなければならないことが理解されると思う。表面上・形式上の教育では意味がないのが。

そうであれば人権教育とは、対人援助を行うにふさわしい適性を判断し、人間尊重の価値前提を理解できない人物を排除するということが伴う教育だということも理解してほしい。そうした覚悟がないと夜勤を伴う対人援助サービスなんて労務管理できない。

介護事業経営者や、管理職を務めている人たちには、どうかそういう覚悟をもって経営と管理に当たっていただきたい。サービスマナーの徹底を図る教育は、最も重要な基盤である。

実践的な、「サービスマナー研修」は、介護事業経営上、欠かすことのできない事業戦略上の必須事項であることを理解しなければならない。そうした研修定期的に実施するシステムを構築することを急がねばならない。

そうしないことには、いくら制度改正や報酬改定の内容を理解したとしても、介護事業はそれとは関係のないところで、足元から崩壊せざるを得ないのである。
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