9/16に公表された、「厚生労働白書」では、介護職員の離職率は2020年度で14.9%となっている。

これは前年度より0.5ポイント低く、10年前の2010年度(17.8%)から2.9ポイント低い数字となっており、その分介護事業に定着する従業者が増えていることを表すものだ。

2020年度の全産業合計の離職率は14.2%で、その水準との格差は決して大きくなく、むしろ調査データの誤差を鑑みると、すでに介護事業と他事業の離職率に差はないと言ってよいかもしれない。

注目すべきは離職者が減少に転じた時期である。介護職員の待遇改善が盛んに話題となり、処遇改善補助金が導入された前年から、離職率低下が始まっている。その事実を見ると、国の施策として介護職員の処遇改善が行われてきたことは、間違った対策ではなかったと言えるのかもしれない。

しかしその一方で、2020年度でみると離職率が10%未満の介護事業所が46.6%を占めている反面、30%以上の離職率となっている介護事業所も18.2%存在している。

白書ではこうした離職率の2極化について、特に小規模の事業所で顕著だと報告されている。

例えば介護職員が9人以下の事業所。10%未満の事業所が49.7%と非常に多い一方で、30%以上の事業所も28.9%と4分の1を超えている。介護職員が10人〜19人の事業所も同様に、10%未満と30%以上がそれぞれ多くなっている。
落陽
小規模事業所は、こじんまりとした環境の中で、従業員同士の関係性も近い距離で深く築くことができる反面、人間関係が濃密になりすぎて、一旦関係がこじれると逃げ場がないという面がある。

だからこそ経営者や管理職の姿勢が重要になる。

小規模で事業経営を行う際のメリットを十分に理解したうえで、形骸化しない理念を掲げ、その実現を目指して手を取り合える考え方とスキルを持った従業員を集めることがまず大事だ。

小規模事業所であれば、立ち上げ資金も少なくて済むということで手を挙げ、理念も方法論も持たない状態で、募集に応募してくる人を誰でも良いから寄せ集めて、あとは現場に任せておけば何とかなるだろうという考え方では、職場環境は良くなるはずがないし、そこで良好な人間関係が築かれることもなく、職員は定着しないだろう。

小規模事業所を経営するならば、小規模というメリットを生かして、利用者と近い距離で信頼関係を深く構築しようとすることを理念とし、そうした目的に賛同し、志を同じくする覚悟を持った人を採用することがまずは重要だ。

そのうえで経営者や管理職は、従業員に日ごろから介護のプロとして働き続ける厳しい姿勢を求めつつ、日々の業務に汗を流してくれることに感謝の気持ちをもって、利用者の暮らしの質を向上させるためのチーム作りを常に念頭に置いた経営・管理を行う必要がある。

そうした事業所は、小規模のメリットを最大限生かしながら、働き甲斐のある職場環境が創られるだろう。そこでは従業員に自らの職業への誇りと使命感が生まれ、働き続けるという動機づけも高まるのは当然だ。

小規模事業所は、人事異動などで適材適所に人を配置するという機能は、大規模事業所より劣るかもしれない。スケールメリットが働かない分、運営コストもかけられないことも多く、従業員に不便をかける部分もあるかもしれない。福利厚生面でも大規模事業者に見劣りすることも多いだろう。

しかし働く喜びや、仕事の誇りはそうしたデメリットを凌駕するものだと思う。小規模事業だからこそ生まれる深い人間関係を良好に保ち、同じ志を持つ人がチームとして機能し、利用者の暮らしを支援してQOLを向上させ、人の役に立つ仕事を続けていれば、そのことを深く近く実感できるのだと思う。

それが自分の生きがいとか、自己実現につながっていくのだとも思う。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。






※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。