通所介護事業者の職能団体等から依頼を受けて、通所介護に関連する講演を行うことが多い。

通所介護経営や制度改正・報酬改定の見込みと影響のほか、通所介護計画について・通所介護の顧客確保や人材マネジメントといった内容等、多岐にわたるテーマを依頼されるが、僕自身、通所介護の相談援助業務や総合施設長としての経営の実務経験があるため、ほぼすべてのテーマについて実務論として語ることができる。

それはともかく、最近の通所介護関連講演の質疑応答で必ず出される質問は、「要介護1と2の利用者の通所介護は、地域支援事業化されるのでしょうか?」というものである。

このことは通所介護経営上、大問題である。利用者が要介護3以上となってもなお、通所介護事業経営を続けていく自信がある経営者は、そんなに多くはないだろう。多くの通所介護事業所は、要介護1と2の利用者割合が7割を超え、それらの人が利用できなくなると、顧客確保ができずに収益を挙げられなくなるからである。

そこでこの問題に注目が集まるというわけである。

軽介護者の保険サービスについては、通所介護のほか、訪問介護と福祉用具貸与等も地域支援事業化して、介護給付から外そうとする議論があることは事実だ。特に財務省は強力にこの主張を展開している。

よって議論の流れによっては、あるいは何かの取引の結果として、軽介護者のそれらのサービスについては、はやければ2024年から介護給付から外れることもないとは言えない。

今のところ厚労省は、そのことに消極的姿勢に思われるが、何しろ要支援者の訪問介護と通所介護は、既に介護給付から外されて地域支援事業化されているのだ。その例を鑑みれば、厚労省が必ずしも軽介護者の通所介護等を介護給付にとどめおこうとする積極的動機を持っているとは言い難い。

しかし今週、このことに関連して注目しておきたい動きがあった。

第97回社会保障審議会介護保険部会(9/12)では、要支援者の訪問型サービス・通所型サービスなども「総合事業」が議論の俎上に上った。(※資料はこちら
秋の風景
そこに提出された資料の、「検討の視点」では、「住民主体の多様なサービスや民間企業の生活支援サービスなども含め、要支援者らの状態・希望に合った相応しいサービスを選択できるようにすることが重要」とされている。

そして今後の論点として、『市町村が地域の実情に応じた総合事業を推進するのを支援するにあたって、どのような方策が考えられるか』とされ、地域支援事業の検証が必要と指摘しているのである。

さすれば当然のことながら、介護給付から外して地域支援事業化された要支援者の訪問介護と通所介護の実情の検討が必要となる。

通所型サービスなど「総合事業」の実施状況を資料から確認すると、予防給付の基準を踏襲した「従前相当サービス」は9割超となっており、地域住民やボランティアなどが主体となる「サービスB」を実施している市町村の割合は、昨年3月末時点で訪問型が16.7%、通所型が15.0%に留まっている。

つまり訪問介護と通所介護の予防給付サービスは、市町村事業化されたといっても、サービス内容自体はほとんど変わらないまま、費用の安い委託費サービスとして継続されているケースが多いということだ。

地域の実情に合わせた介護予防効果をきたして実施されたはずの地域支援事業化が、給付抑制策としてしか機能していないという意味になりかねない実情があるということだ。

このことの検証を先に行わないと、軽介護者の訪問介護と通所介護の地域支援事業化は難しいという意味にとれる。

現に12日の資料では、要介護1、2の高齢者への訪問介護、通所介護を総合事業へ移す改革案は載せられていない。

このことから考えると、今回の制度改正論議では、軽介護者の通所介護を総合事業化する案先送りされ、2024年度からも現行通り要介護1と2の方が、今までどおり介護給付の通所介護サービスを利用できる可能性が高まったと言えるのではないか。

まだ油断できないが、通所介護経営者の方々は、こうした動きを注視しながら、何よりも地域の皆様から選ばれるサービスを構築し、他事業所と差別化できる独自のサービスを打ち立て、今より多くのお客様から選ばれる通所介護事業所としていく努力が求められる。

ぜひ頑張っていただきたい。そして僕の通所介護関連講演も随時オンライン配信してくので、機会があれば視聴していただきたい。
通所介護の今後の事業戦略オンライン講演
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