介護保険制度の最大の功績とは、介護支援専門員という有資格者を生み出したことだ。
介護が必要な人自身や、身内に介護が必要になった人がいる人たちにとって、最大の悩みは、日常のちょっとした出来事や変化を、誰に相談すればよいかわからないということである。
介護支援専門員という専門職が生まれる前は、行政に相談するしか手がなく、しかし相談してもそれはあくまで手続きの相談にとどまり、実際の心身の状態を相談できる担当者はどこにも存在しないというのが地域社会の実情だった。
しかし介護保険制度の創設によって、介護支援専門員という資格者がどの地域にも存在するようになった。そして介護保険サービスを利用している要介護者の大多数には、「自分の担当ケアマネジャー」がいて、いつでも・どんなことでも相談できるようになり、かつ支援の手を差し伸べてくれるようになっている。
これは何にも替え難い大きな安心感につながっていると思う。介護保険制度の創設と、介護支援専門員の誕生によって、日本の福祉の底辺は確実に上がっているのである。
ところでこの制度の改正議論・報酬改定議論が進行しているが、居宅介護支援費の動向に大きな影響を与える動きが今日までにあった。ちょっと整理してみよう。
かねてから議論の俎上に上がっていた、「福祉用具貸与のみの居宅サービス計画の作成費を下げろ」という意見については、事実上見送りが決まった。
これは5日に提示された、「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」(検討会)に中間とりまとめ案の中に盛り込まれないまま、その案が了承されたからである。
そもそも福祉用具貸与のみのサービスプランでも、ケアマネジメントの手間は同じなので、それをもって居宅介護支援費を下げろというのは乱暴であるし、それが実現してしまえば、無理に福祉用具貸与以外のサービスを組み込もうとする動きも懸念されるところだ。今回の見送りは適切な判断だったと言ってよいが、2027年度に向けて再びこの議論が蒸し返されないようにしてほしいと思う。
さらに重要な問題が12日の社会保障審議会介護保険部会で行われた。同部会では、「介護予防サービス計画に関し、地域包括支援センターが担うべき役割」を論点として示されたが、21年報酬改定で地域包括支援センターの業務範囲が拡大し続けていることを受け、予防プランに関連する業務は居宅介護支援事業所が担うべきとする声が上がるようになり、委託連携加算が新設されたものの、委託増加につながらず加算算定率も低くとどまっている。
そのため地域包括支援センターの業務負担を軽減するために、居宅介護支援事業所が介護予防支援を直接担えるようにすることを求める提案が寄せられた。
僕に言わせれば委託連携加算の算定率が低いのは当たり前だ。わずか300単位(3.000円)でしかない費用を、利用者1人につき1回を限度として委託を開始した日の属する月に限ってしか算定できない費用が餌になるわけがないのだ。
そこで以前のように予防プランも居宅介護支援事業所が直接利用者との契約で作成できるようにしようというわけだが、僕はこの案に大いに賛同する。
なぜならもともと介護保険制度によって、要支援もしくは要介護認定を受けて居宅介護支援を受けた利用者は、自分が希望する限り一つの居宅介護支援事業所によるサービスを受け続け、担当ケアマネジャーを窓口に、ほぼすべての社会資源の利用が可能となる、「ワンストップサービス」が実現されたわけである。
ところが予防プランは、「介護予防支援事業所(地域包括支援センター)」が主管することになったことによって、予防プランと介護プランの作成責任者が異なることになって、「ワンストップサービス」が崩壊した。これは利用者にとって、認定結果が違うだけで、コロコロと計画担当者が変わってしまう結果をもたらし、せっかく信頼していた介護支援専門員に担当してもらえなくなるケースが生まれるというデメリットが生じている。
そのため僕はかねてより、元のワンストップサービスに戻すように提言を続けてきたので、今回の案には賛成の立場をとる。(※制度をひねくり回すよりワンストップサービスの復活を望む)
ただし、予防プランの作成が居宅介護支援事業所の収益減に直結して、その経営を危うくしないように、ケアマネジメントの対価としてふさわしい作成費を設定してもらいたいと思う。そうでなければ予防プランは積極的に受けられないと釘をさしておきたい。
また13日に介護保険最新情報vol.1098とvol.1099が発出され、「居宅サービス計画作成依頼(変更)届出書」等について、性別の記載欄が削除されたほか、サービス開始(変更)の年月日と事業所番号の記載欄が新たに加わった。
これは「LGBTQ」と呼ばれる性的マイノリティーに配慮するための変更でもあり、こうした社会の風潮に、ケアマネジャーという資格を持つ人々は敏感になっておいてほしい。
さて最後は、僕のケアマネジャー向け講演に対する受講者の方の意見と感想の紹介である。
9/7に行った、「東京都港区施設ケアマネジャー向け研修」における、「アセスメントを考える〜その目的と実践に生かす方法論」に次のような声を頂いたので下記に示す。
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(東京都港区の介護支援専門員の皆様から寄せられた意見)
・しっかり根拠のあるアセスメントを行うことが利用者の本当のニーズになる。
・アセスメントの重要性を再確認した。
・「あなたがいるから地域で暮らし続けられる」という言葉に報われた思いがした。
・まず何より明るい気持ちになった。4ページの上段でウルっと来ました。そしてエールの動画を拝見し故郷港区で頑張るぞ!とウルウルとなりました。
(※ちなみに4ページの上段とは、下記のスライドのことを指します)

・ケアマネジャーのばらつきをなくす。
・ケアプラン例をたくさん出してくださり参考になった。
・アセスメントを今一度考え改めるという面でとても学びになった。初心を取り戻せる研修会だった。
・ケアプランを見直したい。
・ケアプランは生きる意欲を支える。熱い思いが伝わった。気分があがる研修は良いものです。
・ケアマネジメントの能力の差はアセスメントが影響している。
・根拠を持ってアセスメントを行う。
・ケアマネをしていることに前向きになった。
・仕事に対する情熱を感じた。高い志と専門性を追求する姿勢は大いに刺激を受けた。
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以上である。
ありがとうございます。皆様の温かい声が僕の力にもなります。そして今後も僕は、ケアマネサポーターとして、皆様の応援をし続けるとともに、皆様に情報発信を続け、皆様の真実の声を国に届けるように努めます。
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