介護支援専門員にとって、「アセスメント」という言葉は日常的に使いこなす言葉であろう。そして日常業務として当たり前に行っていることでもある。
では、「アセスメント」って何と改めて聞かれた場合、介護支援専門員の方々は、その質問に躊躇することなくすらすらと答えられるだろうか。
単にアセスメントツールを使って、アセスメントシートを埋めているから、「アセスメントしている」と言う人は、アセスメントの意味を正しく利用者や家族に伝えられないかもしれない・・・。
なぜこんなことを考えたかというと、来月、東京都港区の介護支援専門員を対象にした講演を行うが、そのテーマについて講演事務局から、「アセスメントを考える〜その目的と実践に生かす方法論」と依頼を受けているからだ。
ケアマネジメントの中の、「アセスメント」に重点を置く講演は、僕自身初めての経験であり、アセスメントについてあれこれ考えている最中に、ふとすべての介護支援専門員が、その意味を正しく捉えて仕事をしているのだろうかということ疑問を抱いた。
その疑問は多くの介護支援専門員にとって失礼な疑問だとわかりつつ、質の差が問題になっている介護支援専門員であるからこそ、そうした疑問がわかなくてよいように、きちんとその意味を理解していただきたいと思うのである。
アセスメントとは評価や査定を指す英語の「Assessment」が語源である。そしてその意味は、「人やものごとを客観的に評価・分析すること」とされている。
ただし介護保険制度上、介護支援専門員が行う「アセスメント」とは、もっと具体的な意味として示されている。
居宅介護支援事業所と介護保険施設の基準省令では、居宅サービス計画及び施設サービス計画書の作成規定の中で、『解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)』とされている。そしてそれぞれの解釈通知(老企22号及び老企43号等)では、『課題分析とは〜(中略)解決すべき課題を把握することであり〜。』とされている。
つまり介護保険制度における居宅サービス計画と施設サービス計画の作成上のアセスメントとは、「入所者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握し、かつ分析すること」という意味になる。
9月7日(水)は、そのことを含めてアセスメントを語る講演になるが、その重要性を手っ取り早く伝えるためには、自分が行ったアセスメントと、それを根拠に作成したケアプランを見てもらうことが一番だと思う。
よって僕の作成した居宅サービス計画・施設サービス計画・短期入所生活介護計画・通所介護計画がたくさん例示される講演とする予定だ。少し恥ずかしい気もするが・・・。
また昨年3月には計画書標準様式第1表の「利用者及び家族の生活に対する意向」が「利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果」に変更されている。利用者や家族が口にするニーズとケアマネジャーが考えるニーズをすり合わせる方法がケアマネジメントの一つの目的であるという意味である。
しかし介護支援専門員が考える利用者が表明していない潜在的ニーズが正しいニーズとは限らない。ケアプランは利用者の希望を削りとる目的ではないので、ここは注意が必要であり、利用者の生きる意欲を支えるケアプラン作成という視点も重要であることを示したい。
さらに現在ケアマネジメントの最大の課題は「経験値の共有化」である。介護支援専門員が努力して蓄積してきた知識や思考の方法は、介護支援専門員全体の大切な財産であることは間違いなく、これを言語化・体系化するには、アセスメントの結果を言語化することが必要不可欠ではないかと思っている。そうした切り口でプロットを立てているので、視聴される方はどうぞお楽しみに・・・。
どちらにしてもケアマネジャーはケアマネジメント技術をきちんと持ったソーシャルワーカーであり、単にケアプランを作る人(ケアプランナー)ではない。
そしてケアマネジメントは仲介・調整技術であることを忘れてはならず、他人が翻訳・通訳しなければならないケアプランはゴミでしかない。抽出された課題がいつまでも解決しない方法論は、求められていないやり方なのだ。
そのことを決して忘れないでほしい。
なお昨日CBニュースにアップされた、今月の快筆乱麻・masaが読み解く介護の今は、「居宅介護支援自己負担巡る財務省の横車と全国老施協の迷走」です。こちらも是非参照ください。
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