要介護者の命や尊厳・暮らしを護るべき介護施設が、最低限の安全さえ保障できない状態で経営・運営をがされているとしたら、要介護高齢者やその家族は、いったい何を信用したらよいのだろう。

そんなことを考えさせられた事件が起こり、「死の短期入所生活介護」という記事を昨日アップして解説している。

名古屋の特養「緑生苑」の短期入所生活介護を利用している最中に傷害を受け、その後医療機関で死亡した被害者が、短期入所を利用するに至った理由は不明だが、利用者もその家族も、まさか介護サービス利用が自分の死に直接結びつくなんて思いもしなかったろう。

明らかになった容疑者(福島栄行:ふくしまひでゆき 34歳)の暴行は凄惨を極めている。昨年3/5の深夜から翌未明にかけて、数時間にわたり被害者を殴打。両脚や背中、腰を蹴り続けたというのである。その理由については、まだ明らかにされていない。

ある日突然自分の身に降りかかった暴力・・・それによる死。被害者は両脚のすねを骨折し、こめかみや胸などに多数の内出血があったそうだ。暴力を受けた翌日の夕方に死亡していることから、内臓にも損傷があった可能性がある。さぞ痛かったろう・・・怖かったろうに・・・。その無念は想像に余りある。

そういう意味でこの事件の社会全体に与えるインパクトは大きいし、その責任も重たいと言わざるを得ない。

そうであるがゆえに法人・施設の責任の取り方にも注目する必要がある。犯人が逮捕されたことをきっかけにして、そのことに反省のコメントを法人・施設が出して幕引きということにはならない。当該施設のトップは、世間に対して目に見える形で責任を取る必要があり、早い時期に身を処すべきだろう。
密室化する介護施設 
ところでこういう事件が起こると改めて職員雇用のあり方について考えさせられてしまう。

勿論、どの事業者も利用者を虐待するような職員を雇おうとは思わないだろう。しかしそうした性質を見抜く努力をすることなく、募集に応募してきた人間の適性を見ずに、闇雲に採用している事業者もあるのではないか。

そして採用後に試用期間も設けて適性を確認するという努力もしていない事業者があるのではないか。

同時に採用時教育をはじめとして、定期的に繰り返し行わねばならないスキルアップの教育訓練をしていない事業者もあるのではないか・・・それらはすべて、本件のような事件を起こしてしまう危険性を内包した事業者であると言える。

本件のような事件を起こさないためには、きちんとした人材選び、定期的な資質の見極め、不断の教育訓練が必要不可欠であるし、その教育の中に定期的に「人の尊厳を護るためにサービスマナー教育」というものを入れていかねばならない。

そういう意味では、事件があった名古屋の特養に利用者に対する考え難い暴力をふるう職員がいたという背景を探るために、利用者の尊厳を護るための教育が欠けていなかったかという検証が必要になると思う。

さらに利用者に対する普段からのぞんざいな態度が許されるような職場環境がなかったのかなどの検証も不可欠になるだろう。

こうした事件が起きると、すべての特養が虐待体質を抱えているとみられてしまう。今回の事件は氷山の一角が表面化したに過ぎないというやり取りも、SNS等あちらこちらで行われている。まったく迷惑なことである。

そうでなくともコロナ禍で長期間の面会制限が続いている介護施設に対しては、密室化する中で適切なサービス提供が行われているのかという疑念の声が聴こえている時期だ。

「介護施設の面会制限で、中に入れないだけに、どんな対応をしてもらっているのかわからなくて不安」という声が聴こえる中での、今回の傷害致死事件である。どうせ何でもありの介護施設という悪評が世間に充満しかねない。

多くの介護施設は虐待とは無縁の、人を護るケアサービスに徹しているということを証明しなければ、介護施設は必要悪なんていう烙印を押されかねない。

第3者の目が届きにくい場所でも、きちんと適切なケアサービスを提供できていることを証明しなければならない。サービスマナーの確立はそのための重要アイテムであることをすべての施設関係者が理解する必要がある。

閉ざされた扉の向こう側から、若い職員が年上の利用者の方々に、生意気な口調でタメ口で接している声が聴こえてくるだけで、「やっぱ介護施設って怖いところだ」・「表面化する虐待・不適切サービスは氷山の一角だ」と言われてしまうのである。

そんなことにならないように、第3者が見ていない・聴いていない場所でも、丁寧な態度と丁寧な言葉遣いをできる職員を育ててほしい。
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