昨日、「ひどい」としか言いようのない虐待事件(傷害致死事件)のニュースが全国を駆け巡った。

事件が発生したのは昨年3月。名古屋市緑区の特別養護老人ホーム「緑生苑」の短期入所生活介護(ショートステイ)を利用していた女性が、骨折して医療機関搬送後に死亡したという事案である。

この件について昨日(8/17)愛知県警は、元職員の福島栄行(ひでゆき)容疑者(34)(名古屋市緑区)を、傷害致死の疑いで逮捕した。
介護の闇
報道によると、亡くなったのはショート利用していた角谷三枝子さん(81歳)。両脚を骨折し、頭や首・胸などに内出血があったというのだから、尋常ではない大怪我である。

この件に関して被害者がショート利用していた特養からは、「緑生苑における死亡事故の報道について」という文書がネット配信されている。どうやら被害者が死亡した直後にネット配信した文書のようだ。SNSでも拡散されている文書画像が下記である。
緑生苑における死亡事故の報道について
この文書を最初に読んだときの僕の感想は、「まずい配信文書だな」だった。

ここでは、「職員や第三者が関与した可能性については、警察の方が事故と事件の両面で捜査しているため、全面的に協力をし、結果を待ちたい。」と事件化した後に備えた予防線を張っているものの、通知している趣旨とは、「夜間帯、ご自身で居室からトイレへ何度か往復している中で複数回、転倒をされ、内出血事故、骨折事故につながった可能性が高いと認識しております」である。つまり施設側の責任はないという言い訳文書でしかない。

ということはこの施設では被害者の死亡を、「転倒事故」として処理し終わっているということか?

しかし被害者の怪我の程度を見ると、転倒事故による怪我としてははあまりに不自然である。しかも「複数回の転倒の骨折」と分析しているのはどう考えても納得いかない。なぜならそうである場合、一度骨折した身でさらに独歩を行って転倒を繰り返し、別の部位を骨折したということになるからだ・・・そんなことはあり得ない。

しかも昨日の段階で、「被害者の両脚のすねの骨は、水平方向に折れていた」と報道されている。ということであれば受診後、施設はその状況をすぐ把握できているはずである。さすればそのような骨折は、通常転倒によって生ずることはなく、水平に骨が折れるように外部の圧力がかかったと考えるのが普通だ。

つまり事件当初から、暴力による怪我であると容易に想像できる状態ではないかと思われるのである。

そうであるにもかかわらず、ちょっとあり得ない「複数回、転倒をされ、内出血事故、骨折事故につながった」などという結論にもっていこうとしているのは、事件隠しと言われても仕方がない・・・この件をSNSでつぶやいた際には、「組織ぐるみではないか?」というコメントが付けられたほどである。

本件はその後の取り調べで、容疑者が被害者に対して脚や背中を蹴るなどの暴行を加え、外傷性ショックで死亡させた容疑を認めている。虐待による傷害致死事件であることがほぼ確定したわけである。

福島容疑者は、事件当日夜勤で女性の部屋があるフロアをほぼ一人で担当していたそうであるが、今後は虐待暴行に至った動機などが解明されていくことになるだろう。

同時に、本件を単なる事故として処理しようとし、転倒骨折の可能性が高いなどと言い訳分を公にした施設の責任も問われることになる。

施設長はその地位にとどまっていられないだろう。辞職は当然として、法人として今後の適正運営に向けた体制作りをどうするのかが問われてくる。

それにしても介護施設という、要介護者が護られなければならない場所で、短期入所利用している最中に、複数個所を骨折するほどの暴行を受けてお亡くなりになった方はお気の毒であり、不憫でならない。

人生の最期の終わり方が、このような哀しい終わり方であって良いはずがない。本当に理不尽としか言いようがない。

心よりご冥福をお祈りすることしか僕にはできないが、同時にこうしたことが繰り返されないように、介護サービスの割れ窓理論サービスマナーについて、介護事業にもっともっと浸透するような活動をしなければと強く思っている。

介護事業経営者や管理職の皆様には、こうしたことが起こらないようにサービスマナー教育に努めてもらいたいと思う。講師依頼はいつでも受けるので、「虐待を未然に防ぐサービスマナー研修」をご希望の方は、気軽にメール等で連絡していただきたい。

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