今月13日、札幌に住む81歳の主婦が85歳の夫を刺殺した。犯行動機について主婦は、「夫から一緒に死のうと持ちかけられた。夫は認知機能が低下しており、将来を悲観した」と供述している。容疑者も病気を患っており、夫を殺害後、心中を図って自らの腕などを刺している。

同じく今月9日朝、横浜市の集合住宅で72歳の妻の首を絞めて殺害した75歳の夫が逮捕された。容疑者となった夫は、「認知症の妻の介護に耐えられなくなった」と供述しているという。

先月7月30日には、東京・江戸川区のマンションで75歳の女性が首を絞められ殺害されている。犯行に走った46歳の長男は犯行動機も、「介護に疲れていた」ということのようだ。

同じく先月6日には長崎地裁で、昨年5月に島原市内の自宅で祖母を殴るなどして殺害した37歳の孫が、執行猶予付きの有罪判決を言い渡されたた。殺意事件では異例の執行猶予付き判決は、事件当時、孫の男が精神障害を発症していたことを考慮したものである。

孫の男が精神的に追い詰められていく経緯については、こちらの記事に詳しく書かれているので参照してほしいが、記事に書かれているように孫の男は、介護サービスの利用を勧められながら、それを拒んで精神的に追い込まれていった。

このような、「介護殺人」と呼ばれるケースは決して珍しくない。しかも犯人がすべて悪意を持ったとんでもない人間というわけではなく、多くの場合、自らの義務として介護を担い、介護を必要とする人を支えようと覚悟しているにもかかわらず、長期的な介護が、介護する側の身体や精神が不調に追い込まれて事件に結びついているのである。

その際に、利用できる介護サービスを使っていなかったケースが非常に多い。制度を知らないからではなく、制度を利用することに対する心理的ハードルが高く、利用に踏み切れない人が多いのである。

自分の体が元気なうちは、人様の世話にならずに自分が家族の面倒を見ないと、世間に顔向けできないと考えてしまうのである。

そうしたケースが相次いだ結果が、わずか2月間で全国的に報道された介護事件が4件もあることに繋がっている。僕が気づいていない報道はもっとあるかもしれない。

制度をどんなに整備しようと、制度をどんなに社会に浸透させようと、世の中のすべての人を制度で救うことはできない。そんなことはわかっている。

制度の光が届く場所の影には、常にその光の陰に埋もれてしまう場所や人が存在する・・・。だからといって、「それは仕方がないことだ」とあきらめてしまえば、闇はジワリと広がり続け、光の届かない場所でふるえ続けなければならない人の数を増やしてしまう。

特に介護保険制度は申請主義なので、自ら訴えのない人や訴えることができない人は、その制度から零れ落ちてしまう危険性が高くなる。

そうしないために制度の光をくまなく地域住民に届けるシステムとして、「地域包括ケアシステム」の構築と深化が急がれ、地域包括支援センターがその中心的役割を担うことになっているのだ。
こもれ陽
つまり地域包括支援センターは、制度の光が届かない部分に光を当てる、「こもれ陽」のような機関であらねばならないのだ。

自ら訴えることができない人や場所に存在する介護問題に光を当て発見する役割を持っているのである。

そうした「発見する福祉機関」であるはずの地域包括支援センターが、訴えを待つだけの機関に成り下がっていないのかを検証しなければならない。

福祉制度の対する地域住民の偏見は根強いのである。自分が元気な間は、親の面倒を見なければならず、お上に頼るなんて恥ずかしくて出いないと考えている人も決して少なくない。そういう人たちの、制度を利用する権利を伝える役割を、地域包括支援センターは果たしているのだろうか・・・。

事件が起きる前に、周辺の人たちは何らかの異常を感じ取っている。この記事の冒頭に挙げた4つの介護事件でも、後の取材で周囲の人々が異変を感じ取っていることが明らかになっている。

そういう地域住民の声を拾って、支援に結びつける地域包括支援センターの在り方を考えてほしい。

少なくとも地域包括支援センター職員が、呼ばれた場所だけに足を運んで、そのほかはセンター内のデスクにしがみついて仕事を完結させているようなことになってはならないのである。

事件は地域で起こっているのである・・・。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。






※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。