先週土曜日の午後にオンライン配信した、「看取り介護講演」は岩手県介護福祉士会の宮古広域支部研修として配信したものですが、オンライン視聴された方は介護福祉士さんのみならず、各事業所のトップの方はじめ、相談員さんや看護師さんなども居られたようです。

また事業種別も、特養や老健だけではなく、通所介護・通所リハ・福祉用具貸与などの方もおられるなど、多種多様な皆様に視聴していただきました。ありがとうございます。

その中で通所介護の方から、「本物の看取り介護の実践を聞くことができ興奮しています。」というコメントを頂きました。

日本は既に多死社会になっています。そこでは自宅で看取り介護を行うために、医療機関から退院して家族が看取るケースが増えています。その際に入浴等を目的にした短時間デイ利用は、自宅で看取りたいという家族を支える大切な社会資源です。看取り介護は、通所介護とは関係のないケアとは言えなくなっているのです。

ですから通所サービスの方も是非、看取り介護スキルを身に着けてほしいと思います。

そして看取り介護対象者の方がサービス利用される際には、是非多くの写真を撮影していただきたいと思います。それは介護施設やGH、サ高住などの看取り介護でも同様に言えることです。下記画像をご覧ください。
看取り介護対象者の活動参加
手前のフルリクライニング車いすに座乗している方が看取り介護対象者のHさんです。

某月某日・午前10時30分頃にHさんの長女の夫が撮影した写真画像ですが、Hさんはその日の午後3時30分くらいにご逝去されました。つまりこの画像はHさんが旅立たれる約5時間前の画像なのです。

この日から約2週間前に看取り介護に移行したHさんは、いよいよ死期が近づく兆候が見られたために、亡くなる2日前から長女が特養に泊まり込んでいました。

逝く日はこの日になるか、明日になるかわからない状態で、ケアアーカーが午前中に体清拭を行っている際は、Hさんは目を閉じたままでした。

ところが体清拭が終わろうとしたとき、ホールから音楽が聞こえてきました。その音楽とはHさんがお元気なころ、楽しみにして参加していた、「療育音楽」という音楽療法の音だったのです。

その音が流れてきた瞬間にHさんは目を開いたのです。そこで清拭を終えようとしてたケアワーカーは、「音楽聴こえますか」と尋ねたところ、もう声を出せない状態のHさんでしたが、しっかりとうなづいたそうです。さらに、「療育音楽を行っているんですが、行ってみたいですか?」という声掛けにもうなづかれたそうです。

そのために体清拭を終えたHさんを、フルリクライニング車椅子に移乗介助して、療育音楽を行っている場所に移動しました。写真はHさんが他の利用者に交じって音楽を聴いている画像です。

Hさんは既に歌も歌える状態ではないし、楽器も演奏できません。しかし間違いなく療育音楽には参加しているのです。しっかり目を開けて、ステージ上で伴奏指導しているケアワーカーを見つめていることでそういえます。

その様子を泊まり込んで付き添っていた長女の方が、画像左奥の大きな柱の影から見守っています。この日に旅立たれるかもしれないと思っている母親が、そんな日にもみんなと一緒に活動参加している姿を見て、ハンカチで目頭を押さえている姿がそこにあります。

この日、ちょうど休みが取れた長女の旦那様も面会に来られており、その方がスマホで撮影されたこの写真は、Hさんのお通夜の席で、「最期の日も、こんなふうに施設の皆様と一緒に過ごす時間を持つことができて、本当に大往生で、幸せな人生の最期でした。」と紹介されました。

こうした写真画像も、看取り介護の際に重要な人生最期のエピソードづくりになります。まさにこうした一枚の写真が亡くなられた人の命を、遺される人の心につなぐ、「命のバトンをつなぐ写真」になるのではないでしょうか。

僕はこの画像を、遺族の方に頼んでもらい受け、全国の仲間にそのエピソードとともに画像を紹介してよいという承諾を得ています。是非そうしてくださいと遺族の方から頼まれています。

看取り介護対象者の方の、こうした写真画像をたくさん撮影してください。それは貴重な思い出になるだけではなく、亡くなる方と遺される方の、命のバトンリレーを刻む貴重な場面なのです。

看取り介護対象者の方を、カーテンを引いて日中でも暗くした部屋で、一人寂しく過ごさせて、写真に撮影する場面も、何のエピソードの作れない状態で哀しく旅立たせないでください。

どうぞ命のバトンをつなぐための看取り介護であってください。
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