先週7/19の更新記事、「副業禁止規定を撤廃しない介護事業者は廃業予備軍」で指摘したように、今後の介護事業者の就業規則は、「副業」を認めるように変えていかねばならない。
しかし本業に支障が出るような副業であっては困るわけだから、当然一定の条件を付けて副業を認めていくように規定づくりをしていく必要がある。
副業は勤務時間外とすべきであるし、副業できる時間も週単位などで制限するルールはあってよいだろう。
これらは従業員が副業を行った場合の、労働法規と照らしたうえで、従業員にとって最大のメリットが生ずるように考えたいものだ。そもそも副業を認めるというルールは、従業員にとって働き甲斐のある職場づくりの一環であることを忘れてはならないのである。
労働法規上一番問題となることは、副業を行った際の法定労働時間時間外の割増賃金の支払い義務である。その負担は後から労働契約を締結した会社が原則であるということだ。例えば本業で8時間働いたあと、副業先で3時間働いたとすれば、副業先の3時間分は割増賃金が発生し、副業先が支払うことになる。
ということはそれだけ副業先が支出する時給が高くなるわけで、これを嫌って副業で働きたいという人がいても、雇用先がなかなか見つからないのではないかという問題がある。
これを解決する手段が業務委託契約である。
つまり副業を個人事業として行う場合には労働契約がなく、労働法の適用がないのが原則なので、割増賃金が発生しないのである。例えば形式的には個人事業主として業務委託契約を結んで副業すれば、割増賃金の問題はなくなるのだ。
本業については労働契約、副業についてはフリーランスの個人事業主という立場で、業務委託契約を行って金銭対価を得る方法であれば、確定申告さえしておけば問題なくなるのである。
例えば人材枯渇で絶滅危惧職業となっている訪問介護について、業務委託契約は大いに活用できるのではないだろうか。(参照:絶滅危惧職種の懸念で基盤が揺らぐ地域包括ケアシステム)
介護施設等で働いているヘルパーの資格者が、自分が個人事業主になって訪問介護事業所と業務委託契約を結び、自分が休みの日に短時間副業としてヘルパー業務を行って収入を得ることが、訪問介護事業者にとっては貴重なヘルパー人材の一翼を担うことにつながるのではないだろうか・・・。
そんなふうに介護事業者に勤める人が、副業も介護事業者で行うことになることで、この国の介護人材不足のほんのわずかな改善可能性につながるのではないだろうか。
昨日(7/25)公表された東京商工リサーチの調査結果で、今年上半期の介護事業者の倒産が53件にのぼり、その中でも「訪問介護」の倒産が22件で最多となっているが、これはヘルパー不足で、顧客がいるのにサービス提供ができないことから、事業継続が不可能になった事業所を含んでいると思われる数字だ。
そう考えると、必要な介護サービス量を確保するという面からも副業禁止規定の撤廃を促進すべきであろうと思う。
また別な可能性もある。
僕が経験したケースでは、機能訓練士指導員として理学療法士を募集してもなかなか求人に応募がなく、応募があっても条件が合わずに採用に結びつかなかった特養があった。
そこでセラピストに対して、休日に地域交流スペースを無償で使用して、「介護予防リハビリ教室」を運営して、参加料を収入として受け取る副業を認めることで、機能訓練指導員として雇用することに結びついたところがある。
この場合は本業が雇用契約、副業はフリーランスの個人事業ということになるので、特養側に副業部分の労務管理責任は生じない。
このように副業を認めることによって、必要で有能な人材を確保することにつながるのであれば、事業主と副業を行う従業員は、ウインウインの関係になる。こうした積極的側面がもっと考えられてよいだろう。
少なくとも、外部講師として研修会に派遣した職員の講師料を、派遣された本人に手渡さず事業者に上納させるようなせこい経営スタイルは、一日も早くなくした方が良いのである。
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