特養等の看取り介護加算の算定要件では、PDCAサイクルの構築が求められている。(※下記図参照
看取り介護のPDCAサイクル
この図を見てわかるように、PDCAサイクルのC振り返り)部分では、「職員の精神的負担の把握と支援」求められている。

看取り介護は、終末期診断判定)がされている人に対するケアであるから、多くの場合余命診断も同時に行われている。それは命の期限が切られているという意味にも通ずる。

そうした状況下で看取り介護にかかわる職員は、数カ月あるいは数週間もしくは数日後に亡くなることが予測されている人に相対するわけであるから、どうしてもその人の背後に、「」という事象を思い浮かべてしまう。病状的には決して良くはならない状況の人が、確実に死に向かっていく過程に関わっていくことになる。

そのことにある種の恐怖や虚しさを感じる人がいるかもしれず、そうした意識等が大きなストレスにつながりかねないという意味で、PDCAサイクルの中でその把握と支援が求められているのである。

そのことは重要な対策なので、決しておざなりにしたり、把握過程を形式的作業にしてはならないと思う。そのため僕が総合施設長を務めていた特養では、「看取り介護フローチャートを作ろうと思った理由」で示した過程の中でその把握を行っていた。(※張り付けた文字リンク先のフローチャートを参照してほしい。

具体的には、毎日の申し送り時にチームメンバーの中に、いつもと違った精神状態とみられる状態の人はいないかの確認報告を行わせるとともに、看取り介護終了後カンファレンス(デスカンファレンス)に際して資料となる、『各セクションごとの課題・評価』をPCの共有ファイルに打ち込む際は、チームメンバーのストレスの有無を記載するとともに、ストレスがあった場合には、どのメンバーにどんなストレスが生じたかを具体的に記入することとしていた。

その記載事項に基づいて、ストレス対応についてカンファレンスで話し合いを行うとともに、必要な場合、僕がカウンセリングを行うことにしていた。(※ちなみに僕は家庭生活総合カウンセラーという資格も持ってる。

しかし実際には、看取り介護を通じてカウンセリングを必要とするようなストレスを抱える職員はほとんどいなかった。

看取り介護と言っても、それは決して特別なケアではない。日常ケアの延長線上にたまたま回復不能な病状に陥り、命が尽きる時期がある程度わかっているというだけでしかないからだ。そこで行うべきケア自体は、終末期以外の方法論と何ら変わりないのだ。

ただ終末期の状態を引き起こしている病気や症状についての基礎知識をしっかり持って、その状態に応じた安楽ケアが求められるに過ぎない。この知識は普段の職場内研修で十分すぎるほど叩き込んでいる。だからそのことの不安はない。

そして看取り介護を通じて、限られた期間を意識する中で、家族や親族とのふれあいの時間を創り、お別れまでの間の様々なエピソードづくりのお手伝いをすることが、看取り介護では重要だという意識も、全職員に共通して持てるように教育していた。

その結果、逝く人と遺される人の間で交わされる、看取り介護期間中の様々なコミュニケーションを貴重なものとする意識が職員全体に行き渡っていた。その思いは実習生にも伝わっていた。そのため看取り介護は、ストレスよりやりがいが生まれる介護実践の場となっていたのである。

誰かの人生の最終ステージを生きる姿を支え、そこで生まれる人生最終場面でのエピソードに感動を覚えることで、介護の仕事をしてよかったと思えるのである。

そういう意味では、介護の仕事を続けるための新たなモチベーションを生み出すことができるのが、看取り介護の実践であると言い換えても良いだろう。

看取り介護とは、人が最期の瞬間まで尊厳を持つと同時に、生きる喜びを感じることができることを信じて、そうした生き方を支える介護である。それは特別な介護ではなく、日常介護の延長線上にある、「暮らしを支える介護」そのものでしかない。それができない介護施設などはあってはならないし、

暮らしの場とされる特養は、看取り介護ができないならば、特養の看板を下ろさねばならないのだ。なぜならそんな特養は、終生施設としての責任を放棄し、国民の期待に応えない偽物でしかないからだ。

だから看取り介護ができないとか、看取り介護を行わないなどと馬鹿げたことをいうのはやめてほしい。人は必ず死ぬのだから、暮らしを支える関係者の責任は、生きることを支える過程にとどまらず、息を止める最後の瞬間まで及ばねばならないのだということを理解してほしい。

看取り介護は、「する・しない」、「できる・できない」と判断するのではなく、日常介護の延長線上に、ごく普通に看取り介護の実践があって当然であると考えるべきであり、看取り介護スキルは、介護関係者が当然備えておくべきスキルであることをしっかりと自覚しなければならない。
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