黄金の3年は介護業界にとっての暗黒の3年にならないか?より続く)
今回の参議院選挙で落選した園田修光氏は、2021年度の改定で介護報酬のプラス改定を強く訴えるなど、介護業界にとっては頼りになる政治家であった。

3年前の参議院議員選では、介護業界の利益を代表してくれる議員を国会に送り出せなかったのだから、園田氏は貴重な存在で、介護業界の防波堤の役割を担ってくれていた。

その人が国政の場から去ることになった今、介護業界は厳しい逆風をはねつける術(すべ)を失ったと言える。

その状態でいよいよ次期制度改正と報酬改定議論が本格化するのである。それは介護業界にとっていばらの道を進むに等しい厳しい戦いとなる。
いばらの道
それを心配する声もあちらこちらで聴こえ始めた。例えば昨日僕のFBには、「園田修光さんの落選は激震が走りました。処遇改善加算はこれからどうなるんでしょう?」というコメントを書いてくださった関係者がおられる。

しかし処遇改善加算自体は、今年10月から新設される介護職員等ベースアップ等支援加算に加えて、更なる上乗せがされるものと想像している。そのため僕は下記のようにコメントを返した。

介護職員の更なる処遇改善は岸田内閣の方針で、骨太改革にも入っていますので、そこは報酬改定でさらに上積みが期待できる部分だと思いますが、その上積み分、基本サービス費などは厳しく削減という形になりかねないと思います。

それを証明するかのように昨日、岸田首相が記者会見を開き「今後の重点施策」を説明する中で、「民間が賃上げをしやすい雰囲気を作っていく」とし、先月に閣議決定した新しい資本主義の「実行計画」の中で、介護職員、障害福祉職員の追加の処遇改善を検討していくと明記されていることに触れて、その実現を図る決意を述べている。

要するに介護職員の処遇改善は、福祉政策ではなく経済政策であるということだ。

岸田内閣の掲げる最も重要なスローガンである、「成長と分配の好循環による新しい資本主義」の実現のためには、210万人以上という団塊の職種である介護職員の給与改善が必須で、そのことが経済政策としての成果に結びつくと考えられているのである。

しかしその見返りとして、基本サービス費は非常に厳しい逆境にさらされかねない。

特に2024年の介護報酬改定は、診療報酬改定とのダブル改定になるのだ。それは限られた財源を、医療と介護で仲良く分け合うという構図ではなく、お互いがお互いの利益を図って足の引っ張り合いをしなければならないということだ。 

その時思い浮かぶことは、園田氏が落選した自民党の比例代表では、日本医師連盟が推した自見英子氏と、日本看護連盟が推した友納理緒氏が当選しているという事実だ。

医師会と看護連盟が推す議員は、3年前の参議院議員選でも当選しており、衆議院議員の中にもいるのだ。さすれば医療と介護の政治的な力関係は、語るまでもない状態になっている。

そこの部分だけをみれば、介護報酬が診療報酬より優遇される要素も、介護報酬が上がる要素も皆無である。

そう考えると24年の介護報酬改定は、15年度のマイナス2.27%並みかそれ以上の厳しい改定予測が成り立つ。大きなダウンを処遇改善加算の上乗せ分でカバーして、大削減の実態が隠されて終わるのではないだろうか。

そうなると多くの介護事業者で事業収入自体は減ることになるだろう。すると今までは、介護職員の給与改善原資が加算で手当てできた分、事業収益から他の職種の給与改善原資として回せる分は増えているのだから、そのことを踏まえて他職種の給与改善を図るということも可能だったわけであるが、そうもいっていられなくなる。

事業経営を続けるためには、一定の収益を出し続ける必要があるわけで、背に腹は代えられないとのことで、加算で手当てできない介護職員以外の職種の給与は上げることができないという事態になりかねないのである。

というより介護職員ほどには上げられない介護事業者が大部分を占めることになるだろう。

LIFEの情報入力で業務負担が増えている事務職員は、24年度の改定ではさらにLIFE要件が増えると予想されていることで、業務負担が益々増えることになるが、その仕事に見合った給与改善を望んでも、それは実現しないことになる。

選挙の敗北という結果の割を食うのは、このように非介護職員ということになってしまうのである。

政治力という問題を軽視して、職員に推薦候補の投票を強力に呼びかけることがなかったつけが、まさに今、介護事業者を襲おうとしているのである・・・。
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