北海道新聞の7/7朝刊では、道職員が副業として農家の労働力不足を補っている様子を伝えている。
高齢化などで人手不足に直面する地域の1次産業を支援するために日高振興局が創設した道職員の副業制度で、就業前の午前5時半から2時間、日高管内浦河町の農家で町特産の夏イチゴの収穫作業に職員2名が従事している記事が大きく紙面を割いている。
副業は道職員としての勤務時間外に行い週8時間以下とし、報酬は「社会通念上相当な範囲」とすることが条件とされているそうだ。
公務員が副業するなんて、つい数年前までとんでもない行為であると思われていたはずだ。しかし時代は変わっているのだ。それも恐ろしいスピードで・・・。
その変化に合わせて国も方針を変えてきている。例えば現在厚労省が推奨している「モデル就業規則」では、過去において原則副業禁止としていた規定を改めている。
具体的に言えば、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」を削除した上で、「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」との規定を新設したうえで、長時間労働を招かないかなどを確認する観点から、会社に届け出をすることとしているのである。
日高振興局の副業制度も、このモデル規定に準拠して創設したものだろう。本業が公務員というお堅い仕事であるということは、社会人としての自覚も高く能力もあると捉えられるので、雇用する農家の方々も安心して仕事を任せられるだろう。それは非常に歓迎されるべきことで、是非こうした働き方が根付いてほしいと期待する。
そうした社会情勢であるにもかかわらず、副業に関して言えば介護事業者は非常に消極的姿勢が目立つ。というより時代に後れを取った就業規則のところが多すぎる。
いまだに副業禁止の規定を存続させたままで、従業員が外部の研修講師の依頼を受けても、講師料を受けとることを認めずに、支払われた講師料を事業者の会計に入れるように求めるところもある。それってや〇ざの上納金と変わらないと思うのだが・・・。
さらに副業禁止を理由に、外部の研修講師を務めること自体を禁止している事業者まであるからお笑い草である。
今後の介護事業経営を考えたとき、人材不足が何より経営リスクになる。そこでは外部から人材を持ってくることがより難しくなるのだから、介護事業者内での人材育成が今以上に重要になる。
そうであれば介護事業者内で、人材を育てるリーダーを育成せることがまずもって必要になる。
ここで間違えてはならないことは、経験を積みさえすれば誰でも教育の役割を担当できると思いこんでしまうことだ。介護業務が滞りなくできる人であっても、その知識や技術を他者に伝えるスキルは別物なのである。
だから経営者や管理職は、実務の場で介護職員を教育し育てることができるリーダーを発掘し、リーダーとしての経験を積ませ、育成スキルをさらに伸ばすことに努めることが重要だ。
つまり管理職がこれから先、一番重要な役割と考えなければならないことは、介護職員の中からリーダーシップのある人を見出し、「他者に伝え指導、育成できる」という能力を引き出し育てることなのである。
事業者内で他の職員を教え育てることができる能力を持った職員は、職場内で新たなノウハウを生み出せる可能性をもつことになる。それは職場内の課題や問題を解決できるスキルにもつながる。人を教え育てるスキルを持つ職員を育てることは、そのように福祉的に事業者に利益をもたらす職員となり得るのである。
そうした職員は、社外に指導・アドバイスができるようになる。そのことを禁じたり、抑えつけるのではなく、事業者や管理職の方から積極的に社外に指導・アドバイスを推奨すべきである。

人に教えることは自らのスキルを伸ばさねばできないことなので、対外的指導に当たろうとする職員は、さらにスキルアップしようと勉強することになる。そうしたスキルアップの過程や結果は、必ず事業者内の職員育成にもつながるし、サービスの品質向上につながってくるのである。
しかも職場がそうした対外活動を推奨してくれることになると、そうした活動を行いたいという動機づけをもって、職場内で積極的に職員を育てるリーダー役を担いたいという人が数多く生まれてくる。それこそが職場内の職員育成システムを活性化する源となるのである。
だからこそ副業禁止規定を見直して、社外で指導・アドバイスできる職員を外部研修等の講師として派遣し、講師料は副業の対価として手にしてよいとする必要がある。副業で得た収入は、2月に本人が確定申告すればよいだけの話なのである。
職員が外部研修講師を務めることにデメリットはなく、前述したメリットしかないのだから、それを禁ずるのはどうかしているというより、経営者としてのセンスが疑われることになる。
つまり副業禁止の規定にこだわって、それを変えない介護事業者は、人材が集まらず事業継続できない道にまっしぐらに向かっていると言えるのである。
それは廃業予備軍の最前線に立っていると言ってもよい状態であろう。
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