介護施設に勤める人の大多数が、虐待や事件とは無縁の対人援助活動を行っていると思う。
そもそも介護事業者に所属し対人援助という職業に就いている人とは、他者の暮らしを護りために役に立ちたいという動機付けで就業する人たちである。
だからこそ利用者に対する理不尽な暴力や暴言・人の尊厳を傷つける不適切対応を何よりも憎む人が大多数を占めるはずだ。
しかし毎月のように介護施設を舞台にした不適切サービスや虐待・人権侵害に通ずる事件の報道が繰り返されることによって、社会の介護施設に寄せる信頼感はどんどん失われている。
そうした信頼感を欠く行為が繰り返し報道されることによって、介護施設で働く人すべてが何らかの表に出せない不適切行為を隠れて行っているように誤解されてしまう。
挙句の果てに報道される様々な虐待行為が、「氷山の一角でしかない」と言われ、あたかもすべての介護事業者が、利用者虐待という闇を抱えているかのように思われてしまうのだ。
虐待や不適切対応とは無縁で、利用者の傍らに寄り添い、介護を必要とする人の生きる杖になっている人も、そうした虐待者と一色単に思われてしまうのである。
それは違うと声を大にしていたいのであるが、人の所業とは思えない、信じがたい行為が時折表面化して、私たちの世間に向けた訴えの説得力が失われてしまったりする。
例えば今年2月には、横浜市内の介護施設で、認知症の80代女性に性的暴行を繰り返したとして、介護福祉士・北山肇郎(69)が準強制性交の疑いで逮捕されている。
被害者は、「男が入ってくる」と訴えていたらしいが、認知症による妄想的訴えと無視されていたらしい。これも大きな問題である。認知症の人であっても、何もかもわからなくなるわけではないし、正しい訴えもできることがあるので、妄想的な訴えとして聞き流さず、まずは事実を確かめるという対応が必要だと思う。
逮捕容疑となった準強制性交とは、「心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させもしくは抗拒不能にさせて」わいせつな行為あるいは性交などを行った場合に成立する犯罪である。つまり準の意味は準ずるという意味ではなく、たちの悪さは普通の強制性交罪と変わりないといえることに注意が必要だ。
容疑者は自分が夜勤のシフトに入っている日に、繰り返し被害者の認知症女性に性的暴行を行っていたらしい。夜勤中に業務そっちのけで己の欲望を満たす行為にふけっていたにもかかわらず、「抵抗や拒否はなかった」と供述していることにもあきれるしかないが、こういうとんでもない人間が、介護職として普通に勤務していたことが報道されることによって、介護の職業と介護職という職種への信頼感は失われてしまうわけである。
こういう輩がいては、我々がいかに介護の職業を選んでいる人々の動機づけが、「人の役に立ちたい」というものである人が多いと訴えても、それと同じくらい人を蔑み傷つけようとする人が混じっているんでしょうと思われてしまう。
一般市民の中には、「介護施設は怖いところだ」と思ってしまう人も居るかもしれない。そうなってしまっては、介護施設はいつしか大衆から、「必要悪」というレッテルされ張られてしまいかねない。
そうなってしまっては介護施設で働きたいと思う人はますます減り、介護人材不足に拍車がかかってしまう。
だからこそ採用は慎重にしたいものだ。人手が足りないことを理由に、募集に応募してきた人を闇雲に採用してしまうと、必ずこういう輩が混じってしまい、事業経営を危うくすることを肝に銘ずる必要がある。
そして人材育成・人材教育は終わりがないもので、実効性のあるシステムを事業者内で整備しておくという最も基本的な基盤を作り上げておく必要がある。
同時に応募者の人間性は採用時にすべて見抜くことができないことを前提にしなければならないし、教育した人間がすべて期待に応えて成長するという幻想を抱かないことも大事になる。
事業経営は性善説だけで成り立たないので、常に従業員の適正と成長度を評価する機能を、事業者内に整備しておかねばならない。
その際に取り入れたいのは、ケアワークの外部からのチェックと補完機能である。
施設サービスは、ルーチィンワークが確立されて日常性が増すことによって一定の品質が保たれるが、日常性は惰性にもつながるのである。そうした惰性によるサービスの品質劣化を防ぐためには、実践水準を内部的に更新するとともに、外部情報が取り入れられて更新されなければならないということを理解して、外部の専門家による定期的なチェック機能を取り入れておくことが、介護施設の危機管理にもなるのである。
僕の顧問活動やアドバイザー活動もその一環として行っていることである。その役割もきちんとこなしていこうと常日頃心掛けているところだ。
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残念ながら、看護師は看護師とで固まり、介護士は無責任に嫌なことがあればすぐ辞めると騒ぐ、事務所はそんな現場を咎めることも整えることもせずに県や経営者の機嫌を伺うだけ、経営者は施設の老朽化に関心も持たずにエアコンなどの必要設備もギリギリまで修理せず。人がいなくても監査の時だけパートなどで水増しすれば県は潰すこともできない。
そんな見た目は良くても中身がボロボロな施設が増えています。私たち介護士は辞めれば問題ないのですけど、そんな施設を老後の頼みとして入所する御利用者があまりにも…で何も言えません。
正直、ニーズが増える時代だからこそ、施設の運営継続基準はもっと厳しくしてほしい。2025年問題があるからこそ、増やすのではなく減らす勇気を市町村や県には持って欲しいです。
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