(外国から介護人材を増やす必要がある背景から続く)
介護事業者が外国人の方を雇い入れ、安定的に事業者の戦力としていくためには、単に雇用して給与を支払うというだけではなく、外国人の方々が日本という慣れない国で、安心して働くことができるように対策する必要がある。
例えば、住居の確保をはじめとした、「暮らしの支援」が不可欠になる。就業からしばらくの期間は、外国人労働者のプライベートの時間にも対応して、その地域の暮らしになれる働きかけも必要であると考えた方が良い。
日常会話以上の語学力を身に着け、記録をつけることができるようにするための、「語学指導」もシステム化しておきたい。
日本語に精通しないうちは会話ができても、「忖度(そんたく)」したり、「空気を読む」ことはできないので、その点を十分理解して、過度な要求をしないことも大事だ。
信仰等にも配慮して外国人の方々の文化や生活習慣を尊重する必要もある。
例えば、「お祈り」を毎日定時に行わなければならないという人がいる。この場合は、就業中でも仕事を抜けてお祈りを行う時間を取ることができたり、お祈りする場所を確保したりすることも必要になる。
この部分は、日本の職場だからという理由で、その枠組みとルールに組み込んで禁じたりすることはできないだろう。
だからと言って、外国人の文化や価値観をすべて治外法権化させるべきではない。職場のルールに従ってもらわねばならない部分も当然出てくるだろう。
例えば外国人の中には、「時間を護る」という慣習がない人もいて、「仕事に遅刻すること」が良くないと思えない人が存在する。時間厳守が求められない環境で育ってきた人は、遅刻しても悪びれないのだ。
それは彼らの文化であると許して良い問題ではない。きちんと時間を護って、決められた時間に合わせて仕事をスタートさせることを、ルールとして浸透させる必要がある。
挨拶に関する感覚も様々で、親しい相手に頻繁に挨拶するのは他人行儀で水くさいと考える文化を持っている方もいるし、見知らぬ人にあいさつすることは失礼だとして、外来者等にあいさつしない人もいる。
しかし日本の職場での礼儀や挨拶は、ビジネスマナーとして仕事の一部なので、無作法は許されないことを教える必要がある。そして挨拶のコツは相手がするのを待つのではなく、自分からすることなどを教えて、職員間だけではなく、利用者や外来者に対して、きちんと挨拶できる習慣を身につけさせなければならない。
こうした指導は、相手の文化を否定することとは言えないだろう。必要な教育である。
それらは入職時にきちんと説明会を開いたうえで、労働契約上の「労働義務」・「職務専念義務」・「安全配慮義務」等とともに、きちんと説明して職場のルールとして護ってもらわねばならない。
そうした場では、本当に意味が伝わっているのかを繰り返し確認しながら、わからない点はとことんまで説明しておく必要がある。この際に、「そのうち覚えるだろう」という甘い考え方は禁物である。
だからこの部分の説明には、それなりの時間がかかると考えた方が良い。
そしてこうしたルール等を外国人の方々に伝えるためには、紙を渡して、「就業前にすべて読んでおいて」では済まないことを理解すべきだ。
しっかり説明しないと外国人の方は、職場の基本ルールさえ理解しないまま就業して、そのことに関連した問題が生ずるケースも多いことを考えると、事業者側の説明責任は、より重要になってくる。
この時、説明を受ける外国人の方々は、日常会話に不自由はなくとも、法令や職場のルールに関する用語の理解に欠ける人は少なくない。それらの方に対しては、日本語に精通した先輩外国人労働者の方に通訳を依頼するなどして伝える必要があるだろう。
同時に日本語に十分精通していない外国人は、業務上の会話に不自由はなくとも、心の機微を伝えるほどには日本語に習熟していないことを理解せねばならない。わからないことは伝えられても、どこがどういうふうにわからないのかということや、わかっているつもりでも不安があるということは伝えられないことが多い。
わかる・わからないの中間の気持ちを伝えられないのである。そこは十分配慮しないと、外国人の方の不安に気が付かず、それを放置してバーンアウトに結びついたり、わかってるつもりで間違った方法で業務をこなして、事故につながる危険性がある。
そうしないためには、指導する職員が十分そのことを理解し、外国人の方々の表情も注意深く観察しながら、積極的に声を掛けていくことが必要になる。
そのうえで実際に仕事をしながら、様々なことを覚えていくわけであるが、その際に指導者が外国人の方を、「叱る」必要があるかもしれない。
この際に注意したいことは、「人前では叱らない」ということだ。利用者様の目の前で注意をすると、侮辱を受けたと考える外国人の方は、日本人よりかなり多いというのがその印象だ。(※日本人も人前で叱ることは良くないことだと思う。)
当然、介護の基本となる知識や技術は、外国の方にもわかりやすく伝えなければならない。外国介護人材の方々は、将来的には母国で日本で学んだ介護技術を生かして働きたいと思っているので、そのニーズに応えることができない職場は、魅力的な職場とは言えないのである。
以上、外国人介護人材を集め・育て・定着させるために必要なことを、思いつくままに書いてみた。何か意見があったら、是非コメントしていただきたい。
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以前に研修会でお話を聞き、介護の誇りを読んでから自分の事業所経営に参考とさせていました。
弊社も小規模事業所ではありますが、外国人材採用に向け進んでいます。外国人材を人材不足の穴埋めにするのではなく、これからの日本の介護を支える仲間として受け入れていくことを目指しています。
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