一昨日から昨晩未明まで北海道は大雨に見舞われた。幸い登別は被害はなかったが、道内では死者も出て浸水被害も報じられている。

今朝は雨が上がったが、どんよりと曇り空でまだ肌寒い。そんな中、僕は朝7時台に自宅を経って、今新千歳空港から大阪へ向かう飛行機に乗っている。

大阪の天気予報を見ると、僕が滞在する今日と明日の気温は30度を超え、最高気温は36度なんて言う予報となっている。北海道より15度以上高い気温だ・・・できるだけエアコンの効いた室内にいるようにしよう。

今回の大阪行きは、2つの講演を行うための旅である。そのうち今日は豊中の社会福祉法人さんの研修講師を務めるために、関空に到着したその足でそのまま直行予定である。

せっかく豊中の法人に行くのだから、伊丹空港に降りればすぐ近くだったのに、関空を利用せざるを得なかったのには理由がある。航空機の減便がまだ続いているため、伊丹便でちょうど良い時間の便がなかったのである。仕方ない・・・。

今日お邪魔する法人さんでは、過去にも4度ほど職員研修講師を務めており、小規模特養の職員さんを中心に、そのスキルアップのお手伝いをさせていただいている。今回の研修テーマは、「介護職の使命と使命を果たす人材育成〜介護施設の存在意義」と設定した。

講演テーマは、「こんな内容の話をしてほしい」という要望に応えて僕が設定したものである。

今回は事前に、「そもそも利用者にとって介護施設とはどのような場所であるべきなのか?どんな役割と意味を持つのかを話してほしい」・「介護職員が誇りを持って働ける環境を創る教育。またそのために介護保険施設とはどういうものかを学びたい」という要望があったので、高齢期を生きる人の、その人生の一時期を支える介護施設の役割について解説しながら、そこで求められる人材とはどういうスキルを持った人材で、そうした人材をどう育てたらよいのかという話をしようと思う。

介護保険制度は在宅優先という理念があるため、施設サービスは、「必要悪」のように見られがちである。居宅ケアマネさんの中には、自分の担当者が施設入所することを、ケアマネジメントの敗北のように感じて毛嫌いしている人も存在する。しかしその考え方は間違っており、施設サービスと居宅サービスが地域福祉の両輪であることを法的根拠とともにお話ししたい。

そもそも地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域の中で、心身の状態に応じた住み替えを奨励するシステムだ。特養はその住み替え先の一つとして、医療保険では在宅復帰カウントに入れることができる施設になっているのだ。

その役割を理解して、使命と責任を担う人材育成について語る予定である。

それにしても最近とみに、「人材育成」・「介護人材マネジメント」をテーマにした講演依頼が多くなっている。それだけ人材育成が重要視されているのと同時に、その困難性も感じているという意味なんだろう。

介護の生産性向上が叫ばれる今日ではあるが、介護サービスそのものに生産性の向上を求めすぎれば、より少ない介護職員の関りで業務を機械的にこなして終わってしまうという結果になりかねない。しかし人材育成については、生産性を向上させないと、利用者に必要で、かつ適切な支援ができなくなる恐れがある。

機械が人に替わることができない業務が大半を占める介護事業において、人材確保は事業経営の命綱である。  

同時に人材は確保するだけでは意味がなく、きちんと事業者の戦力としていかねばならない。そのため効率よく職員のスキルアップを図る方法を常に模索しなければならない。

なぜなら限られた財源の中で、給付費が大きく増額されることは期待できず、顧客単価は据え置かれるだけではなく下げられる恐れもあるからだ。そのため事業継続をするためにはより多くの顧客を確保する必要がある。

しかし顧客確保のためには、他事業者とは差別化できるサービスを提供しなければならない。そのためには質の高いサービスを提供できる職員を育成し、そうした人材が定着することが重要になる。

そういう意味で人材育成は、人材確保と顧客確保という重要な2大目標の達成のためにも必要不可欠な過程であると言える。ここが介護事業の屋台骨であり、大黒柱になるともいえるわけだ。

ところがその過程を重視していると言いながら、教育方法が形骸化し、まったく意味のない無駄なものが新人職員教育として行われていたりする。

アリバイ作りにしか過ぎない教育方法は、人材育成カリキュラムにはなり得ないし、時間の無駄となるだけだ。それは経営者や管理職の自己満足にしかならず、職員の育成や定着には結びつかない。時間を浪費するだけ事業損失になっているといっても良いものだ。
無駄な研修
僕が一番無意味だと感じるのは、関連施設の見学である。

経営規模が比較的大きな法人等になると、介護保険事業だけで数種類の事業を行っており、施設や事業所を複数持つことになる。

医療法人や社会福祉法人だけではなく、民間営利企業が経営母体のところでも、多事業を展開していることは少なくない。

そうした法人等に就職した新人職員は、仕事を覚える前にそれらの施設・事業所を見学に連れていかれる。その目的が良くわからない・・・。自分が就職した場所で、自分が何をすべきかよくわからない時期に、関連施設等を見学して何か得るものがあるというのだろうか。

自分の職場の環境さえ十分に把握できていない時期に、ほかの職場を見学して、その役割の説明を受けたって何の意味もない。

僕は55歳になったときに、それまで勤めていた社会福祉法人の総合施設長を辞し、独立起業するために1年間だけ医療法人が経営する老健に勤務したことがある。

その際に、老健勤務して1週間ほど経ってから、新人職員研修として母体医療機関をはじめとして、法人内の他サービス事業所を連れまわされて、職場説明を受けた経験がある。

それは全く身にならないどころか、記憶にもならない意味のない体験でしかなかった。

こうした法人内見学・他事業所の紹介は、新人教育をしているつもりになるだけの、「なんちゃって教育」でしかない。人材育成や定着につながる効果は全くないと言ってよい。

そうした時間の無駄でしかない見学研修は、一日も早くやめるという決断をした方が良い。

他事業所を見学して、それが知識になるには、ある程度自分が与えられた役割を果たすことができるようになってからのことなので、新人教育の時期に行う必要はないのである。実務がこなせるようになり、法人内の他事業所の役割等の質問ができるようになってから、改めて見学研修を行った方が良いのである。

マンネリ化して役に立たないプログラムを見直して、本当の人材育成につながる教育プログラムを確立していかないと、人材を確保できずに事業継続ができなくなるという危機感を持ってほしいものである。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。






※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。