今週初めに書いた、「骨太改革2022に盛られた毒と次期介護報酬の動向」でお知らせした、骨太の方針2022を巡る紛糾は、今週に入って何とか収まった。

月曜日の情報提供記事を書いただけで、その後の顛末を書かないのは、書きっぱなしの誹りを免れないと思うので、今日現在までの流れや、今後の情勢予測などについて簡単にお知らせしておこうと思う。

月曜日に、「骨太改革2022に盛られた毒と次期介護報酬の動向」という記事を書いたわけであるが、その直後に自民党の政務調査会が開催され、骨太の方針2022は、先週に示された文章の一部が修正されたうえで全体会の同意を得た。

その後、内閣に送られ7日夕刻に正式に閣議決定された。

決定された骨太の方針2022では、紛糾のもととなった、「〜骨太の方針2021に基づき〜」という文言はそのまま残されており、予算キャップははめられたままである。

しかし、「ただし重要な政策の選択肢を狭めるようなことがあってはならない」という文章が新たに加えられているのだ。

これによって予算キャップははめられているものの、そのキャップは臨機応変に外すことができるとされたわけで、財政積極派の意見が取り入れられたことになる。これによって紛糾は収まったのである。

ただし一言加えておくと、自民党の政務調査会で同意を得た骨太の方針2022には、脚注が付けられており、その内容は財政出動には増税が不可欠であると読める内容であった。

この脚注を巡って、財政積極派からけしからんとする意見が出て、財務省がこれに反発し、再度紛糾しかけたそうである。

最終的にその脚注の扱いは政調会長預かりとなり、その場を収めたのである。その後どうなったかというと、高市早苗政調会長の裁量で、最終的にこの脚注は骨太の方針2022から削除されている。

財政積極派からは英断という声が聴こえてくる決断である。

よって閣議決定された骨太の方針2022には、財務省の増税誘導文章は載せられていないのである。この攻防においては、財務省は惨敗したということになるだろう。・・・ただ財務省が敗者のまま、黙っておとなしく身を引くとは思えない。

怒り心頭の財務省の復讐戦がこれから始まって、その反撃の矛先は真っ先に高市早苗政調会長に向けられ、更迭せよという動きも出てくることが予測される。

高市会長は、言うまでもなく安部前首相の懐刀で、現在も前首相の影響力が強い理由の一つは、彼女の地位と存在にある。

参院選後に党三役の交代論が必ず出てくると思うが、その時に高市氏の処遇がどうなるかで、今後の内閣の姿勢が垣間見えるので注目の的だ。

そうした動きはともかくとして、財務省の今後のしっぺ返しが、介護・診療報酬改定に向かないとも限らないので、警戒が必要である。
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加えられた文言を改めて見てみよう。「ただし重要な政策の選択肢を狭めるようなことがあってはならない」となっている。

おそらく、「重要な政策」とは防衛費が一番先に位置づけられると思われるが、岸田内閣が唱える新資本主義としての経済対策も、ここに含まれてくる可能性がある。

間違いなく介護は、ここに含まれてこない。というよりそもそも例外的な財政出動がされるのは、非社会保障費であって、社会保障費は、「高齢化の事前増分の増加にとどめる」というキャップがはまっていて、それを取り外す例外も認められていないのである。

そのような情勢の中で、骨太の方針2022には、「必要な人材が確保されることを目指し、現場で働く方々の更なる処遇改善に取り組んでいく」と明記されていることから、次期介護報酬改定での処遇改善加算の上積みは確実だと思われる。

一方政府の説明では、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの構造を見直し、能力に応じて皆が支え合うことを基本とする」としているので、利用者自己負担の2割・3割対象の拡大は確実視され、さらに給付抑制の観点から基本報酬はマイナス改定もあり得る状況である。月曜の記事に書いたように、後期高齢者医療制度の負担段階に合わせて変更する案が有力だ。

そうなると処遇改善加算を除いた改定率は、2015年度のマイナス2.27%並みかそれ以上の厳しい改定予測が成り立つ。処遇改善加算のアップ分を含めて、マイナス改定を最小限に抑えたというアリバイづくりが行われる懸念がぬぐえない。

そうならないように、介護業界は次の参院選で推薦候補を確実に当選させるとともに、政治的な勢力を拡大する取り込みにも力を入れていかねばならない。

経営面では、マイナス改定にも備えた準備が必要だ。

居宅サービスは、顧客確保を確実に行って事業規模の拡大を視野に入れねばならない。地域密着型通所介護の単独運営だけで、何年も続けて事業継続できるわけがないと考えるべきだ。

施設サービスはベッド稼働率をできるだけ100%に近づけていく努力が必要だ。特にショートステイは、午前退所・午後入所などという形で1ベッドで1日につき二人分の給付費を算定できるのだから、そうしたサイクルでサービス提供できるようにしていかねばならない。

厳しい情勢の中であるからこそ、知恵を酷使した事業戦略が必要になることを忘れてはならない。
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