にごり酒・・・いわゆる、「どぶろく」は、僕にとってあまりおいしく感じない酒だった。清酒より進化していない一段レベルの下がる酒であるという印象を持っていた。

ところが、飛騨白川村・平瀬八幡神社の「どぶろく祭り」で、「ひだ白川郷御新酒」を頂いて、その概念と僕の嗜好が変わってしまった。(参照:世界遺産ひだ白川郷の旅 ・ 肩を揉んでもらった。ほう楽、になった。

芳醇な米の旨味を濃厚に醸し出すにごり酒は、清酒とは違った味わい深さがあることを知った。

それ以来、にごり酒が出る時期になると、いろいろな蔵のにごり酒や薄にごり酒を飲むのが楽しみになった。そしてそれぞれの蔵によって、その味わいが全然違うことも知った。

その中でも特にお勧めしたいのが、福岡の銘蔵が造る、「みいの寿・純米山廃にごり・美田」である。
三井の寿・純米山廃にごり・美田
上と下の画像は、まだにごり部分を混ぜていない、上澄みが残ったままの状態を撮影したものである。
三井の寿・純米山廃にごり・美田
瓶の下部分に、「にごり」が沈殿しているが、これが芳醇な旨味のもとになる。

にごり酒の最初の口開けの際は、濁りを全体に混ぜる前に、上澄み部分だけをコップに入れて、にごり部分を混ぜない状態での味を確かめてほしい。
三井の寿・純米山廃にごり・美田
こんなふうに上澄みだけをグラスに入れて試飲。酸味の状態が全体を混ぜるよりもはっきりと感じることができる。
三井の寿・純米山廃にごり・美田
その味を確かめてから、瓶全体を優しく振って、にごりを全体に混ぜていただこう。
三井の寿・純米山廃にごり・美田
最高にうまいにごり酒である。口の中に嫌な食感の米粒が残ることもなく、すべてクリーミィーに全体に濁りが溶け込んでくる。

日本酒の味(辛さ)は、超辛口・辛口・中口・うま口・甘口と分類することが多いが、このお酒は中口に分類されるべき味だろう。僕の好みである。
三井の寿・純米山廃にごり・美田
裏ラベルには、このような説明書きがあるが、この酒は福岡県糸島産山田錦を麹で60%・もろみで70%まで磨き、自社保存協会7号系酵母で醸した山廃純米酒である。

蔵付き乳酸菌を育てた天然乳酸での酒母造りと、酒米の最高峰山田錦を使用した山廃仕込みによって、コクがあって爽やかな味わいとなっている。キリリと冷やして呑むのがお勧めだ。肉料理に特に合うのではないだろうか。

ところで、「みいの寿」といえば、戦後九州で一番に山廃を復活させた酒蔵である。

そもそも山廃とは何か・・・。それは酒造りにおける「酒母(しゅぼ)造り」の製法のひとつである。

明治まで酒造りには欠かせないと言われていた生酛造り(きもとづくり)は、最も伝統的とされる酵母造りの技法のことで、江戸時代に確立された仕込み方法だ。蔵内に浮遊している天然の乳酸菌や酵母菌を取り込みゆっくり発酵させる手法である。

その際にまず、人の手によって桶の中で米麹をすり潰す、「山おろし」という作業を行う必要があった。蒸し米・米麹・水を合わせて少量ずつ桶に入れ、櫂棒ですり潰すために、この作業に2日間かかり、その後タンクに入れて、約30日間で酒母が完成するのである。明治末期までは、どこの蔵も生酛造りで酒を造っていた。

しかし明治43(1910)年に速醸酛(酒母を仕込む際に乳酸を投入する製法)が開発されると、生酛造りをする蔵はほとんどなくなってしまったそうだ。人の手によって米を2日間かけて桶の中ですりつぶすという重労働が、この方法では必要ないからである。そのため現在、大半の蔵は速醸酛で酒を造っている。

だが生酛造り(きもとづくり)でしか造ることができない日本酒の味わいというものがあり、最近、この生酛造りに再び脚光が浴びせられ、昔ながらの方法で、なおかつ新しい手法を取り入れて酒造りを手掛ける蔵元が増えつつある。

その新しい手法が、「山廃」である。

山おろしのというハードな作業で、人の手によってお米を溶かしていた作業を廃止し、人に替わって麹がその働きをすることによってお米を溶かすように技術改良されたのである。つまり山廃仕込みとは、生酛造りの中にある最も重労働とされる山おろしを廃止という意味から、「山廃」と呼ばれるようになったのである。

人に替わる麹の働きとは、お米のデンプンを糖に変える働きのことである。そしてできた糖に酵母が働きかけてアルコール発酵がおき、日本酒になっていくのだ。

このように山廃仕込みでは、米麹の持つ酵素の力で米を溶かして山卸と同様のはたらきを促し、酒母を造るので、昔ながらの生酛造りの味わいが生まれるのだ。

そのため酸味や苦味がきいた骨太な味わい、生酛造りは複雑な味の奥行きがありつつ透明感を感じる味わいとなる傾向があり、速醸酛ではできない酒ができるのである。

ということで本日お勧めの、「みいの寿・純米山廃にごり・美田」・・・。呑み助は、この酒を呑み逃してはならない。

今年の酒は、今年だけの酒であることを忘れてはならないのである。
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