今年の夏に参議院議員選挙が行われることは、今更言うまでもない。

この国政選挙は決して介護業界にも無関係ではない。特に現在行われている介護保険制度改正議論には大きく関連した問題で、参議院選挙前には、政党や政治家から給付制限・国民負担増という、「国民の痛み」につながる考え方は示されないのが普通だ。

政党として、政治家としてそんな発言をしてしまえば、票を減らしかねないからである。

よって現在は、「国民の痛み」につながる改正具体案は、財務省や厚労省等が設置した各種委員会が国に提言するという形で表面化しているに過ぎない。

これが選挙を終えると一変する。結果がどうあれ、制度の持続性を担保させるために、財源に見合った給付制限と国民負担増という方向が、政治の場でも具体化してくることは間違いのないところだ。

通常で言えば国政選挙は来年は行われないのだから、政権党は国民受けのしない政策にも手を付けやすくなる。介護保険サービス利用の際の自己負担割合について、2割負担者や3割負担者の対象範囲を広げる方向にも舵を切りやすい情勢が生まれるといってよい。

そのため2024年の制度改正・報酬改定に向けて、介護事業者や国民に対する厳しい風は、参院選後に一気に強まる可能性が高い。

そこで介護事業者は手をこまねいているだけでは、政治的逆風に吹き飛ばされる恐れがある。

そうした危機感の表れともいえる動きが5月27日にあった。

この日夕方、介護サービス事業者らで組織する団体がこぞって参議院会館に集合し、来る参院選に向けて、「介護業界の利益を代表する候補者」の支援方針を表明する会見を行った。

その候補者とは、全国老人福祉施設協議会の組織内候補であり現職である、園田 修光氏(自民党)である。

今回は全国老施協のほかに、全国老人保健施設協会・日本認知症グループホーム協会・ 日本介護支援専門員協会・日本福祉用具供給協会・全国介護事業者連盟・日本在宅介護協会・障がい者福祉研究所が一堂に会した。

各団体の間を取り持ったのは、全国老人保健施設協会の東憲太郎会長だそうである。そのためこの日も、「介護業界は一致団結することが必要だ」と呼びかけている。

このように介護関係団体がこぞって一人の候補者を支援することは、過去にはあまり記憶がない。そういう意味では、過去にない大きな集票能力が期待できるかもしれない。
選挙応援
国政選挙では、全国老施協は大きな苦渋を舐めた過去も持っている。故・中村博彦氏という剛腕会長を国政の場に送り出すことに成功した半面、中村氏が現職期間中の中間で行われた参院選では、支援候補者をめぐって組織の分裂が起き、その結果、候補者も落選させて国会議員を2名輩出することに失敗した歴史もある。

そもそも特養等を経営する社会福祉法人を中心として組織されている全国老施協は、会員数のわりに集票能力が低いという特徴がある。

特養や通所介護の職員は女性が多いことがその理由であるとも言われている。組織として特定候補者を支援し、その選挙に協力したとしても投票は別であり、一家の主である夫の会社が支援する候補者に票を投ずる傾向があるからだ。

このように選挙運動への協力が、そのまま投票行動に結びつかないのが、全国老施協会員の特徴でもある。

他の介護関連団体も似たような傾向があるとはいっても、今回のように事業種別を超えた介護関連団体が横断的に手を結ぶことは、かつてない大きな集票能力につながるのではないだろうか。

関係者も大いに期待値を高めていることだろう。介護業界全体にとってみれば、それは決して悪いニュースではないといえよう。

なぜなら介護報酬の動向は、決して政策と関係のない問題ではないのだから、介護業界の意見を代表する政治家の存在は、決して小さな存在ではないのである。
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