先週5月26日に開かれた介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会では、福祉用具を貸与した後のチェック体制が議題として取り上げられた。(資料はこちら

そこで行われている議論内容には、あきれ果ててしまった。それはケアマネジメント実務を一度でも経験した者からすれば、あまりに実情を知らぬ者の荒唐無稽な内容というしかない。

その内容とは、「同種の福祉用具を多数借りているケース」が適切なサービス利用にあたるのかどうかというものである。そして、「極端なケースについては、地域ケア会議でその内容を検証すべき」とする声も挙がっているが、それには開いた口がふさがらない。

極端なケースとは何ぞやという突っ込みも入れたくなるが、その前になぜ同種の複数の福祉用具貸与が問題になるのかと言いたい。

自宅での暮らしを続けるために何が不便で、それをどう変えたら「より自立的な生活」に結びつくのかを考えたとき、複数の手すりを設置することが必要なケースなんてよくあることだ。

むしろ同じ福祉用具を複数貸与する必要性に気が付いているということは、それだけ深く利用者の日常生活のアセスメントができているという意味である。

福祉用具貸与品が、原則単品利用しかできない原則になっていない点も、その必要性を鑑みてのことである。

それなのに複数利用というだけで問題にするのは、現場を知らないというより、頭がおかしいのではないかとさえ言いたくなる。給付制限を勧めたい思いが先走ってのことだと思うが、馬鹿も休み休み言ってほしいものだ。

この検討会ではさらに、福祉用具専門相談員の資格のあり方が話し合われた。福祉用具専門相談員には常に最新の知識が必要"という認識から、「一定期間ごとの研修を義務付けてはどうか」という意見が示されている。

しかし資格更新制度が、資格者の質を担保しない例は、介護支援専門員の資格更新制度や教師のそれを見ても証明されていることではないのか・・・。

最新の知識は更新研修で得られるなんて言う考え方もどうかしている。資格更新研修なんて、大したスキルのない講師の受け売りを聴かされるだけに過ぎない。

現代社会において最新情報とは、あふれるネット情報から自分で取捨選択できるものである。有能な人材であれば既にそのことを行っている。更新研修程度でしか情報を得られない有資格者は、それだけでスキルが疑わしい。

だからこそケアマネの更新研修だって、居眠りをし続けそれで終わりという受講者がいかに多いことか・・・。更新研修はいずれも、研修主催者の利権にしかなっていないではないか。
ナンセンスな資格更新制度
そもそもスキルを担保するために資格更新が必要不可欠だというなら、人の命を預かる医者の資格を更新制にしろと言いたくなる。

このほかにも財政審は、「福祉用具のみは報酬減としろ」という提言を国に行っている。ケアマネジメントの結果、必要なサービスは福祉用具のみと判断したとしても、ケアマネジメント業務自体は、複数サービスの組み合わせプランの業務と同じことをしているのに、なぜ対価が減らされないとならないんだ。

それともケアマネジメントとは、居宅サービス計画書の文字数と、給付管理票の計算式の多さに比例するとでもいうのだろうか。あまりにも身勝手な結論である。

さらに規制改革会議に至っては、「介護施設の人員配置緩和を勧めないと施設介護は崩壊する」と提言し始めた。

人口構造を鑑みると、今後の介護人材確保が困難であること理解できるが、だからと言って人に替わる仕事ができるロボットがない状況で、人に知らせるセンサーがそれに替るかのような幻想的思考で、短絡的に人員配置の削減を図る考え方はいかがなものか・・・。

こうした意見を言う人間は、1日でも良いので介護施設の夜勤時間帯を含めて、職員がどんな仕事振りかを見に来いと言いたい。

実際に介護業務なんて体験する必要はないけど、見るだけでもロボットやICTが人にとって替れれない仕事がいかに多いかが理解できるし、現状の配置でも通常業務が勤務時間内に終わっていない状況を知ることになろうと思う。

それでもなおかつ配置基準を緩和するというなら、運営基準も緩和して、もっと劣悪なケアの体制でも指導対象とならないようにしなければならないだろう。それはもはや対人援助サービスとは言えなくなる・・・。

どちらにしても、介護実務の場で体を動かしたことがない人たちが、荒唐無稽の議論を展開している状態である。しかし恐ろしいのは、その議論がそのまま新しい法令等に結びつく可能性があることだ。

そこでは荒唐無稽な基準が作られ、介護を受ける人々が生きる場所は果てしない荒野になっていくのである。
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