今現在及び今後の介護事業経営を考えたとき、一番重要となるものは、「人材マネジメント」である。

経営者がどんなに素晴らしい経営能力を持っていても、事業運営に必要な人材がいなくてはどうにもならない。特に介護サービスは人手を掛けずに提供できないものである。しかし生産年齢人口が減り続け、介護人材対策も有効な手立てが打てない状況で、すべての介護事業者が必要な人材を確保する見込みは立っていない。

そこで何を考えるべきか・・・。マイナビが運営するメディカルサポネットで、今日から6月17日までの限定公開で、この問題に関するオンライン講演が配信されている。「介護事業における人材マネジメント〜採用と育成で重視すべきこと」は、張り付いた文字リンクをクリックしてご覧になっていただきたい。

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ところで人材マネジメントに関連しては、従業員全体の処遇改善をどう考えるかという問題がある。

10月から介護職員処遇改善支援補助金が、「介護職員等ベースアップ等支援加算」に変わり、処遇改善関連加算は3種類となることは何度もアナウンスしてきた。(参照:介護職員等ベースアップ等支援加算が新設されます

職員の給与改善原資となる加算が、随時積み上げられてきた結果とは言え、なんとも複雑な加算構造になったものだ。

次期報酬改定では、この3つの加算を統合してもっと簡素化できないかということも議論の俎上に上ると思われる。

しかし一番古くからある処遇改善加算は介護職員にしか支給できないのに対して、特定加算介護職員等ベースアップ等支援加算は、支給対象事業内の職員であれば介護職員以外にも配分してよいルールになっている。ただし特定加算には、その配分に細かいルール(制限)が設けられているが、介護職員等ベースアップ等支援加算は、事業者の裁量で自由に配分できるという違いがある。

つまりこの3つの加算は、似て非なる加算であり、一つに統合するためには、一度すべての加算構造を崩したうえで再構築する必要があるのだ。

それは非常に難しく時間がかかる作業にならざるを得ない。しかもそうすることで既得権の一部が消滅することにもなる。介護職員以外の職種に配分幅を広げると、介護職員の既得権が侵されることになり、介護職員以外の配分制限を強化すれば、その他の職種の既得権が侵されるからだ。

よって今までのそれぞれの加算ルールを踏襲したまま、配分ルールも申請もそれぞれ別に行うという現行ルールも変わらないのではないかというのが、現時点での僕の予想だ。

しかもそれに加えて5月24日に論評した、介護職員の更なる処遇改善が行われることになる。(参照:介護職員の更なる処遇改善の見込みについて

これが現行の3つの加算のどれかに上乗せされるだけなのか、あるいは4つ目の処遇改善加算となるのか、はたまた既得権云々もすべて無視して全部を一度崩して再構築するのかは、まだ何とも言えない。(※おそらく介護職員のみに配分される処遇改善加算に積み上げられる可能性が高いと予想している。

どちらにしても処遇改善に関連する加算はなくなることはないし、上乗せされて更なる給与改善の原資が増やされることも間違いのないことである。

ところでこの加算の最上位区分を算定していない介護事業者がまだ少なくない。最上位区分はキャリアパス要件のすべてを満たさねばならないなどのハードルがあるとはいっても、それは乗り越えるのが困難なハードルではない。
介護職員の処遇改善
むしろ今後も解決の見込みがない介護人材不足を考えると、最上位区分に求められている要件をクリアしない事業者は、人材確保がこんなとなるという危機感をもって、積極的にハードルを越える必要があるというものだ。

ところが最上位区分を算定しない事業所の中に、その理由が職員間の不公平を挙げているところがあるから驚きだ。

要するにこの加算が、介護職員だけに手厚く配分される加算であるために、介護職員だけ他の職種より優遇されて給与が上がるのが不公平だから、いっそのこと加算の下位区分しか算定せず、介護職員の給与アップをできるだけ抑えることで、他の職種との均等を図ろうという考え方である。

しかしこの考え方をとる事業者の経営者は、その経営能力と経営センスが問われると思う。情けない考え方だ。

そもそも平等・均等を低い基準に合わせてどうするのだと言いたい。そういう職場では、職員全部の待遇改善は至極困難にならざるを得ず、安い賃金で酷使されかねない状態を、「当然」と刷り込まれる状態に陥る。

そもそも処遇改善加算が介護職員への支給が優先されるとはいっても、それによって介護職員の定期昇給原資は手当されるのだから、事業収益をそこに充てる必要はなくなったと考えることができる。

そうであれば処遇改善に関連する加算を算定することで、事業収益から介護職員以外の職種へ回すことができる定期昇給の原資は増えていると言えるのである。その分を他の職種の給与改善に回して、介護職員との格差が生じないようにすることが本来の公平性担保である。

現に国も、他の職種の給与改善は加算以外の収益から行うべきと言っているのだ。

それをしようとせず、国の定めたルールがおかしいと不満を訴えるばかりで、なおかつ算定できる加算を無視して給与改善に後ろ向きな介護事業経営者は、経営者としての矜持が問われると思う。

介護事業にとって何より大切なものは、その事業を支える全ての従業員の方々である。それらの方々に対して、より良い労働環境を与えるのが経営者の務めである。

労働対価としても給与も、その重要な要素であるということを、経営者は強く自覚する必要がある。
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