先週19日、都内の通所介護事業所を視察した岸田首相は、視察後に記者団に対し介護職の更なる処遇改善に向けた施策を検討していく意向を明らかにした。

首相は記者団に、「人材の確保をめぐる厳しい状況を伺った。介護を必要とする人の増加が見込まれるなかで、質の高い介護サービスを提供していくためには、介護現場で働く皆さんにいきいきと不安なく働いて頂くことが重要」と述べたうえで、「今後も人材の職場への定着、更には経験・技能の高度化につながる処遇改善のあり方を引き続き検討し続けていきたい」と表明。「他の分野と比較しても遜色ないようなところまで引き上げるべく今後とも努力をしていく、ということが大事なのではないか」と言明した。

次期介護報酬改定の論点一つとして、「対象外となった職種の検証も含む処遇改善の検証」が挙げられており(3/24・社会保障審議会介護保険部会)、この発言はその議論に影響を与えることは必至と思われる。
介護職の更なる処遇改善
そのため更なる介護職員の処遇改善・賃金引き上げに期待を高める関係者は多いことだろう。

しかし介護事業経営者は、このことに諸手を挙げて喜んではいられない。

コロナ禍という状況に終息が見られない情勢であるが、今後の我が国の予算編成は、ウイズコロナの視点から、新しいステージで行われることになる。アフターコロナと言える状態にならなくとも次のステージに進むことを理解せねばならない。

次期介護報酬改定は、そのような財政措置が取られる中で、診療報酬とのダブル改定として行われるのだ。

つまりコロナ禍による財政悪化と経済停滞の復興を目的とした予算組の中で議論される制度改正報酬改定という意味になる。

このようにウイズコロナの最大のテーマは経済復興なのだから、社会保障関連費用は2の次、3の次とされる可能性もあって、2015年度のマイナス2.27%並みかそれ以上の厳しい改定予測が成り立つのである。

その中での、「介護職員の更なる処遇改善」である。このことは社会保障政策ではなく、岸田内閣が掲げる、「成長と分配の新しい資本主義」という政策の中で実行されるから、骨太の改革の治外法権なのである。

さすればその財源はどこから手当てするのか・・・。一番考えられるのは、度重なるプラス改定とコロナ補助金で潤ったとされる介護事業者から取ればよいという話になるのではないのか・・・。

つまり基本サービス費は大幅に下げて、その分を新たな処遇改善に回すという意味である。

そういう意味では、介護事業経営者にとって、その手腕が問われる厳しい報酬改定となることを視野に入れることになる。

そこで考えなければならないことは、どの部分の報酬が手厚く護られるかということだ。そこを確実に算定できる準備をしておかねばならない。

当然のことながら、昨年度の報酬改定で新設されたLIFE関連加算については、今後も拡充・重視された報酬体系になることは間違いのないところであり、現行のLIFE関連加算・LIFE関連上位区分加算を確実に算定しておく必要がある。

この加算について、事務処理が大変なわりに算定単位はあまり高くないとして無視している事業者は、次の報酬改定で泣きを見ることになる。そうならない準備が今から求められるのである。

またここ数回の報酬改定を見ると、利用者のADL口腔機能栄養状態などの改善を図る、「アウトカム評価」の拡大傾向が見られるので、この部分も確実に算定していきたい。

施設・居住系サービスについては、多死社会に備えて看取り介護・ターミナルケアが今後も確実に重要視されていくので、看取り介護加算・ターミナルケア加算をとるために、職員全員の看取り介護スキルを向上させていかねばならない。

なぜならそうしたスキルを与えないまま、加算算定だけを目的化している施設・居住系サービスでは、知識と技術のつたない状態での看取り介護の実施によって、職員の混乱と疲弊が見られ、退職者が相次ぐという事態になりかねないからだ。(参照:看取り介護教育が不十分な事業者が多い現状(後編)

逆に、看取り介護のスキルを充実させて、本物の看取り介護ができる場所では、職員の定着率が上がることが実証されている。(参照:職員の意欲と定着率を向上させる看取り介護・ターミナルケア

どちらにしても厳しい制度改正・報酬改定となることを想定しながら、その逆風にも負けない経営体力をつけておくことが重要である。

結果的に予想に反してプラス改定になったならば、それに越したことはないのであるのだから・・・。
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