昨日から明石市のホテルに泊まって今日の講演に備えているが、昨晩は神戸三ノ宮で食事をした。今月28日のオンライン講演主催者の方との顔合わせを兼ねた食事会であり、神戸牛をごちそうになったが、その模様は「神戸ビーフか?と、乞うベビー不可」をご覧になっていただきたい。
ところで今日の講演は、介護事業経営者の方々の研修の中で行われるものであり、当然今後の介護事業経営上の重要課題となってくるBCPの策定に関連した話題に触れる予定である。
BCPについては先週、厚労省の委託を受けたNTTデータ経営研究所が、昨年の10月から12月にかけて策定状況の調査を行った結果を公表している。
全国の介護事業者のうち、1.811事業所から有効な回答を受けたとされる調査結果を見ると、感染症と自然災害それぞれのBCP策定の進捗について、「今年3月までに策定予定」としているのは、両方とも全体の約半数となっている。
(※NTTデータ経営研究所が公表したBCP策定進捗状況)
調査結果の総括では、「無回答の事業者があることを踏まえ、策定見込みがない事業所はおよそ4分の1」とされている。
それだけBCP策定義務が、介護事業者に負担となっているということだ。
しかし今後の介護事業経営を考えたとき、BCPが策定されているか否かによって、介護事業者の価値は大きく違ってくる。BCP策定は介護事業者にとって大きなメリットをもたらす可能性が高いのである。
そういう意味では、BCPは国から策定義務が課せられたから創るのではなく、介護事業者にとって必要不可欠な経営戦略の一つとして策定する必要があると考えるべきである。
すでに気候が亜熱帯化したと言われる我が国では、毎年のように大きな自然災害がどこかで起きるようになった。コロナ禍という感染症被害も経験し、そのダメージは計り知れないことも判った。
それらは今後、いつ自分の身に降りかかるかしれないと、すべての介護事業者が備えるべきなのである。
BCPを策定する最大のメリットは、災害や感染症など緊急事態の発生時に早期復旧に向けて、速やかに対応できることだ。事業を早期復旧することで、経営面での被害を最小限に抑えることができるだけではなく、そうした計画があることで利用者を初めとした第3者の信頼を得ることにつながる。
またBCP策定過程で、自社にとって優先すべき中核事業を把握することで、経営戦略の立案や見直しの機会ともなるし、強みとなる部分も見えてくる。これは事業経営にとって大きなメリットになるだけではなく、その策定過程に関わった職員のスキルアップにもつながり、人材育成という面でのメリットにもつながる。
そう考えるとBCP策定にコストがかかるなどのデメリットがあるとしても、それを上回るメリットの方が大きいと言えるであろう。
そうした中、コロナ禍の終息も見えない状況で、その策定を急ぐ気持ちも理解できるし、早期策定できればそれに越したことはない。だからと言って今、策定見込みが立っていないと焦る必要もないと思う。この策定義務は2024年3月末まで努力義務なのである。それまでに策定されればよいわけだ。
急いで使えないBCPを策定するよりは、努力義務期間を最大限に使って、自社にとって有益なBCPを策定するほうがマシである。
そもそもBCPとは、「BCPに求められるPDCAサイクル」で指摘したように、最初から完璧な内容にしなければならないものではなく、策定後成長させていくものなのだ。2024年3月末までに策定した計画も、そこから修正を重ねていってよいものだと、余裕も持って考えてほしい。
現場でシミュレーションを重ねないと、使えるBCPにはならないのだから、とりあえずできる範囲で策定を行って、策定後に修正・グレードアップさせていくと考えればよいのである。
BCP策定については今後、厚労省が旗を振って全国で研修会が実施される予定になっている。厚労省が公式サイトに掲載しているBCPマニュアルや動画を観て、そうした研修会に担当者を参加させて、2年後までに策定できれば良しと考えてほしい。
ただし間違えてはならないことは、BCPは介護事業経営者が一人で策定できるものではないし、策定担当部門を創ったとしても、そこですべての作業を完結できるものではないということだ。
BCPは緊急時に何を優先させて行うのか、何をしなくて良いのかなどの具体策を記す必要があるが、例えば介護施設等で、介護職員が2割しか出勤できない場合、何ができて何ができなくなるかということは、事務管理部門がいくら考えても答えは出せない。
介護職員が、自らの経験と立場で考えて初めて答えが出せる問題なのである。
経営者や管理職にはわからない、現業の細部をきめ細かく取り上げて、BCPは初めて機能するのだ。
そういう意味では、BCP策定の担当部門とは、あくまで旗振り役・調整役という意味で、その策定過程には全職員がかかわる必要があるということを理解しなければならない。
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