介護支援専門員(以下、ケアマネと略)の役割とは何かということを一言で表現するとすれば、「調整役」であると言えるのではないだろうか。

少なくとも僕は、その役割が一番大事だと思っている。人と人・人と社会資源など様々なものを調整してつなげるのがケアマネジメントだからである。

そして調整役にとって一番重要となるスキルは、「伝達力」である。

言葉による伝達力、文章による伝達力・・・それらすべての伝達力が問われる仕事である。

介護支援が必要な人に対して最も必要で、かつ欠けているものをつなげることが、課題解決のために必要とされるとはいっても、つなげ方を間違ってはどうにもならない。最も効果的に正しくつながることができるようにするため使いこなすものが、「言葉や文章」なのである。

そのため居宅サービス計画書や施設サービス計画書は、ケアマネ実務に就いている人にとって、業務上なくてはならないツールとなっている。それも全て文章で構成されている。つまり自分の言葉を文章化しなければならない仕事が、ケアマネ業務であるともいえるわけである。

にもかかわらず、言葉も文章も大事にしない人がいる。

例えば認知機能低下のない人のことを、「ニンチはない」と馬鹿げた表現しかできないケアマネが存在する。

おそらく言いたいことは、「認知能力の問題はない」ということか、もしくは、「認知症ではない」ということなんだろうと思う。しかしその状態を正しく表現しないと、すべての人にその意味が正確に伝わることはない。

ニンチはない」と言ってしまえば、それは認知能力がないという意味にしか取れないのだから、それならその人は認知症である。それなのにその言葉を発する本人は、全く逆の意味として使っているのだ。

そうした状態では、思いもよらぬ誤解や偏見が生まれかねない。その状態は、利用者にサービスを提供するにあたってのバリアを、ケアマネ自身が作っているといっても過言ではなくなる。それでは調整しているとは言えないのである。

略語を使うことにも注意したいものだ。そもそも世間一般に通用しない略語を勝手に作って、自分勝手に使っているケアマネが多すぎないか・・・。自分だけが意味を知っている略語は、伝わらない意味不明の言葉でしかないことを自覚してほしい。

他人に伝わらない言葉を使ってなんとも思わないケアマネは、調整できないケアマネでしかない。それは専門職としての能力に欠けた状態としか言えない。

言葉を大事にできない人は、仕事も、資格も大事にしていない人だと思う。それは調整役として恥ずべき姿である。

言葉とは自らの思いも表現する大切なものなのだ。そこには命が宿っているともいわれる。
言霊
僕の著書、「介護の詩〜明日へつなぐ言葉」の、「はじめに」という部分には次のような文章を載せている。
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古来よりわが国には、「言霊:ことだま」という考え方があり、言葉には不思議な力が宿っていると言われています。それは言葉に込められた、「」であり、時に「言魂」と表現されることがあります。それは決して禍々しいものではなく、本来、善良なものとして使われる言葉です。(引用以上)
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利用者と様々なものをつなげる調整役であるケアマネには、言葉の持つ不思議な力を意識して、その言葉をもっと大事にしてほしい。大事な言葉の意味を正確に相手に伝えるために、文字として表す言葉にも気を使って、正しく伝わる文章表現に心かけてほしい。

表の掲示板のとあるスレッドで、言葉を大事にしない質問に触れ、それがケアマネという職業に就いている人が書いた文章であると知ったときに、とても残念に思ったことが、このブログ記事を書いたきっかけである。

ただしこのブログ記事を書いた意味は、当該スレッドを建てた人の能力を揶揄するためではなく、叱咤激励して今後の活躍を期待するという意味だ。「なにくそ」と憤慨するエネルギーを糧にして、僕なんかをはるかにしのぐ素晴らしいケアマネに成長してほしいと思う。

僕は自称・ケアマネサポーターだから、そうあってほしいと思うのである。

どちらにしてもケアマネの一番の問題は、「人による質の差・個人差」であることは間違いのないところだ。コミュニケーションスキルの差の問題もここに深くかかわっていることをすべてのケアマネが自覚してほしい。

世界一美しく、豊富な語彙を持つと言われる日本語を、正しく使いこなすことで、伝える言葉や文章に不思議な力を宿してほしい。

だから表現する能力を鍛えることは、常に重要である。ケアマネのスキルアップは、伝える能力を伸ばす努力なくして語れないと思う。
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