GW直前の28日に発出された、介護保険最新情報のVol.1073は、介護支援専門員(以下ケアマネと表記)対象の法定研修のカリキュラム、ガイドラインの見直し案を示したものだ。
今更言うまでもないがガイドラインとは、ルールや法律・規程などの守るべきことについて、どう行動すればよいのかの指針を記したものである。
今回ケアマネの各種研修カリキュラム、ガイドラインが見直されたという意味は、今後ケアマネに対して求められる姿勢が新たに示されたという意味であり、その姿勢・視点形成に向かってケアマネに対して国が強く働きかけることも示唆している。
当然そのことは、今後の制度改正や報酬改定の各種要件として表立ってくるだろう。
よって今回の通知は、すべてのケアマネ現業者が読んでおかねばならないものである。ざっとその中身を見渡してみよう。
各研修共通の見直しのポイントとしては、介護保険制度以外の領域も含めて、制度・政策、社会資源などについての近年の動向を確認することにも重きを置いており、いま話題の「ヤングケアラー」問題が取り上げられているほか、介護離職を防ぐという意味で、「仕事と介護の両立」のための制度の動向確認などが挙げられている。
そのほか、地域共生社会・認知症施策大綱・科学的介護・身寄りがない人への対応・意思決定支援などという項目が目に付く。
介護保険制度の知識だけではなく、広く社会全体の問題にアプローチするための知識が求められているわけであるが、これはケアマネがソーシャルワーカーであり、利用者の生活課題の解決にあたるためには、暮らしに関係するあらゆる社会資源情報に精通していなければならないのだから、極めて当然のことであるといってよいだろう。
またカリキュラムの内容を幅広い知識の獲得に重きを置いた時間配分に見直すとして、講義中心に変える方針も示されている。
具体的には「居宅サービス計画等の作成」・「サービス担当者会議の意義及び進め方」・「モニタリング及び評価」の時間数を減らして、「人格の尊重及び権利擁護並びに介護支援専門員の倫理」と「地域包括ケアシステムの深化及び地域の社会資源」の時間数を増安とされている。
この方針によって演習の時間は削られることになる。
このことに僕は大賛成だ。時間つぶしのように意見を垂れ流して、そこから深く考察することもない演習・グループワークは、自己満足にしかならず、あまり意味がないと思っているからである。
しかしこのことは同時に、講師の質・講義の質が問われることになることを忘れてはならない。
天下の悪書である、「七訂 居宅サービス作成の手引き」(長寿社会開発センター)を読み上げるだけの講師や(参照:参考にしてはいけない「居宅サービス計画書作成の手引」)、生徒が眠ってしまう講義しかできない講師は、新しいカリキュラムからは排除対象とされなければならない。
そんな講師を残しているのであれば、研修カリキュラムやガイドラインが変わっても、結果が変わらないからである。この部分の結果責任を追及する視点で、研修事務局は講師選びをしてほしい。
せっかく広く知識を得ようとして、時間を割いて研修を受講しているのに、講師の見識が狭くてがっかりしたという研修を数多く経験してきた身としては、講師選びこそ研修の成否を決定する最も重要な事項だと思っているので、この点は法定研修を開催するものの責任としても深く考えてほしい。
その他のカリキュラム内容では、ケアマネの倫理について重点が置かれた内容となっている。ここには是非、利用者に対するサービスマナーという視点を入れてほしいところである。
倫理リンリと唱えても、その先で人生の先輩である顧客にタメ口対応がされていたら、その倫理観って何なのよとしか思えなくなるからである。
少し気になるのは、主任介護支援専門員研修の見直しのポイントとして、次の内容が挙げられていることだ。
◯「終末期ケア(エンドオブライフケア)を含めた生活の継続を支える基本的なマネジメント及び疾患別マネジメントの理解」の新設(現行の「ターミナルケア」は本科目に統合)
ターミナルケアの支援を、終末期ケア(エンドオブライフケア)を含めた生活の継続として考えるという意味は、リビングウイルの支援も含めたACP(人生会議)の重要性をそこに組み入れてレクチャーするという意味だろう。
それは良いとして、「疾患別マネジメントの理解」をどこに含めるからと言って、その講義を医師や看護師に担わせはしないだろうな・・・と思ってします。ここはきちんとソーシャルワーカーが担うべきターミナルケアマネジメントを語ることができる講師を選んでくれないと、利用者不在の医療者の視点に偏った講義に陥ってしまうのではないかと危惧してしまう。
なんだったらこの部分の講義は、僕に依頼してくれればその内容に最もふさわしい講義ができるのになんて思うのである。
介護業界にも多彩な人材は数多くいるといっても、ソーシャルワーカーに求められるターミナルケアマネジメントについて、最も的確に伝えられるし講師は、日本広しといえど僕以外にはいないだろう。・・・それは少し手前味噌すぎるかもしれないが、医師や看護師の語るターミナルケア論ほど役に立たないものはないのも事実である。
どちらにしても今回の通知は、ケアマネに対する世間の期待と評価を表したものでもあるので、ケアマネの皆さんは決して見逃さないように、きちんと精読してほしいと思う。
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