13日に開催された「財政制度等審議会」で財務省は、小規模介護事業経営を批判する意見を堂々と述べている。次の3つの発言がそれである。

・「幅広い経営主体の参入こそ進んだものの、小規模法人が多く、事業者間の競争が必ずしもサービスの質の向上につながっているとも言い切れないうえ、業務の効率化も不十分と言わざるを得ない」

・「小規模な法人が他との連携を欠いたまま競争するということでは、介護の質の向上にも限界があり、新型コロナのような感染症発生時の業務継続もおぼつかない

・「規模の利益を生かす効率的な運営を行っている事業所などをメルクマールとして介護報酬を定めることも検討すべき。そうしてこそ大規模化・協働化を含む経営の効率化を促すことができる」

新型コロナも味方にするかのように論理展開して、大幅な制度改正・報酬改定を求めているのである。・・・それによって財務省の考える方向、すなわち給付抑制と利用者負担増という方向へ流れを創りたいというわけである。

その主張の中にある、メルクマールという言葉は、あまり聞きなれない言葉であるが、辞書検索するとそれは、『物事を判断する基準や、その指標のこと。一般的には、最終目的を達成するための一連の過程等における中間指標目印のことを意味する。』とされている。

要するに大規模事業を目印にして経営を進める・・・すなわち同じサービスであっても、小規模事業者の給付費は下げて、大規模事業者の給付費の方が高く設定し、収益を上げたいのであれば、大規模経営を目指して統合を図るなどしなさいというわけである。
傲慢な主張
こうした難しい言葉を使って、論ずることによって、『頭の良い人間が考えているんだから、下々の人間は、くだらない反論などせずに言うことを聴いて逆らうな!!』と脅しをかけているわけである。

財務省は、『小規模事業所の競合が必ずしもサービスの質向上につながっていない』というが、それは地域包括ケアシステムが深化せずに、多職種連携が機能していないという問題ではないか。そしてそれは事業規模の問題とは関係のないことである。

確かに小規模事業者質の高いサービスを提供する事業者ではないことは事実だ。

サービスマナー意識の低い事業者が、小規模事業者でもかなり多いことを含めて、サービスの質向上が思った以上に酢進んでいないという事実を介護事業関係者は、重く受け止める必要があると思う。

しかし大規模事業所で対応しきれなかった困難ケースを引き受けて、きめ細かく対応している小規模事業者は数多くあり、それらもこの政策によって切り捨てるのはやむを得ないとするのは、あまりに乱暴な論理である。

そもそも介護事業の大規模化が行き着く先は、特定事業者による一定地域の寡占化である。

寡占化を図る途中で、他事業者を蹴落とす過程で一時的なサービス向上が行われたとしても、寡占化が常態化された時期には、事業者論理による利用者ニーズの切り捨てということが必ず起こることは、過去の様々な歴史が示しており、小規模事業所の競合が必ずしもサービスの質向上につながっていない現状より、それは劣悪な状態を作り出す懸念を高める問題である。

しかもその過程では、まだ数が少ないかもしれないが、利用者ニーズに即したサービス提供を行い、利用者の暮らしの質を劇的に高めている優良な小規模事業者が、バタバタと頓死憤死していくのである。

つまり大規模事業者をサービスの担い手の中心とすることが、現在のサービスの質を向上させる手立てであるということにはならないのである。

財務省の主張は、『どうせサービスの品質は低いんだから、大規模事業者による寡占化が進んで、企業の論理で利用者ニーズが切り捨てられたって大した問題ではないだろう。介護サービスは使えさえすればよいのだ。』とでもいうような横暴な論理である。

これはあまりに国民を馬鹿にした論理である。それは国民の福祉の低下に直結する由々しき問題であり、国民にのみ痛みを求める改革はいい加減にしてくれという声が挙がって当然だろう。
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