昨日行われた財政制度分科会では、介護保険制度改正に関連して財務省がいつものように利用者負担増給付抑制策を強く主張した。

居宅介護支援費の利用者負担導入については、「他のサービスで利用者負担があることも踏まえれば、利用者負担を導入することは当然」と述べているが、これは居宅介護支援費に自己負担を導入しなかった経緯を無視した暴論であるとしか言えない。

居宅介護支援費が全額保険給付されている理由について国は、「利用者個々の解決すべき課題、その心身の状況や置かれている環境等に応じて保健・医療・福祉にわたる指定居宅サービス等が、多様なサービス提供主体により総合的かつ効率的に提供されるよう、居宅介護支援を保険給付の対象として位置づけたものであり、その重要性に鑑みたものである。」としてきたのである。

つまり保険給付を現物給付化するためのケアプランは、実質すべての利用者が必要とするものであり、セルフプランを作成する能力がある人でない限り、居宅介護支援は必要不可欠なサービスなので、選択性のある他のサービスとは一線を画しているのである。

さらに居宅サービス計画によって、サービスを計画利用することそのものが、必要なサービスを選び、不必要なサービスを利用しない効果につながり、それ自体が給付費の無駄遣いを防ぐ効果もあることを見越しているという意味もある。

どちらにしても、居宅介護支援費の自己負担導入という方向性が、「当然だ」とする財務省の姿勢は、あまりに傲慢な態度といってよいだろう。

このブログで何度も主張しているように、居宅介護支援費の自己負担導入は何らメリットのないものであることを我々は強く主張し続ける必要があると思う。(参照:ケアプラン有料化にメリットはゼロどころか・・・。
庶民のための政治を
このほか財務省は、要介護1と2の方々については、「軽度者」と定義したうえで、それらの方々の訪問介護と通所介護については、市町村の総合事業化することも当然行うべきとしている。

このことについて財務省は、予防訪問介護と予防通所介護が総合事業化された実績を盾にして、なんとしても実現を図ろうとしている。そのため既に市町村のインセンティブ交付金について、「地域の通いの場づくり」を支給要件に加え、軽介護者の受け皿づくりを進めているところだ。(参照:インセンティブ交付金が倍に拡充されることが決定される

僕が住む登別市の状況からすれば、国の思惑通りには地域の通いの場づくりは進んでおらず、軽介護者の通所介護が総合事業化されても、軽介護者の行き場所がないのではないかという懸念がぬぐえないが、そのようなことは市町村が考えるべきこととして、強引に進められる恐れも無きにしも非ずだ。

それは国民の福祉の低下に直結する由々しき問題である。

今年の夏には参議院選挙があるので、給付抑制や利用者負担増などの国民の痛みが強調されることは、選挙結果に負の影響を与えかねないとして政治判断がどう影響するかもそ関連してくる問題であるが、我々も自分のできる範囲で声を挙げ続ける必要があると思う。

ところで次の介護保険制度改正は2024年度からの改正となるが(※ただし一部の改正項目は前倒しもあり得る)、その具体的議論の場となる社会保障審議会介護保険部会が3月24日、1年8カ月ぶりに開催されている。

今後はこの部会で制度改正の具体策が話し合われるわけであるが、議論の前提には財源問題が強く関連してくることは間違いのないところだ。

介護給付費増加の推移をみると、創設された2000年の3.2兆円(利用者負担除く)に対し、2019年度には10.1兆円となっている。この費用の伸びに伴い、第1号保険料は月額2911円(第1期)が6.014円(第8期)に、第2号保険料も2.075円(2000年度)から今年度は6.829円を見込んでおり、ともに保険料負担は大幅に増加している。

そのため給付費の増加をできるだけ抑える方向で制度改正論は進められ、下記の積み残されている課題が再検討されることになる。
・居宅介護支援費(ケアマネジメント)への自己負担導入
・2割と3割負担対象者の拡大
・要介護2までの生活援助サービス・通所介護・福祉用具貸与の総合事業移行
・老健、介護医療院、介護療養病床の多床室の室料負担導入
・被保険者・受給者範囲の拡大

さらに、「福祉用具適正化議論の本質はケアマネジメント適正化議論だ」で指摘した通り、杖や手すりなどの福祉用具について貸与種目から販売へ移行させることや、ケアプランの内容が福祉用具貸与のみの場合に居宅介護支援の介護報酬を引き下げる議論がすでに、「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」で検討課題に挙がっており、これらも議論の俎上に上ることとなる。

また、10月から3段階となる処遇改善加算については、「処遇改善を行うに当たっては、これまでの措置で明らかになった課題や対象外となった職種も含め、検証を行う」とされ、3つの加算の一本化も含めた議論が展開されることになると思われる。

介護職員の給与については着実に改善されているが、その歩みは亀のように鈍い歩みである。しかも全産業平均と比較するとそれより低い水準にあるままでもある。

さらに介護事業を支えているのは介護職だけではなく、縁の下を支える事務員等の待遇改善も求められるところだ。そもそも介護職員の給与改善がなかなか進まない原因は、他の職種との「格差」「不公平」なのだから、介護業者全体の給与改善が求められるところだ。

複雑化した3段階の処遇改善加算の是正と共に、全職種の給与改善につながる改正を期待したい。

「介護ロボットやICT活用などにより、施設の3対1の配置基準を緩和すること」も再検討されることになる。

それは介護実務に従事する人たちの業務負担増につながり、介護人材も減らしてしまう愚策であり絶対に阻止しなければならないが、そのためには介護実務に就いている介護職等の生の声を国に届けなければならない。

僕もそのためには労力を惜しまないので、このブログや表の掲示板に、是非皆さんの声として意見を書き込んでほしいと思う。

さて今日の記事の終わりに際して、一つだけ紹介しておきたい動画を見つけた。

今から5年以上前の2016年10月に、三重県四日市で行われた地域活性化トークバトルというイベントに招待を受け、講演とシンポジウムに参加したことがある。その際にも制度改正について話をしているが、それをまとめた短い動画がユーチューブで今も配信されている。興味のある方は、下記もご覧になっていただきたい。

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