全国各地で入学式のシーズンである。

中学や高校の入学式に参加する学生たちにとって、私たちが携わる介護という職業やそれに付随する問題は、彼らの日常とはかけ離れた問題であるように思いがちである。

しかし実際にはそうした若者の中にも、介護問題に向き合って暮らしている人がいるのだということがわかる調査結果が厚労省から示された。

4/7に厚労省が公表したヤングケアラーの実態把握を目的とした調査研究結果では、世話をしている家族が「いる」と答えた小学6年生6.5%もいることが明らかにされている。

この数字には少なからず驚かされた・・・。

ヤングケアラーという言葉は、世間的にはまだまだ浸透していないかもしれない。

それは、『家族に介護を要する人がいるために、大人が担うようなケアの責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子供』を意味する言葉である。

そこに小学生も含まれているのである。ヤングケアラーの小学6年生が6.5%ということは、100人の小学6年生を集めたら、そのうち6人以上は介護にかかわっている確率が高いという意味になる。

これは決して低い数字とは言えないと思う。介護の度合いには個人差があるのだろうか、これほど多くの小学生がケアに関わっているとは驚きである。

自分の小学生時代のことを思い起こすと、介護問題とその時代は結びつかない。
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調査対象は厚労省が決め、それに基づいた学年を対象にしており、小学6年生などを対象としたのは今回が初めてとのことである。もし調査対象を小学1年生まで広げたら、どれだけ低学年の児童が介護にかかわっているのだろうと思ってしまう・・・。

ただし調査結果を見ると、小学6年生以外では中学2年生が5.7%、高校2年生が4.1%、大学3年生が6.2%などとなっており、年齢が高ければヤングケアラーの割合が増えているわけではないという結果となっている・・・これは調査サンプル数が少なくて、何かの要因で偏りのある結果が示されており、必ずしも日本全国の平均を表すものではないことを示しているように思える。

普通に考えれば、年齢が高くなればなるほどケアに関わる確率は高くなるのではないのか・・・。

それはともかく、ケア対象者との関係性では、兄弟・姉妹や父母が多く、中学生以上では祖父母も少なくなかったという結果になっている。さすれば小6がケアしている対象とは、兄弟・姉妹ということになるのだろうか。

どちらにしてもヤングケアラーと呼ばれる人たちが、介護に関わることによって、私生活や学業にどのような影響があるのかということが、全国的に検証されなければならない。

ヤングケアラーは、自分が介護の担い手になって様々な問題を抱えても、それが当たり前と思い、受け入れたり、あきらめたりしてしまう傾向が強く、誰にも相談しないまま、問題があってもそれが社会の闇に深く隠れてしまうという傾向にあるようだ。

さすればヤングケアラーの支援も大きな課題となるが、そのためにはまず発見することが重要であることがわかる。

しかしヤングケアラーが介護を行う対象とは、前述したように高齢者とは限らない。

下に張り付けたユーチューブ動画で紹介されているように、若くしてALSなどの難病を患ったシングルマザーである自分の親を高校生の一人息子が介護している例がある。うつ病などの精神疾患を抱えた兄弟・姉妹等を支援するケースも多い。

介護支援の対象者も、高齢者や障碍者という区分だけではくくれないのである。

そうであるからこそ、縦割りの所管を打破した連携が必要だ。学校等の教育機関と、保険・医療・福祉・介護との情報がどこで交換され集約されていくのかを真剣に考えなければならない。

例えば地域包括支援センターが担当するケースの中で、たまたまヤングケアラーがそこに存在することが明らかになったときに、地域包括支援センターとしてできることは何か、どこの誰と連携を図らねばならないのかという具体策を、地域の中で話し合う場を設けることが必要である。

学校で教師がヤングケアラーを発見するためには、「欠席・遅刻が多い」・「表情が暗い」・「宿題ができていない」等、子どもが本来やるべきこと、やれていなくてはいけないことが「できていない」というサインを見逃さないと言われているが、サインを発見したときにどこにつなげるかという具体策がないと問題解決には至らない。

必要な福祉サービスの手配が必要になることは共通認識だろうが、誰がどのような方法でその手配を行うかということも明確にしておかねば、いざというときに誰も動けない・動かないということになりかねない。

小学生だからヤングケアラーになることはないという固定概念をなくして、それぞれの家庭の状況を把握して、早期対応するといっても、早期対応の具体策を頭に入れておかねば動きようもない。

それらのことを具体的に話し合う場を作り、その場から具体策を発信することがまずは必要だろうと思う。調査あって支援なしという状態を作ってはならないのである。

なおヤングケアラーについて紹介した北海道文化放送(UHB)のニュース映像がユーチューブでダウンロードできるので、参照していただけるよう下記に張り付けておく。

希望を胸に新しいスタートに立つ若者の未来が明るいものであるように願うとともに、その人たちが新しい希望に満ちた国を創ってくれることを願ってやまないが、そのためにもヤングケアラーという問題に、もっと光が当たって、その人たちにたくさんの温かな支援の手が届く世の中になることを期待したい。
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